エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その3~

※実際の人参と効果効能は異なります。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21946 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その2~ 中華一番の新シリーズ見てます? ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。 9267 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語は、エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 今は六代目ダウバの話。食いしん坊の太めなおぼっちゃま。 夢は、一族に仕えるおいしそうなエルフの女奴隷を、世界一の料理にして食べること。

2019-11-29 20:50:33
帽子男 @alkali_acid

そのために世界一の料り手、つまり料理人になろうと奮闘中。 いよいよ東の果ての天子の国で、最高の料り手を決める大会「味比べ」に出場し、各地から集まった強敵と鎬を削る時が来たかに思えたのだが。 意外な邪魔が入った。

2019-11-29 20:53:04
帽子男 @alkali_acid

竜。 竜である。 ご存じない方のために説明すると、竜というのはとても体が大きく気の荒い、力の強い生きものだ。 洋の東西や時代によって姿は変わるが、天子の国では角は鹿、耳は牛、頭は駱駝、目は兎、鱗は鯉、 爪は鷹、掌は虎、腹は蜃、項は蛇に似ているとされる。

2019-11-29 20:56:04
帽子男 @alkali_acid

まさしく皆がよく知る通りの竜が、味比べが開かれている南の都の大通りを、のたうちながら驀進していた。 大河の縁(へり)にある港から、街の中心である大餐庁(グランドレストラン)に向かって一直線だ。

2019-11-29 20:58:10
帽子男 @alkali_acid

天子の国の特に南部では永らく竜を畏(おそ)れ敬っていたこともあり、住民の驚き慌てようはひとかたでない。 しかもこの竜、全身から髭根(ひげね)のようなものが生えて蠢(うごめ)き、四方八方に伸びては闇雲に色々なものを掴んで巻き取る。路上に敷き詰めてある石畳を剥ぎ、酒楼の欄干をもぎ、

2019-11-29 21:01:21
帽子男 @alkali_acid

すぐに打ち捨てる。 やがて物見高く舞い降りてきた鴉やら鴎(かもめ)やら、水路を泳ぐ鯰(なまず)やらも捕まえる。命あるものを捕えた際だけは離さず、根から伸びる繊毛を体表に食い込ませる。するとたちまち鳥も魚も干からびて死んでしまうのだ。

2019-11-29 21:04:21
帽子男 @alkali_acid

吸血竜。 いやはやとんでもない怪物もいたものだ。 さすがに天子の国は、東の果て。西の果てにおわすという偉大なる神々、光の諸王の加護の届かぬ地だ。 しかも大夫(たいふ)から匹夫(ひっぷ)まで暮らす家は万戸(ばんこ)を数える南の都で暴れるのだから、人間が犠牲にならないはずもない。

2019-11-29 21:07:26
帽子男 @alkali_acid

まさに竜の髭根が、最初の餌食として一人の少女を捕え、そのみずみずしい生き血を啜ろうというところ。 しかしいたいけな餌食は間一髪、危機を脱した。 包丁がくるくると回りながら宙を飛び、木質の触肢を断ち切ったのだ。

2019-11-29 21:10:59
帽子男 @alkali_acid

「まてまてまてい!竜参(りゅうじん)よ!お前を作ったのはこの私…食い殺すなら…私にしろ!」 叫んだのはいかつい巨漢。長虫の這った後を追って、港から馬に乗って駆けてきたようす。鍋を背負い、玉杓子や菜箸を帯びた姿はどうやら料り手だ。

2019-11-29 21:14:03
帽子男 @alkali_acid

たちまち怯え惑っていた人々の間から歓声が上がる。 ご存じの通り、料り手といえば皆、万夫不当のつわものばかり。料理を究めるためには功夫を練り、無双の強さを克ち得ねばならない。さもなければどうやってあの烈火の燃え、鋼刃が乱れ飛ぶ厨房という修羅場で、一日に何百もの客に絶品を供せよう。

2019-11-29 21:17:08
帽子男 @alkali_acid

「カムエだ!」 「生薬の半島のカムエが来てくれたぞ!」 「あの男なら竜だって捌(さば)してしまうに違いない!」 皆は恐怖を忘れて口々にそう喚く。

2019-11-29 21:18:49
帽子男 @alkali_acid

カムエは、助けた少女を巨きな竹籠で受け止め、建物の一つから腕を差し伸べる中年の女に預けると、手綱を弾いて吸血竜に向き直る。厳めしい表情は、なぜか冴えない。 「…南の都の民よ!済まぬ!この竜参を培(つちか)ったの誰あろう…私!すべては我が過(あやま)ちなのだ!!」

2019-11-29 21:21:13
帽子男 @alkali_acid

何たることか。 救いの主と思えた男が、実は災いの元凶とは。 「…すべては味比べで勝利する…最高の薬膳を作らんがため…我が丹精が…かようなかたちになろうとは」

2019-11-29 21:23:03
帽子男 @alkali_acid

ここで時を少し戻そう。 世界一の料り手を決める料理大会、味比べ。 先述のように各地から腕に覚えのあるものが集まるが、南の都からみて海をはさんで東にある生薬の半島も例外ではない。長く半島の料林(りょうりん、料理界のこと)筆頭の座にある達人、カムエもこたびこそはと備えをしていた。

2019-11-29 21:26:26
帽子男 @alkali_acid

味比べではもう相当な歳月、謎の料姫(はかりひめ)なる正体不明の料り手が連覇を続けており、練達の腕を持つ各地の強豪はいつも苦杯をなめてきた。 大会は開催のつど異なるお題を用意しており、「烏龍茶に合うお茶請け」「僕等の天子様のKAWAIIほっぺが落ちちゃうときめき☆甘味」など多様。

2019-11-29 21:30:47
帽子男 @alkali_acid

内容によってどの料り手が有利になるかは変わるはずだが、いかなる趣向であっても料姫は食材選び、調理、客を沸かせる演出などあらゆる面で常に他を圧倒した。 だが今回は「医食同源」。体を健やかに保つ美食をという内容。まさに薬膳を得意とする生薬の半島の秀抜にとっては、またとない題目だ。

2019-11-29 21:37:44
帽子男 @alkali_acid

味比べの覇者となる唯一にして最大の機会と考えたカムエは、薬効に優れた上等の野菜や畜禽をかき集めて船に積み込み、さらに、とある秘蔵の品をも携えて、勇躍南の都へ乗り込もうとした。 しかし最後の一つが仇となった。

2019-11-29 21:40:09
帽子男 @alkali_acid

「我が故郷、生薬の半島において最も優れた薬膳の具といえば、人参(にんじん)…人のかたちをした希少な薬草の根…抜こうとすると聞いたものの気を狂わせる絶叫を発するため、犬につないで引かせるなど、扱いが難しいが…」

2019-11-29 21:43:13
帽子男 @alkali_acid

出発前、カムエは農夫の如く土にまみれて働きながら独りごちたものだ。 「かつて私は、最高の人参を鼠に食わせ続け、その体内で濃縮した成分の宿る血を料理に用いようと考えたが…失敗した。しかし失敗したことがかえって気付きを与えてくれた」

2019-11-29 21:46:47
帽子男 @alkali_acid

「いかに生体(いけるからだ)で人参の成分を濃縮させても、所詮、鼠の血は鼠の血。人参の旨味(うまみ)も効目(ききめ)も完全には引き出せない…ならばどうするか…人参に人参を食わせればよい!」

2019-11-29 21:47:53
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