4．着工

同志雪の人＠活動低下 @yuki_8492

因みに成人である軍人組は３人とも処女だった。好んで戦闘部隊にくる女と言うのはなかなか男受けはしないものだし、私も、たぶん〈足柄〉も、出会いよりいかに戦闘部隊に行くかに心血を注いでいた。〈山城〉は純粋に貞淑だったからだろう。彼女はふりまく色気とは裏腹に、かなり硬い貞操観があった。

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一方で未成年の新入組は、処女という単語に多様な反応を返した。つまり、不穏な反応もあった。ほとんどはきゃあきゃあと恥じらいのある反応だったが、２期生の軽巡洋艦娘〈川内〉と〈神通〉、それと幾人かの駆逐艦娘が目を泳がせたのを私は見逃さなかった。

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最近の若い子は進んでるな。駆逐艦娘は進んでいるで済ませていいのか迷ったが、結局なにもしないことにした。お相手は士官と予想されたが、私たち軍人組は下士官だったからだ。この場合女性士官を通して働きかけるのがセオリーだが、この部隊に頼れる女性士官などいなかった。

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妄想は色々あったが、結局は二日以上盛り上がることはなかった。飽きたのではない。答えが発表されて妄想の余地がなくなったのだ。

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答え合わせは、２期生の建造開始の発表という形で行われた。私たち３期生にはただ朝の示達で建造開始が通知されただけだったが、２期生には午前の課業全部をたっぷり使ってより詳細な説明がされていた。

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もちろんその内容は、休憩時間の間に話したがりなものたちの口によって３期生に共有された。特に３期生に対する箝口令は敷かれていなかったらしい。いずれ知ることになるのだから、当然の措置と言えばまあそうだった。

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３期生にろくに説明がなかったのは、たぶん教官がめんどくさがったからだろう。私も部隊勤務でよくよく思い知らされたのだが、予定を変更するというのは予定を組む側のものにとって、とても骨が折れる作業なのだ。

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共有された話によると、建造作業はおおむね艤装の建造と艦魂との同調のふたつに分けられるが、艦魂との同調は主に霊的な働きかけを行うために大規模な儀式を行うらしい。〈時雨〉が見たのはこの準備だったのだ。

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２期生の場合これらの作業は可能な限り並行して行われた。１期生の時は先に同調を完全に終わらせ、それからオペレーターの反応にあわせて少しずつ艤装を造っていったらしい。

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その時のデータで大まかにどういうものを造れば良いか目星をつけられるようになったので、２期生からは同調している間にある程度艤装を組み立て、同調が終わったところでオペレーターを繋いで調整をしていく、という形にしたそうだ。

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これで同調している間の停滞を省略できるし、１期生ほど手探りでもないので、全体の建造期間をかなり短縮できる。

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艤装の建造に関しては、比較的馴染みある（オカルトよりはという意味だ）機械製造の現場と大きな違いはなかった。造っているのが見馴れない艦娘の装備と言うだけで、作業自体はなんとなく想像する造船所の現場とかけ離れてはいない。

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ただしその作業は予定と異なり、２期生全員分を一気に建造することになったので、建造ブロックだけでは到底間に合わない作業量になった。 ２期生は２隻の軽空母娘、３隻の軽巡洋艦娘、１２隻の駆逐艦娘の計１７隻の艦娘が居たので、たった４隻分の建造能力しかない建造ブロックではまるで足りない。

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これを補うために空いていた３つの係留ブロックが軽く改装され、簡易建造ブロックに転用された。能力は十分ではなかった筈だが、駆逐艦娘の建造くらいならなんとか満足いく程度ではあったようだ。

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建造ブロックが一気に４倍近く増えたので、当然工員も増やされた。彼らはぞろぞろとどこからか到着し、廃墟を手入れしてすみかにし、夜遅くまでブンカーで作業をした。

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食堂は私たちと同じ場所を使ったので、ものすごく混雑した。これはすぐに対応された。簡単だが、食事の時間をずらすことで渋滞を避けた。まず私たち、次に工員という順だ。私たちはブンカーのまわりで休憩する彼らを眺めながらお昼を食べ、彼らはたぶん、光庭で遊ぶ私たちを見ながら食べたのだろう。

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私たちが見る彼らは、いつもブンカーのまわりに積み上げられた資材の隙間を縫うようにして寝転がっていた。艤装建造の為にかき集められ、あっという間に倉庫から溢れた資材はなかなか壮観だったが、工員のだらしない姿はまあみっともなかった。

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毎日遅くまで働く彼らにはそれなりの言い分があったと思うが、だからといってそれで見た目が取り繕えるわけでもなかった。

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建造ブロックでは軽空母娘の〈祥鳳〉と〈瑞鳳〉、そして駆逐隊を率いる軽巡洋艦娘〈川内〉〈神通〉が建造された。軽巡洋艦娘はもう１隻〈那珂〉がいたのだが、彼女は建造ブロックに入りきらなかったので整備ブロックを簡易改装してそこで建造された。

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駆逐艦娘は改装された第２から第４の係留ブロックで建造された。各ブロックに４隻、艦級ごとに振り分けられ、それがそのまま駆逐隊の編成になった。

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第２ブロックに朝潮型〈朝潮〉〈霞〉〈大潮〉〈荒潮〉、第３ブロックに陽炎型〈陽炎〉〈不知火〉〈黒潮〉〈雪風〉、第４ブロックに吹雪型〈初雪〉〈深雪〉〈綾波〉〈敷波〉が割り当てられ、それぞれ第２駆逐隊、第３駆逐隊、第４駆逐隊とされた。 第１は１期生だ。

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今にして思えば、その番号を聞いた時点で違和感を感じるべきだった。なぜならそれらの番号は全て、連合艦隊で使用済みの筈だったからだ。

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例えば第１駆逐隊はニギツチ、サキツチ、イカツチ、アラツチらツチ型駆逐艦からなるオーソドックスな攻撃型駆逐隊で、同じくツチ型で編成された第３駆逐隊とあわせて軽巡ワダツミを旗艦とした第３水雷戦隊を編成していた筈だった。

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艦娘と従来艦では性質が大きく違うので被っても問題になりにくいと言えばそうなのだが、そのような場合でも第１１、第２１と行った具合に二桁目を増やすのが通例だった。

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艤装の建造が馴染みあるものだった一方、艦魂との同調は完全にオカルトな、馴染みのないものだった。詳細は秘されておりここに書くわけにはいかないが、雰囲気だけを言えばそれはおおむね、怪しげな儀式そのものだった。その手の創作物を楽しむものならば、逆に馴染みがあったかもしれない。