エッジ・オブ・ネザーキョウ #7

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これを」ザックは懐からシワシワのパンチシートを取り出した。それはリコナーのアジトでプリントアウトした地下IRC-SNSのフォーラム記録だ。「★★★★★:とてもいい密航です。船の揺れもほとんどありませんでした」「★★★★★:申し込みから数時間で迅速に密航させてくれました。感謝です」  24

2019-07-31 22:55:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「★★★★★:料金が高いので少し不安でしたが、高いだけのことはありました。」「★★★★★:UCAはインターネットも無制限なので、さっそく自由を満喫しています。勇気を出して密航してよかった」「★★★★★:アケチ水軍の戦士でありながら、真の正義を貫いてくれていた。信じてよかった」 25

2019-07-31 22:56:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ほう……」スピアフィッシュは紙を受け取り、目を細めた。「成る程。しっかりと判断した上で、俺のもとを訪れ……ビジネスの話をな」「カネならあります」ザックは力強く言った。「マジなんです。俺、人生変えたいんです。俺、アンタのビジネスの評判を支えに生きてきて……仲間も死んで……」 26

2019-07-31 22:59:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大変だったな」スピアフィッシュは溜息をついた。「ハイ」緊張の堰が切れ、ザックは涙を溢れさせた。嗚咽が止まらない。ヤス。キンケイド。アレン。フィル。XX002……。「ウ……ウ……皆……死んじまって……やるしか……やるしかねえじゃんか」「……皆、死んだのか」 27

2019-07-31 23:03:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ……皆……」「インターネットを、やったワケだな」「……ハイ」「リコナーか」「ハイ」「皆、死んだ?本当か?」「そう、です、ウ……」「リコナーは徒弟制だ。死んだリコナーに、師匠が居るだろう」「エ……ア、ハイ、それは……」「何処に居る?」「エ?」「何処だ?今、何処に?」 28

2019-07-31 23:05:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「い、痛い……」ザックは呻いた。肩に置かれた手が握力を増している。今やスピアフィッシュの目は爛々と輝いている。「死んだリコナーの名は?先日、そこそこの捕物があったという話は俺の耳にも入っている。その流れか」「アイエエエ……」「リコナーの名前を言え」「ア、アイエエ……XX002……」 29

2019-07-31 23:07:56
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「その師匠は?」「わ、わかりません」ザックはかろうじて防御的言動をした。「イヤーッ!」「グワーッ!」スピアフィッシュはザックの頬を張った。「俺は非ニンジャのクズに対しても礼儀を尽くす。子供にも優しい。十分な手加減ができる」「ウ……ア……」それでも奥歯は折れた。 30

2019-07-31 23:10:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

呻くザックが口を開くと血が溢れた。スピアフィッシュは顔をしかめ、ザックのTシャツを掴んで口を拭った。「事務所が汚れる。全く」さらに、抜け目なく、懐から財布を奪い取った。アケチ素子を数える。「ヨロシドルやオムロは無いのか?ッたく……」「頼むよ!行かせてよ!」 31

2019-07-31 23:12:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カネは、頂いた」スピアフィッシュは懐にカネを入れた。「この上で何故、そんな面倒な事をする必要がある。大逆罪だぞ。偉大なるタイクーンに対する忠誠は無いのか?」「そんな!ネットの評判は!」「ネット?フン」机の上の覆いを取ると、そこにはUNIX!「まだわからんか。これは俺が撒いた餌だ」32

2019-07-31 23:15:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな!そんな!」「インターネットはいいよな、ぼく。わかるよ」スピアフィッシュは猫なで声になった。「世界中の情報にアクセスし放題だ。自由でいっぱいだ。希望に満ち溢れている。楽しいよな、インターネット」「ア……ア……」「だがお前にその権利はない」「アイエエエエ……」 33

2019-07-31 23:17:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このカネもリコナーに工面させたものだろう。何処に居る。吐け」「ち、違う。俺の、俺のカネだ……!」「強情なガキだ。お前が大の大人ならば、一本ずつ四肢を破壊して吐かせる。だがお前はガキだ。過程で殺してしまうかもしれん。……そこで、寛大な俺は、お前にチャンスをやる」 34

2019-07-31 23:20:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……数分後!川に浮かんだイカダの上で、数名が沈みゆく太陽の影となっていた。スピアフィッシュ。ゲニンたち。そして、ザックだ。「準備できましたぜ!ヘヘェ!」ザックの足にミズグモを装着し終えたゲニンが立ち上がった。「ガキの足にはデカイけど、ガンバレよな!」「ヒャーハハハ!」 35

2019-07-31 23:23:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前に3つの選択肢を与えよう」スピアフィッシュは腕組みして厳かに言った。「死ぬか、渡り切るか、情報を吐くか」「……!」ザックはヒクヒクと嗚咽を噛み殺す。もはや悲鳴をあげる事もない。スピアフィッシュは対岸の明かりを指差した。「見ろ。あんなにも近くに、お前の目指す自由がある」36

2019-07-31 23:27:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「そのミズグモは、種も仕掛けもない、板のようなものだ。だがカラテあらば、俺のように水上を自在に歩くことができる代物」「……」「お前の勇敢さに期待している。真の勇敢さがあれば、そのミズグモを使って、川を渡り、UCAに行ける。自白してもいいが……正直、俺は期待している!」 37

2019-07-31 23:29:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「畜生……畜生!」「ガンバレ!」「ヒヤアー!」ゲニンがザックの背中を蹴った!ザックは着水!もがく!すぐには沈まない!「ハッハハハハ!子供は軽い!もしかしたら、もしかするぞ!」「そうでやすねェ!記録更新するかも知れねェー!」スピアフィッシュが笑い、ゲニン達も歓声!ナムアミダブツ!38

2019-07-31 23:31:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「う……クソッ……クソーッ!」ザックは必死でもがいた。ゲニンの嬌声を受けながら。(お、俺がニンジャなら……!ニンジャなら……!)「ホラホラ!急げ!沈んでしまうぞ!」「……アレ?スピアフィッシュ=サン……」「ム……」スピアフィッシュはすぐにゲニンの懸念に気づいた。音である。 39

2019-07-31 23:33:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あっちですぜ」ゲニンは東を指差す。「……」スピアフィッシュはニンジャ聴力とニンジャ視力を発揮し、その「音」の正体が船のモーター音であると判別した。そして実際、近づいてくる影がモーターボートである事を見抜いた。アケチ水軍か?この時間帯の哨戒予定はない。「何でやすか?」「黙れ」 40

2019-07-31 23:36:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スピアフィッシュ=サン!見てないとガキが沈んじまいやすぜ!楽しめなくなっちまう」事情がわからぬゲニンが慌てた。だがスピアフィッシュはニンジャ第六感由来の鳥肌を首筋に立てていた。敵意ある存在の接近を感じ取っていた。睨む先の水面……夕暮れを受け、オレンジの髪がなびくのがわかった。41

2019-07-31 23:38:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こっちに来やす!」「わかっておる!」スピアフィッシュはヤリを手に取り、身構えた。UCAか?不可解である!「敵襲……」彼は見た。オレンジ髪の女が運転するモーターボートにはワイヤーが繋がっており……水上スキーが水しぶきをあげていた。ワイヤーを掴んでいるのは、赤黒のニンジャだった。 42

2019-07-31 23:40:22