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高危機意識妻 VS 政府信頼夫

3.11で浮き彫りとなった妊娠中の妻と典型的日本サラリーマン夫の危機意識の違い。妻 @sickbow が原発事故後に選択した行動といのちへの想いのまとめ。(※今後加筆されていきます)
原発 被災 東電 夫婦 危機意識 政府 震災
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sickbow @sickbow
3.11から二ヶ月あまり経ったが、いまだ夢を見ているような奇妙な気分の中にいる。
sickbow @sickbow
原発が爆発した12日、水と食料と現金を持って西へ西へ逃げた。一号機に海水注入が開始されるという報を聞いた夫は、すでに纏めた自分の分の荷物を再び部屋のあちこちに戻し始めた。
sickbow @sickbow
「何が起こるか分からない」「ひとつクリアしたとしても依然予断を許さない状況にあると思う」「チェルノブイリが頭を過る」「国家などの大きな組織のトップはパニックを怖れる。パニックを避ける為に国民を欺くこともあり得る」「頼むから一緒に来てくれ」「何事も命あってのものだねではないか」
sickbow @sickbow
私の言葉は身内一人説得するに至らなかった。今四か月になるお腹の子を守るのは私だけだと、水と食料と現金を持ち、夫を置いて西に逃げた。「分かった、一人で死ねばいい」なんて、酷い捨て台詞だったなあと思う。
sickbow @sickbow
兄が車を出してくれた。途中のSAではやはり避難をすると思しき家族連れが何組か、じっと食堂のTVに食い入っていた。けれどその数は決して多くはなかった。東名はがらがらだった。
sickbow @sickbow
富士宮まで来るといつもの日本の風景で、地震も津波も原発も遠いところにあった。幾分ほっとした。富士宮焼きそば、おいしかったなあ。
sickbow @sickbow
三重の義母に連絡をとる。落ち着くまでおってええ、と言ってくれた。有難かった。夫に電話をする。極力外に出ないように。窓のシャッターを閉めるように。換気扇をつけないように。貴重品をまとめておくように。雨に気をつけるように。そして何かあったら躊躇なく逃げるように。
sickbow @sickbow
兄は私を義実家に預けると、翌日も仕事だからと東京へと引き返した。あんなことが起きているのに、まだ生きている街々はその機能を止めようとしない。それが心強くもありまたおそろしくもあった。東北の沿岸部は壊滅状態だった。東京も頻繁に揺れた。原発は煙をあげていた。
sickbow @sickbow
義実家であたたかく迎え入れられながらも、不安と緊張から毎日悪阻が酷かった。私は一介の心配性の専業主婦で、取り立てた知恵も知識も持っていない。けれどもとにかく情報を欲した。テレビとPCを起動する。情報は津波のように私の処理能力を超えて押し寄せて来た。
sickbow @sickbow
東電・保安院・政府の会見を見る。何度も何度も「絶対に大丈夫」という意味の言葉が覆されていったのを目撃した。
sickbow @sickbow
TVに出て解説する専門家とやらの言葉もまたそうである。前説は頻繁に塗り替えられる。こまかな言葉に一貫性が感じられない。だがとりあえずの安全を強調する言葉だけが平易で、それが受け手の「安心を得たい願望」と相まって奇妙な日常の空気感をかたち作っていくように感じた。
sickbow @sickbow
現在進行形の災害が福島で続いているのに、TVは岩手や宮城の被災者にカメラとマイクを向けることに躍起になっていた。被災の際の「悲惨な」或いは「感動的な」エピソードを茶の間に流す。
sickbow @sickbow
まるで一連の震災に於ける被害は彼ら受難の津波被災者だけのものであり、そしてそれすらも既に「終わった」ことかのような印象であった。同情という形で心情は添えども、その他の地域の人間にとってはあくまで他人事の世界。
sickbow @sickbow
私もあの地獄のような映像の数々に涙が止まらなかった人間の一人である。ライブ映像の中で津波に飲まれた人々を多く目撃した。胸が潰れる思いだった。
