貰いタバコ

小泉怪奇＠怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

完全にガスが晴れると歩いている他の登山者の姿も見え、その様子をツェルトから顔を出してキョロキョロと見渡している自分を通りかかる登山者達は気色悪げに見てきていた。 まるで先程の事が自分だけが異世界に迷い込んだのかもしれないと思うとゾッとする。 続く↓

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最終目標であるトムラウシ山までにはまだまだ行程もあるので、気を取り直して急ぎツェルトを片付け登山を再開した。 それからは特に奇妙な事には出くわさずに、予定通り無事縦走を終えた。 後日、地元の人にこの体験を話したところ面白い話が聞けたので、それも聞いて貰いたい。 続く↓

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曰く、「そいつは多分キムナイヌだな。こいつはとてつもない怪力で熊を握り殺してしまう上に、逃げても足が速いから追いつかれて殺されちまう」 というように土地に伝わる、恐ろしい怪物であるという事を教えられたが、助かる方法もあるのだと、その話も聞かせて貰った。 続く↓

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「タバコに火をつけて差し出してやると、危害を加えずに立ち去ってくれる。命はとられねぇ」 その内容にはっとした。 知らず知らずに自分が話の通りに助かる方法を取っていたのだ。 続く↓

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しかし、もし一歩間違っていれば、今頃は滑落死体かヒグマに襲われた死体として山で発見されていたかもしれない。 もしかすると誰にも見つけて貰えない場所で、朽ちた死体になっていたのかもなどと想像すると背筋が凍る気持ちになる。 続く↓

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なぜ大雪山が『カムイミンタラ』 神々の遊ぶ庭と古くに言われていたのか、少し解った気がする。 自身の体験ももしかした遊びのようなものだったのかもしれない。 そう思うと大自然において人間という存在はちっぽけなものなんだろうなっと感傷に浸るような気持ちになってしまう。 終わり