デス・フロム・アバブ・UCA #2

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【デス・フロム・アバブ・UCA】#2 pic.twitter.com/uaQRAcPqSJ

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城塞拠点トオヤマ！恐るべきニンジャ空挺部隊「ノブスマ・ストームボーン」の大部分が現在、この街に集められていた。街外れの営舎では、来たるべき重要作戦行動に関するブリーフィングが行われていた。　1

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前面の壁面モニタに表示されているのは南北に伸びるロッキー山脈を挟んだ地形図である。メタルファルコがリモコン装置を操作するたび、地形図は衛星写真から等高線図へ切り替わり、トオヤマを示す旧カルガリーから、赤い矢印が西に滑っていった。山脈を越えた先、目標地点はバンクーバーだ。　2

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「貴様ら知っての通り、先日、偉大なるタイクーンのピンポイント攻撃が、烏合の衆に守られたバンクーバーの重要施設を損壊せしめた。忌々しいウキハシ・ポータルはもはや機能しない」映し出される邪龍オオカゲの圧倒的ブレス攻撃の30秒動画！隊員がどよめいた。「タイクーン、バンザイ！」　3

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「ウキハシが落ちた事で、特に面倒なニンジャ戦力の追加投入は不可能となった。対空兵器に関しても偉大なるタイクーンは抜かりなし。最も厄介であったライジン・コイルは……」ナムサン！新たに表示された30秒動画は、邪悪な黒いブレスが巨大な螺旋柱をひと薙ぎで融解させて破壊するさまであった。　4

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ライジン・コイルは空中に激しい稲妻を放出するバンクーバーの守りの要であった。攻撃機はEMP障害を引き起こし、カイトのニンジャは感電して死ぬ。しかしタイクーンのカラテとオオカゲのネザー・オーラは、惰弱な文明の産物など問題にしなかった。　5

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これら圧倒的蹂躙映像はただちに記録され、プロパガンダに用いられる。世界にネザーキョウの強大な存在感が拡散される（国内においては、インターネットは惰弱とされているので、そこはかとない方便が使われ、つまり、実務上はとにかく問題ない）。　6

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「ここからは勇敢かつ残忍な我らノブスマ隊の出番である。独壇場だ。さらに今回……」合図すると、従者がショドーの紙をひろげた。そこには雄々しい筆致で「励みなさいよ」と書かれていた。ハゲミナサイヨ！そして右下には金インクのハンコ……！「我々に向けた、タイクーン御自らの激励だ！」　7

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「何ということだ」「タイクーン御自ら……！」隊員は歓喜に震え、涙をこらえる者もいた。メタルファルコは彼らをじっと見渡し、少し時間を溜めたのち、従者に合図した。従者は壇に水晶球を設置した。ネザーキョウの遠距離交信手段は水晶球である。ホロ映像めいてドクロメンポの尊顔が浮かび上がる！ 8

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『我が翼、我が剣、我が矛よ。ノブスマ・ストームボーンの勇士たちよ』録画映像！『我は最善の戦果以外は聞く耳もたず！』「「「ハイヨロコンデー！」」」『殺し、焼き、蹂躙せよ！略奪し、自由にせよ！』「「「ハイヨロコンデー！」」」彼らは足踏みし、机で拳を打ち鳴らした。　9

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「必ず勝つ！」メタルファルコは拳を振り上げた。振り上げた拳を水平に振り、最前列に立つマイトイカラスを指し示した。「この男が最高の勇者となる！マイトイカラス＝サンに続け！イサオシをほしいままにせよ！」「「「ワオオーッ！」」」マイトイカラスは微笑し、メタルファルコを見た。挑戦的に。10

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メタルファルコはマイトイカラスの視線の意味をはかろうとする。マイトイカラスは手を手を叩き、隊員を振り仰いだ。「私はメタルファルコ＝サンのカラテに胸を借りるばかりです。そして必ずや期待に応える。必ずね！」「「「ワオオーッ！」」」「ガンバルゾー！」「「「ガンバルゾー！」」」　11

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「ガンバルゾー！」「「「ガンバルゾー！」」」「ガンバルゾー！」「「「ガンバルゾー！」」」メタルファルコは腕組みして、いかめしく頷いた。（全力を尽くしますよ、メタルファルコ＝サン）マイトイカラスは彼にだけ聞こえる声で囁いた。（私の増上慢を諌めた拳。強く感激しました。忘れませんよ）12

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（そりゃ結構だな）メタルファルコは睨み返した。（せいぜい忘れねえ事だ。貴様のブザマを）（忘れませんとも……！）マイトイカラスは頷いた。二者の視線は火花を散らすようだった。（不屈ですよ。私はね……！）　13

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湿地帯に白い靄が立ち込め、立ち並ぶネオン看板を滲ませていた。ホロ案内板が「ソーダ・クリーク」の文字を明滅させる。コトブキとマスラダはガレージでシグルーンを一通り確かめ終えた。「平気です」コトブキが車体に触れた。「ノー・エラーです。よかった！」「そうか」　15

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「ご飯にしましょう」彼らはガレージを出、宿の外、ソーダクリークの広場を歩いた。彼らはプリンスジョージから南へ道を辿り、この村で宿をとった。ネザーキョウを出れば、モミジやカラテビーストとは無縁だ。空気は冷たく、生き物の気配もまた違う。　16

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道は荒れ果てた荒野で、電子戦争以来の荒廃らしい。道すがら、何度かUCAの企業戦力とすれ違う事があった。彼らは念の為にそのたび身を潜め、やり過ごした。ネザーキョウではないにせよ、結局彼らはここでは他所者であり、とくにその種の相手は何をしてくるかわからなかった。　17

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ソーダクリークに家々は疎らで、しかしネオン看板の広告だけは勢いがよい。ネットワーク環境は生きていた。それだけでもネザーキョウとは安心感が違う。スシバーでアボカド・スシをつまみながら、マスラダは店内に注意を払う。「どうしましたか？」コトブキが尋ねた。　18

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窓際の客が目を逸らす。地元の人間だ。コトブキは察した。「わたし達のような旅人が珍しいのでは」「どうだろうな」マスラダは納得しない。「旅をしている連中は他にもいる」実際、バンクーバーとプリンスジョージを行き来する者は少なくない。今は色々ときなくさいからだ。　19

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このスシバーの中にも、鋲打ち袖なしレザージャケットに身を包んだタフなロードランナーや、スシを食べながらIRC端末越しに頭を下げている転勤サラリマン、スーツケースを手元に、暗い表情でテーブルを囲む家族など、様々だ。スシバーは広く、天井にはマグロの骨が飾られている。　20

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「アッ、確かにウエイターが二度見しました！」コトブキがチョンマゲ店員を指差した。店員は足早にキッチンに去った。マスラダはチャを飲んだ。コトブキは「後で直接聞いてみましょう。問い詰めます」と言いながら、注文パネルを操作する。「もっと食べましょう。少し資金に余裕があります」　21

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コトブキが画面に触れると、美しく映されたスシ写真が遷移した。「最新式ですね！見てください、イクラが美味しそうで……これは？」コトブキは訝しんだ。左側にはスシ写真、そして右側の地域広告スペースには、ニンジャのモンタージュ写真があった。「生か死」の厳しいミンチョ文字と共に。　22

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「これは賞金首ですね」コトブキとマスラダはモンタージュ写真をクローズアップさせた。「ニンジャか」「罪状は……ウーン……殺人！」「イクラオマチ」チョンマゲ店員がイクラ・スシをテーブルに運んできた。コトブキが手を掴んだ。「アイエッ！」「貴方わたし達に何か……腹に一物ありますか？」23