sickbow @sickbow
だが今そこで起こっている危機について、どうしてもっと報道しないのか?違和感が拭えなかった。爆発する原発の映像も、十分センセーショナルではあった。ハイパーレスキュー隊の勇姿も感動した。しかしそれは浜通り周辺のほんの狭い地域に閉じ込められているドラマであった。
sickbow @sickbow
定点カメラで切り取られた箱庭的世界で起こっているドラマであった。
sickbow @sickbow
毎日夫に電話をした。危機感を煽る話など聞きたくない、と言われ喧嘩になった。もしお前の言うような大変な話なら、流石に政府ももっと行動をしている筈だと。俺たちよりずっとアタマノイイヒト、エライヒトがベストと思われる選択をしているのだ。疑ってどうする?と。
sickbow @sickbow
私が「危機感を煽る話」をするにも、ソースをいちいち表示しながらが困難だった。開きっぱなしのブラウザのタブはネット上で拾ってきた内外からの情報ソースで埋め尽くされている。だが会話という形で、膨大なモザイク状のそれらを的確に引っ張って来るのは私の能力を超えていた。説得力が、ない。
sickbow @sickbow
私は夫と共有している唯一のSNSであるfacebookにそれらのニュースソースなどを貼ることにした。こつこつ無言でした。この作業は現在でも続けている。
sickbow @sickbow
3.13からの一週間は毎日新幹線の東京発名古屋行きチケットを夫の為に予約していた。いつでも脱出できるように。予約状況はその一週間すらがらがらだった。勿論万一脱出ということになったら、次の日からの予約分はキャンセルするつもりだった。一つ席を占有すると誰か一人が逃げられないのだから。
sickbow @sickbow
夫はその一週間も、交通状況が改善され次第会社に行った。それは立派で、けれど何かが狂っていて、そして東京のサラリーマンとしてはごくごく当たり前のことだった。
sickbow @sickbow
猪苗代の両親に自主避難を促すことも同時に続けていた。「うちは頑健な建物だから被害はワイン一本割れただけだったぞ」「この辺は磐梯山があるから大丈夫だ、風向き的にも会津地方に放射性物質が飛んでくるとは思えない」と父は最初笑っていた。
sickbow @sickbow
そこは原発80k圏内に位置しているということ、大まかな傾向はあるだろうが風向きなど頻繁に変わるということ、物資も不足しているようだし、生活が困難になるのであればとりあえず逃げてくれと伝えた。
sickbow @sickbow
何より兄が心配する。両親に何かあったらきっと兄は真っ先に助けに向かってしまう。本当に何かあった時、私は両親よりも兄に無事でいて欲しいのだと本音をぶつけた。兄はまだ若い。これから子供を産み育てる世代なのだから、と。
sickbow @sickbow
3.15、両親は鳥取の祖母のもとに向かった。
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コメント

くりあ/CLEA-R-NOT-3 @Clearnote_moe 2011年5月24日
「私と仕事、どっちが大事なの」という言葉が浮かんだ。逃げれる場所のある妊婦が胎児のために逃げるのはリスク回避として正しいけど、夫が一緒に逃げると確実に職を失う。きっと、収入をなくしてまで一緒にいる事の方が無責任だと思ってるよ、旦那さんは。喧嘩しないで、無事を祈ってあげてください。
KojiTakeuchi 竹内光司 @adesignerjp 2011年5月24日
文豪 @sickbow による愛のドキュメンタリーストーリー「高危機意識妻 VS 政府信頼夫」。本日分を追加しました。三重にある義実家から東京に戻るまで。
横川圭希 @keiki22 2011年5月24日
程度の違いはあれ、それこそ敏感に反応する事は反社会的だと判断される。本人でさえ狂ってるのかと自身を疑う。それもこれも正確な情報が的確なタイミングで出て来た事が無いからだ。佐々木俊尚さんは反原発圧力があると表現する。でも、確実に平和な日常圧力もある。どちらが正解かなんてどうでも良い。せめて子供と女性に安全をください。そんな社会信用できるんだ?
