私はバーチャルホスピタルで、皮膚科の担当もしているのですが、しばしば悪性黒色腫の患者さんが来られ、化学療法を受けられていきます。
2019-09-10 23:41:38年齢がバレてしまいそうですが、私が薬剤師になりたての頃は、悪性黒色腫といえば、Feron局注療法、dav-feron療法、DTIC単独療法などが主要な化学療法でした。
2019-09-10 23:43:14悪性黒色腫とは悪性度の最も高い皮膚癌の一瞬で皮膚のメラノサイトが癌化したものをさします。 pic.twitter.com/igviMuGpJc
2019-09-10 23:46:17今現在、ノーベル医学賞を受賞するに至った免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブの一番初めの適応疾患は悪性黒色腫でした。
2019-09-10 23:48:54免疫チェックポイント阻害薬が登場するまでは、悪性黒色腫の治療成績は散々なものでした。 当時の代表的なレジメンであるダカルバジン単独療法(当院では200mg/m2,5日連投)を施行した場合でも奏功率が20%程度、1年生存率は40%程度でした。
2019-09-10 23:52:21非常に有名な臨床試験ですが、CheckMate-066試験の結果を示します。ニボルマブを使用した場合、1年生存率が72.9%とダカルバジン単独療法と比較して非常に優れた効果があることが示されたのです。当時、非常にびっくりしたのを覚えています。 pic.twitter.com/oFdnqXiLF2
2019-09-10 23:57:30ニボルマブは当時希少な悪性黒色腫のみしか適応疾患がなかったため、非常に高価な薬剤でした。しかしながら、少しずつ適応症が広がり、薬価も下がって使いやすくなってきました。(とはいえ、いまだに年間1000万程度かかりますが・・・)
2019-09-11 00:02:05画像は小野製薬さんのHPから昔拝借したものです。細胞性免疫の一つである、T細胞は通常がん細胞に遊走し攻撃を行うのですが、がん細胞のPDL-1とT細胞のPD-1の鍔迫り合いによって攻撃がスムーズにいかなくなってしまうことがあります。このリガンドの結合を妨害するのがPD-1抗体というわけです。 pic.twitter.com/mkwTMRS4II
2019-09-11 00:08:49免疫チェックポイント阻害薬は一般的な抗がん剤と違い、吐き気や骨髄抑制などをほぼ起こさない安全な薬剤だと当初は思われていました。ニボルマブの発売当初、私が経験した数例の自験例でも副作用が少なく、なんて扱いやすい薬なんだ・・・と思った記憶があります。
2019-09-11 00:15:12しかしながら近年、ニボルマブを含む免疫チェックポイント阻害薬に特有の副作用であるirAEが問題となっており、その認識は改めることとなりました。
2019-09-11 00:16:21irAEとはimmune related adverse event のことで免疫関連有害事象、の略となります。
2019-09-11 00:20:14従来型の抗がん剤では、骨髄抑制や吐き気などの副作用がある程度決まった時期に発言し、その時期の支持療法強化でかなりの部分をカバーできていましたが、irAEに関してはいつ、どのようなタイミングでどの箇所に出現するのかが非常に予測しにくいという特徴があります。
2019-09-11 00:22:14irAEの原因は自己に対する免疫の反応ではないか、などの意見がありますが、詳細についてはまだわかっていないことが多いです。
2019-09-11 00:34:52irAEには様々な副作用が可能性としてありえます。とはいえ、全てを一人の医師がフォローするのは困難極まりないので、普段なら見落とすような軽微な愁訴もしっかり調べ、必要に応じて専門医への受診勧奨も必要となります。 pic.twitter.com/nq1Fxf3Pov
2019-09-11 00:41:17起こってしまったirAEへの対応はASCOのガイドラインなどで示されていますが、G1程度ならば治療継続、G2ならば休薬し経過観察、G3ならば治療を中止し、副腎皮質ステロイドの投与で対応するとしています。それでも改善がない場合はインフリキシマブなどの免疫抑制剤の使用を考慮するとあります。
2019-09-11 00:48:52本日のまとめです。 ①免疫チェックポイント阻害薬は一般的な有害事象のリスクは低いがirAEという特有の有害事象に注意が必要である。 ②irAEの発生時期の予測は難しく、注意深く観察してirいく必要がある。 ③irAEがひどい場合は免疫抑制剤や生物学的製剤を使用する場合もある。
2019-09-11 00:57:07