【書評】岩田規久男『経済復興 大震災から立ち上がる』
第1章では、国債の日銀直接引受と、民間引受+買いオペとの比較の部分が興味深い(p39-42)。後者の場合、増加する貨幣は日銀当座預金までは及ぶが、民間の非銀行部門まで及ぶ保証がない(すなわち豚積み懸念)。直接引受には豚積み懸念がない。ただし「期待」の効果は買いオペ増でも生じる。
2011-05-26 23:43:50第2章では、関東大震災、太平洋戦争の敗戦、阪神淡路大震災からの復興経済対策を論じているが、特に戦後の解説の価値が高い。関東大震災から昭和金融恐慌、昭和恐慌までの流れは多くのリフレ本でおなじみだが、戦後の高インフレからドッジ・ライン、朝鮮戦争景気の流れも重要であることが理解できる。
2011-05-26 23:57:37第3章は復興まちづくりと今後のエネルギー政策について論が展開される。地域を破壊しつくす大災害は恐るべきだが、過去の災害復興では土地区画整理による区画と街路の整備により災害に強い都市環境を作り上げてきたことが紹介される。最初から「財源がない」ことを前提としてはこうした復興は不可能。
2011-05-27 00:14:41エネルギー政策では、内部化されていない原発費用に注目し、炭素税の導入見込みが不合理に原発推進を誘導してきたと指摘。放射線物質漏出リスクを見込んだ原子力利用税を導入すれば、どのようなエネルギーも高コストであるとし、日本はエネルギー効率を高める技術の輸出で貢献すべきとまとめている。
2011-05-27 00:25:22最終章である第4章では当然ながらリフレ政策を提言している。興味深いのは昭和恐慌時の高橋財政でマイルドインフレが実現したのに、戦後の石橋財政でなぜ高インフレが生じた理由で、それを輸入制限による大きな供給制約にあったと解説している。すなわち現在において高インフレが起きる理由はない。
2011-05-27 00:30:57金融緩和やインフレ目標でデフレ脱却が実現できるかはもはや論点ではなく、これらの政策がいわゆる“通貨の信任の毀損”を起こすのかの理解にあると思う。本著の最後を『政府が次の措置をとれば、財政規律喪失の懸念から国債金利が急騰することを防止できる。すなわち、』でしめているのは納得である。
2011-05-27 00:40:07