生物多様性ホットエリアからノネコを地域外へ譲渡・移送して殺処分を極力回避しよう

奄美大島の多様な生物相を保護するため、「ノネコ管理計画」が進められている。計画は、主に完全室内飼いを前提にした譲渡と、引き取り手のない捕獲個体の殺処分を柱としており、殺処分への批判が管理計画反対派から多く寄せられている。ここでは、殺処分の代わりに生物多様度の低い島への捕獲猫の移住という手法を考えてみたい。
0
前へ 1 ・・ 5 6
今井長兵衛 @medanjin

なお、この連ツイの最初の方で、ネズミ類に外来種が含まれるのではと述べた。国立環境研侵入生物DBによると、 ①クマネズミ:本州では在来、北海道・四国・九州では不明、その他では外来。 ②ドブネズミ:本州・四国・九州では不明、その他では外来。 ③ハツカネズミ:日本全国で外来。

2019-09-14 17:37:15
今井長兵衛 @medanjin

著者らは神奈川自然環境保全センターによる5年間の傷病鳥獣保護記録を解析している。保護されたのは138種3161個体、うち鳥類120種2694個体、哺乳類18種467個体。猫に襲われた個体は全体の7.2% (10.3%×70%)、内訳は鳥類27種227個体、哺乳類2種2個体。続く

2019-09-12 22:15:42
今井長兵衛 @medanjin

表1から計算した鳥類種別保護個体数に占める猫の被害を受けた個体数の割合は、ツグミ28.6%(10/35)、キジバト20.1%(52/259)、オナガ20.0%(5/25)、ヒヨドリ19.6%(33/168)、ムクドリ11.1%(20/180)、シジュウカラ・メジロ9.8%(12/123)、スズメ9.5%(35/367)、ツバメ5.1%(21/414)。

2019-09-12 22:32:27
今井長兵衛 @medanjin

表3から計算した生息地タイプ別保護個体数に占める猫の被害を受けた個体数の割合は、市街地9.8%(98/997)、里地里山8.8%(107/1212)、奥山7.8%(23/296)、海0.0%(0/189)。

2019-09-12 22:54:38
今井長兵衛 @medanjin

表4から計算した鳥類巣内ヒナ種別保護個体数に占める猫の被害を受けた個体数の割合は、メジロ30.0%(6/20)、キジバト18.3%(11/60)、ヒヨドリ16.7%(3/18)、シジュウカラ10.9%(7/64)、カルガモ6.7%(2/30)、ムクドリ6.6%(6/91)、ツバメ5.8%(13/224)。

2019-09-12 23:04:53
今井長兵衛 @medanjin

表5から計算したスズメとメジロの発育段階別保護個体数に占める猫の被害を受けた個体数の割合は スズメ:成鳥5.7%(2/35)、若鳥25.0%(2/8)、巣立ちヒナ19.0%(26/137)、巣内ヒナ2.9%(5/171)。 メジロ:成鳥1.6%(1/61)、若鳥0.0%(0/1)、巣立ちヒナ12.5%(5/40)、巣内ヒナ30.0%(6/20)。

2019-09-13 17:00:03
今井長兵衛 @medanjin

表6によると、猫に攻撃されて保護された鳥類は227羽で、保護後死亡は170羽、死亡率74.9%であった。 表6から計算すると、保護後に死亡した鳥類は1681羽で、そのうち猫の攻撃を受けた鳥は170羽、全死亡蝶の10.1%である。

2019-09-13 17:18:24
今井長兵衛 @medanjin

以上から、外ネコの在来鳥類・哺乳類に対する日本での影響の評価には、更なる調査研究の蓄積が必要と考える。 蛇足:アンケートの結果を論文発表するときには、補遺にアンケート用紙を掲載するのが常道だと思う。

2019-09-13 18:07:25


9.徳之島の事例

今井長兵衛 @medanjin

417文字しか読んでいないが、数ヵ月間の食性を推定できる体毛の分析で、人が与えている餌が70%を占め、森の動物の成分も、森ネコで14.3%、人里ネコで12.4%に過ぎないそうだ。つまり、給餌は完全野生の猫を7分の1から8分の1に減少させるのと同等の効果があるとも考えられる。 asahi.com/articles/ASMCN…

2019-11-21 21:31:39
今井長兵衛 @medanjin

もっとも、徳之島や奄美大島のような生物多様性ホットエリアの外ネコ・ノネコはゼロにすべきという考えに変わりは無い。ただ、私見のように、生物多様性が豊かでない「猫の島」へ、捕獲して不妊去勢したネコを放しても、生物多様性への悪影響はある程度抑えられるかも知れないと思う。

2019-11-21 21:38:36
今井長兵衛 @medanjin

元論文は下記 nature.com/articles/s4159… Table 1 から、ノネコの糞174個とノラネコの糞24個から検出された在来哺乳類の割合は、それぞれ、22.4%と0.0%、外来哺乳類クマネズミの割合はノネコ26.4%、ノラネコ20.8%である。

2019-11-22 21:45:43
今井長兵衛 @medanjin

糞調査では猫を捕獲してサンプルを得ており、捕獲地点近辺で捕獲直前に猫が何を食べていたかが分かる。クマネズミの捕食割合が林内と集落近辺で変わらないのは、クマネズミが林内と集落周辺のいずれにも生息しているためだろう。クマネズミは林内でも在来3種哺乳類より多く猫に捕食されているようだ。

2019-11-22 21:55:33
今井長兵衛 @medanjin

長期の餌資源利用率を示唆する安定同位体解析の結果はFigure 5 に示されている。本文によると、       ノネコ ノラネコ 人工資源  67.8%  69.0% クマネズミ 17.9   18.5 在来哺乳類 14.3   12.4 Farmland animal はクマネズミのみ。

2019-11-23 16:17:50
今井長兵衛 @medanjin

ノネコとノラネコは同じ採餌パターンで、人工資源70%、外来種クマネズミ約18%、在来哺乳類は約14%の割合で利用していた。「人に給餌されながら在来種を捕食」というショッキングな見出しは「給餌によって自由行動ネコの在来種捕食が減少か?」とする方が適切だろう。

2019-11-23 16:26:34
今井長兵衛 @medanjin

徳之島は面積248平方km、人口2.5万人、耕地面積28%、常緑広葉樹林面積43%の亜熱帯に位置する島である。食性と行動範囲から見る限り、この島ではノネコとノラネコの区別は無意味である。面積712平方km(徳之島の約3倍)の奄美大島では両者の区別に意味があるのかも知れないが。

2019-11-23 16:40:36
今井長兵衛 @medanjin

既述のように、徳之島を含む生物多様性ホットエリアからの外ネコの排除には賛成だが、捕獲ネコの譲渡に加え、生物多様性が低く住民による給餌が確実に実施される「猫の島」への移住も選択肢に加えるべきと思う。 なお、徳之島からの外ネコ排除でクマネズミが増加する可能性も想定すべきだろう。

2019-11-23 16:53:21
前へ 1 ・・ 5 6