ヨロシサン・エクスプレス #6
「ヘァーハハハハ!」粉塵のなかで笑い声をあげたのは、キャスケット! 手をかざす!「イヤーッ!」「ンアーッ!?」爆発によって天井が吹き飛び、亀裂の外で聴こえたのはヤモトの叫び! 0
2019-10-25 22:05:28「ヘァーハハハ……捕まえたッてンだよ!イヤーッ!」キャスケットは両手を振り下ろす!「ンアーッ!」凄まじい勢いで落下し、床に叩きつけられたのは、ヤモト・コキ!「さあて!やるか!やるか!やるかァ!」サクリリージは、笑い出した! 0
2019-10-25 22:06:14「アイ……エ……?」車掌と共に食堂車にいた乗務員は、ニンジャの暴威を目の当たりにしたことと、実際に急過ぎる目の前の出来事を認識できず、ぼんやりとなっていた。それが死を招いた。サクリリージは彼の頸部を鷲掴みにし、容易く引きちぎると、背骨を引きずり出した。 1
2019-10-25 22:08:47ナムアミダブツ!だがその背骨をいかにするか!?その時だ!「ケキャーッ!」アクセルジャックが高速回転でサクリリージに接近し、ジャックナイフで斬りつけた!サクリリージは背骨をかざし、刃を受け止めた。ナムサン!?彼が構えた時、背骨は既に呪わしいバスタードソード形状に変形していたのだ。 2
2019-10-25 22:12:07「イヤーッ!」「グワーッ!」サクリリージは容易くアクセルジャックの斬撃を阻み、一瞬後に彼の腹に前蹴りを叩き込んでいた。「オゴーッ!」吐瀉物を螺旋噴射しながら吹き飛ぶアクセルジャックを、サクリリージは背骨剣で真っ二つに切り裂きにかかった。「グワーッ!」ナムサン!両断は回避!だが! 3
2019-10-25 22:16:21彼の顔面から鎖骨、胸、腹筋にかけて、凄まじい傷が生じ、血飛沫が噴出!「アバババーッ!」苦悶しながら床を転がるアクセルジャック!「ンンー……」サクリリージは目を細めて背骨剣を撫でた。「出来が悪いな……所詮は非ニンジャのクズの部品か」「イヤーッ!」畳み掛けるのはニンジャスレイヤー! 4
2019-10-25 22:18:59「イヤーッ!」飛び回し蹴りをサクリリージは見切って躱し、蹴り返した。ニンジャスレイヤーはクロス腕で受け、反動で壁に飛んだ。「お前、ニンジャスレイヤーと言ったな!妙な気分だ」サクリリージは言った。「懐かしい名を聞いた。お前は明らかにあれではない。だが腑に落ちもする。愉快だな……」 5
2019-10-25 22:22:56「貴様もか」ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。だが彼がまず注意を向けたのはサクリリージの肩越し、奥でザックのもとへ駆け寄るコトブキだった。まずは安全確保。それから彼は大柄なニンジャ、キャスケットを見る。「ムン!ムン!ムウウン……!」なんらかのジツでヤモトを抑え込んでいる。 6
2019-10-25 22:25:17ニンジャスレイヤーのニューロンが加速し、うつ伏せにもがくヤモトの四肢に、霞めいた謎の力がかろうじて視認できた。「そのまま押さえておけ、キャスケット=サン」サクリリージはニンジャスレイヤーにカラテを構えながら命じた。キャスケットは目から血を流す。「このアマ……さすがに馬鹿力だ!」 7
2019-10-25 22:29:33「いいから頑張れ。しくじったらお前を痛めつけるぞ」サクリリージは振り返らず言い放ち、ニンジャスレイヤーとサガサマを値踏みする(カナスーアはとうに別車両へ逃走してしまっている)。「二対一のイクサに持ち込んでみるか?貴様たち。だが、我らが戦う理由は無いようにも思うがね」 8
2019-10-25 22:32:56「あ、貴方の目的は?」サガサマの眉間を汗が流れ落ちた。「そこの彼女に一体、いかような……」「独自の事情がある。俺のニンジャソウルが属していたクランは色々と厄介でな。ンンー、何と言うべきか……サラリマンよ、お前の社長の心臓を食ってカイシャの株を独占できたら、どうするね?」「え?」9
2019-10-25 22:38:30「ン?喩えが不正確だったか?サラリマン」「わ、私はサラリマンですが、社長を殺したら、逮捕あるいは賞金首になり、退職金積立も無効になってしまいますよ」「どこまでも雇われ根性だな。いや、すまん。噛み合わない話をしたな」「雇われとかの話では……」サガサマは思わず議論しそうになった。 10