西岡ヒロ=資源を消費する時間が無い提督 @NSKHRO 2011年5月25日
今更、原発事故のリスクだけを過剰に心配する不合理に気づくまで、彼女の苦しみは続いてしまうのでしょうね。…宗教的な合理性なら見いだせますが、そもそも人を不幸にする宗教に存在意義があるのやら。
とーや(ザンネン) @tow_08r 2011年5月25日
先日北海道ローカルのUHBで北海道へ避難してきた福島のご家族を取り上げていたけど、周りも支援してはくれるんだけど、現実、北海道は震災前だって仕事が無かった状況だったから、結局旦那さんだけが福島へ戻って仕事をすることになった経緯を報道していたけど。ただ、不安も怒りも判るんですが、不安の底にいるのもストレスで体内に活性酸素が溜まって(体内被曝も活性酸素の増大が病気の原因です)しまうので、情報の遮断もしてみた方が健康のためには良いと思います。
高千穂 伊織 @t_iori 2011年5月25日
別にどっちの選択もありだと思うけど、それはそれとして「不適切」に「政府は信頼できない」を煽った馬鹿デマ連中の害悪さをこのネタの対立中に垣間見るなど
AQN@ヮ<)ノ◆ @aqn_ 2011年5月25日
彼らにとって被ばくによるリスクは特別なリスクである。たとえリスクの大きさそのものは同じであっても、「被ばくによるもの」というだけで特別視される。もはや宗教と化している。
AQN@ヮ<)ノ◆ @aqn_ 2011年5月25日
過度に被ばくリスクを恐れるくらいなら、(結果論ではあるけれど)政府を信頼しきった方が幸せに生きられるよね。このまとめを見て強く思った。
珂允Ø襾鈴(3) @s_k_4_a_a 2011年5月25日
子どもを身ごもっていれば、目に見えない放射能の悪影響を恐れるのは当然の想いだと思う。ただ、あまりにも恐怖心が強いと育児の時に子どもへの悪影響が考えられるので、どちらかと言えば恐怖心の薄いパートナーとよくよく話し合った上で家族の方向性を定めて、それに従って暮らしていくのが吉なのではないかと思う。
鞘次郎(sayajirao) @sayajir 2011年5月25日
原発事故の初期対応を巡って立場や情報経路の違いが先鋭化してしまった夫婦・親子を多く見た。どの対応が正しかったか現時点ではまだ正確にはわからない。答えの無いまま、我々は引き裂かれた関係を修復する。/高危機意識妻vs政府信頼夫
鞘次郎(sayajirao) @sayajir 2011年5月25日
3月以来、"リスクコミュニケーションと家族"、という視点で書かれたものは、技術論や陰謀論に比べて少なかったように思う(在仏の方の記事があったが、リンク失念)。短期リスクが大なら、津波と同様、各個人がてんでんバラバラに逃げるべきなのだろうが、原発災害や、今回参照されたICRP Pub96が想定するような放射線攻撃には、短期と長期両方のリスクがあるため、個々人の事情に合わせ、対応も複雑にならざるを得ない。次の災害を待たずに、家族ときちんと話し合っておかなきゃなるまいね。
鞘次郎(sayajirao) @sayajir 2011年5月25日
同じ妊婦でも、安定期に入ったばかりなら迷わず避難するべきだったろうし(妊娠初期ほど放射線感受性は高い)、逆に無理な移動が望ましくない臨月の妊婦に対しては、専門機関による網羅的で明確なケアが必要だ。安全安全と呪文のように繰り返す代わりに、もう少し丁寧な対応が可能だったのではないかとは思う。
ただの |ωΦ)ฅです @emacat_bot 2011年5月26日
実際、東京も危ないですから不安なの当然です。でもその不安もお腹の子に悪い影響を与えます。強くなりましょう。子どもが産まれたらもっと大変です。はっきり言います男は頼りになりません。母親たちの反核運動~3000万の署名、大国を揺るがすhttp://t.co/G5s09eQ
紙魚 @silver_fishes 2011年5月26日
「高危機意識妻 VS 政府信頼夫」「妊娠中の妻と典型的日本サラリーマン夫の危機意識の違い」という誘導の甲斐なく、大方の感じ方は「こいつアホや」になっているあたりちょっと面白い。
セラガリ更新の度に痩せない樋口くん @higuchi_kazmoto 2011年5月29日
>私も妻として夫の傍にいたい ここに凄い違和感があるが「結局一時的な感情で動いているから」と 思えば何も問題無いな。もしかしてスイーツ脳に分類しても良いんじゃないかな
KojiTakeuchi 竹内光司 @adesignerjp 2011年6月6日
続きの話を追加しました。
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