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前回の話
以下続き
おまけの話。 これはおまけなので読まなくてもかまいません。 昔は色んなお菓子や小物におまけがついていましたね。 中身は…まあ今までと同じ。
2019-08-15 20:40:19ベッドのシーツがビリビリになり、枕がちぎれ、掛布はグチャグチャになり、柱には噛み跡がついている。 ついでにいうと本人もあちこちあざだらけになり血も出た。 「…なにこれ」 寝ぼけ眼でぽかんとしている少年を、使用人達が介抱する。 「派手じゃん」 「…」
2019-08-15 20:42:52原因は心当たりがあった、ちょっと前まで少年は記憶喪失だった。 治療して回復したのだが多分副作用が出たのだ。 さっそくかかりつけの医者が呼ばれた。無免許で怪しげだけど腕は確か。ただし性格はよくない。スプリットタンをちろちろさせながら診察する。
2019-08-15 20:46:00「やーっはっはは、フラッシュバックというやつだね。レム睡眠の時に出たのかな」 「…?はえ?」 「うなされたんだよ。記憶が戻ったせいだね。ほら、嫌なことを思い出して℃頭がぐちゃぐちゃになるというか」 「え…でも…ベッドとか…」 「君を治療した直後もそうなったんだよ言わなかった?」
2019-08-15 20:47:29「ど、どうしよう」 「なにそのうち心的外傷…あー嫌な記憶に耐えきれず君の心はもっとなんていうかな…壊れてくから。そうしたら落ち着くさ」 「…壊れ!?」 「治療を受ける時に説明したじゃないか。君が記憶喪失になったのは過去の嫌な記憶が心を壊さないように財団の病院でわざとしたことなんだ」
2019-08-15 20:49:35「え…う…」 「それを君はわざわざ戻しちゃったんだからね。そりゃ壊れるさ。まあその過程みたいなもんだよ」 「あうあうあう…」 「落ち着くまで。病院でやってた対策をほら、すればいいよ」
2019-08-15 20:50:36子供に打てるだけの強い鎮静剤と、医療用拘束具。 「鎮静剤の方はどうかな?ちょっと続けて打たない方がいいかもね」 「ええ…」 「ま、がんばって。いやー興味深い症例だ。君は凡庸な子だけど、何のめぐりあわせか、頭のおかしくなり方だけは独特だね」
2019-08-15 20:52:05そんなことを言われても困る。 ジョウはいそいそと、執事達が片付けてくれた寝室を眺めまわした。 「うーん…うーん…もっかい財団の病院に入った方がいいのかな…」 財団というのは大金持ちの財産を管理しているところで、今暮らしているお屋敷も正式にはそこの持ちもの。 「うーん…」 「…」
2019-08-15 20:54:07二人いる執事のうち黒い服をまとった方がそばに来る。 長身の細マッチョ。オールバックにクール眼鏡でかっこいい。 仕事のできそうな感じ。 「入院…」 「…」 黒執事は無言で眼鏡をチャキっと直し、レンズをきらっとさせる。 「やめといた方がいい?」 「…」 チャキ。キラ。
2019-08-15 20:56:05「…はい…やめる」 なぜかコミュニケーションが成立するのだ。 いちおう少年も坊ちゃまとして、一年以上は奉仕を受けてるし付き合いじたいはもっと長いが、でもやっぱなぜ意志が疎通できるのかは謎。
2019-08-15 20:58:10ちなみに黒スーツの人物は執事というか正確には家令だが、めんどくさいので執事。その執事は静かにうなずいた。 実は坊ちゃまの体調は心配だが、財団の病院に預けるのは妥当ではないと考えていたのだ。あまり信用できない。
2019-08-15 21:01:37自身も財団の養成所で使用人として訓練を受け財団が所有する屋敷で働いていて以前は忠実だったのだが、最近あまりにも色々あって今は見方が変わった。 難しいことを考えている黒執事の前で、坊ちゃまはぼけーっとしていた。 まあでもおとなしく使用人の勧めに従う。
2019-08-15 21:04:25「あの…そんで…えーと、レンさんかアイさんにお願いがあるんだけど」 「…」 「あん?」 坊ちゃまが言うと、黒執事と、もう一人、あくびしながらスマホをいじっていた白いスーツの青年が同時に見つめてくる。こっちも執事なのだが、髪は染めてて肌は焼いてて、じゃらじゃらアクセはしてて不真面目。
2019-08-15 21:08:51実は夜寝るとき暴れないように医療用拘束具をつけねばならないのだが、そのための固定装置をベッドの周りにつけたり、あと寝ているあいだにおしっこうんちしたくなったときに備えておむつを用意したりするよう医者から指示をもらっている。
2019-08-15 21:12:08ジョウはだいぶ馬鹿になっているので、そういうのが自分で全部できるか解らず、ちょっと手伝ってもらおうと思ったが、やはりあまりにも恥ずかしいのでやめた。 医者には 「私から使用人に伝えておこうか?」 とか聞かれたけど。ちょっと恥ずかしすぎる。
2019-08-15 21:13:09「かたづけ、ありがと…」 坊ちゃまがこそこそと隅っこにいってこっそり指示の書いてあるスマホを覗こうとしたら、後ろから近付いたチャラい白執事がさっと取り上げる。 「あー!」 「これか」 「かえして!もー!なんで!」 「へー…医療用拘束具?SMの道具みてえ」 「かえして!!」 「はいはい」
2019-08-15 21:15:09子供をよそに、白と黒のスーツを着た大人で画面をのぞき込んでひそひそ。 こういうとき蚊帳の外に置かれているようで坊ちゃまのジョウはちょっとさみしい。あと何だかアイさんとレンさんという使用人同士の距離がとても近いのも何となく胸がちくっとする。
2019-08-15 21:18:55「むむ…む…」 隅っこで休めの姿勢をして待つ少年。青年が省みて告げる。 「これな。やんねー」 「え」 「キモいし」 「でも、まためちゃくちゃになったら」 「鎮静剤だけな」 「うー」 「あと夜一緒にいてやるよ。しばらく」 「え!!?」
2019-08-15 21:21:18