2019-10-25 22:42:26「隠喩だ、サラリマン」サクリリージは言った。「実際に心臓を食うわけではない」「そ……それはわかりますが……私が言いたいのはそういう事ではなくてですね」「とにかく、この女には死んでもらう。お前達はヤモトの知り合いかね?」「い、いえ、ですが……」「ならば放っておけ。ただの殺人だ」11
2019-10-25 22:47:44二人の押し問答の間、ニンジャスレイヤーは意識を研ぎ澄ませ、呼吸を深めた。サクリリージのカラテは恐るべきものだ。不用意な行動を取れば、致命的な攻撃が返ってくるだろう。実際、サガサマと話しながら、サクリリージは少しのスキも見せておらず、付け入る機会が巡ってこない。 12
2019-10-25 22:50:45一方のキャスケットは、床に釘付け状態のヤモトに集中している。その拘束の力は死者にまつわる力であると、ニンジャスレイヤーには……それは奥底に残るナラク・ニンジャの残滓ゆえにであろうか……ひと目でわかった。靄めいた白い気体には苦しみもがく人間めいた表情が浮かんでは消える。 13
2019-10-25 22:54:51その力が車両の上に潜んでいたヤモトを爆発の後に捕らえ、床へ引きずり下ろした。成る程、この者らにつけ狙われていたからこそ、わざわざ女子高生の姿に自身の力を押し込めて抑制していたというわけか。オリガミを用いて殺人犯の居場所を伝える行為も、ヤモトには相当にリスキーな行いであった筈だ。14
2019-10-25 22:58:59「……チッ。おれの面倒を増やしたな」ニンジャスレイヤーは呟いた。サクリリージは彼の言葉を別の意味にとった。「ニンジャスレイヤー=サン。お前のアティチュードはどうだ?これは内々の事情なのだ。無関係の俺に襲いかかるのは無法と思うだろう?」「……サガサマ=サン。少し引き受けろ」 15
2019-10-25 23:03:20「え?」「……」ニンジャスレイヤーは前に踏み込み、カラテを解き放った。「イヤーッ!」サガサマは反射的に同調し、サクリリージに立ちはだかるように動いていた。ニンジャスレイヤーはスリケンをサイドスローで投じた。スリケンは横に弧を描いて飛ぶ!「イヤーッ!」サクリリージが動く! 16
2019-10-25 23:06:02「イヤーッ!」サガサマは果敢な突進パンチでサクリリージに仕掛ける!KRAAASH!背骨剣が思いがけず、割れた!サクリリージが目を見開く。あと数打はもつと踏んでいた武器であった。サガサマの拳は驚くべき破壊力で骨剣を砕いた。衝突の瞬間、彼の手首は蒸気を噴いて、瞬間的に前に飛び出したのだ。 17
2019-10-25 23:08:36「ヌ……」サガサマのシャツをまくりあげた右腕、肘のあたりから炸薬シリンダーが排出された。「イヤーッ!」「イヤーッ!」サクリリージとサガサマのチョップが拮抗した。ニンジャスレイヤーのスリケンはカーブして飛び、キャスケットの脇腹に突き刺さった。「グヌッ!?」キャスケットは呻いた。 18
2019-10-25 23:11:56変則的軌道のスリケンはキャスケットにとって爪楊枝で刺された程度のものであったが、ジツの手綱を握り直すには一呼吸を要した。そしてヤモトにはその短い時間で十分であったのだ。「イヤーッ!」ヤモトはキアイ・シャウトを発し、白い靄を引き剥がし、その姿勢のまま、数十センチ宙に跳ねた! 19
2019-10-25 23:14:39キャスケットは目を剥いた。ヤモトは空中で膝を丸め、一瞬ゴム毬めいてから、大きく伸び上がった。「イヤーッ!」「グワーッ!」キャスケットが桜色の爆発を受けて怯み、後ずさった。散弾銃の接射めいて放たれた至近距離オリガミ・ミサイルであった!「バカめ!キャスケット=サン!」「仕方ねえ!」20
2019-10-25 23:17:41キャスケットとサクリリージは背中合わせに怒鳴りあった。キャスケットは咳き込んだ。「オイ、やっぱりハンパじゃねえ、シ・ニンジャ!」「……だろうな」サクリリージは認めた。彼は再び間合いを取ってニンジャスレイヤーと並び立ったサガサマを睨んだ。「武器の補充が必要になった。不測の事態だ」21
2019-10-25 23:19:57