今更、三浦瑠麗氏のTVでのスリーパーセル発言とその後の検証(2018/2)まとめ

*20ＸＸ年Ｘ月Ｘ日深夜、山口県西部の広範囲の地域が停電となった。一部の変電所で爆発が起きる一方、ほぼ同時刻に複数の送電線が切断されたのだ。〜

日本政府の極秘資料は、約10万人に上る北朝鮮の特殊部隊のうち約2,500人が人民武力省偵察局所属の日本専門の工作員と推定。うち500人前後が日本に向かうと分析している。〜

日本に長年潜入中の休眠工作員（スリーパー）もいる。政府関係者によると、阪神大震災の時、ある被災地の瓦礫（がれき）から、工作員のものと見られる迫撃砲などの武器が発見されたという。〜

• 『“核の脅威”20ＸＸ年　北朝鮮が…連載第3回 重要施設を警備せよ　＜第１部＞陸自いつ出動、武器使用は』 東京読売新聞2007年01月19日（原文ママ）（孫引き）

*三浦瑠璃さん、迫撃砲はどこにいったのですか？ ーー中西輝政名誉教授が流した妄想の責任は重いーー

政治学者の三浦瑠璃さんが、阪神大震災のとき北朝鮮の迫撃砲が出てきたとブログで書いたのは、テレビのワイドショーで朝鮮有事には日本で、とくに大阪でテロリストが行動するという「とんでも発言」が激しい批判を受けたことに対する自説補強のためでした。しかし警察庁に問い合わせると被災地から迫撃砲など出ていませんでした。正確にいえば出てきたのは黒焦げの迫撃砲「弾」で、どうも旧日本軍のものと見られています。迫撃砲があったというのは政治学者の妄想というよりもデマです。どこからそんなデタラメが出てくるのかと追ってみると中西輝政・京大教授（現在は名誉教授）がいました。政治学者としては三浦さんの先輩にあたるでしょう。
「日本の国防力が目覚める時」という、これまた「とんでも論文」が掲載されたのは「Voice 」2004年3月号でした。冒頭で日本が「差し迫った一大テロの危険もある」としてこう書いています。「阪神・淡路大震災直後の救助中に、倒壊した家屋の地下からたくさんの武器庫が見つかったとされる」「そこには二〇〇一年の奄美大島沖の『不審船事件』で、北朝鮮の工作船に積まれていたものと同クラスの武器も多数隠されていたとされる」「いまも同じような武器庫が日本国内に多数存在するとみられている」「日本の、それも東京•大阪などの大都市がれっきとした戦闘地域なのである」。
一読わかるように「される」「みられている」と事実確認から逃げつつ、結論は東京や大阪が危ないと断定する手法なのです。そこで2001年の北朝鮮不審船から出てきた武器を海上保安庁に問い合わせました。海上保安庁からは広報誌『かいほジャーナル』増刊号の「工作船特集」が提供されました。北朝鮮からの工作船は平成13（2001）年12月22日に自爆、翌年９月11日、海上保安庁によって引き上げられました。回収された主な武器は以下のとおりです。ロケットランチャー、82ミリ無反動砲、携行型地対空ミサイル、５・45ミリ自動小銃、14・5ミリ２連装機銃、７・62ミリ軽機関銃、手榴弾（6個）。
すごい武器群に驚きました。こうした工作船対策はもちろん強化しなければなりません。しかしここでの問題は中西教授が主張するようにこうした武器が阪神大震災の倒壊家屋の地下から見つかっていたかどうかです。そこで警察庁に不審船から押収された武器を明示して再度問い合わせました。結論からいえば、予想通り事実ではありませんでした。出てきたのは手榴弾３発です。しかも旧日本軍のものだといいます。政治学者の肩書きでこうしたデマを吹聴する責任は重い。中西教授の原稿は14年も前のものですから世間の眼にはとまらないでしょう。しかし三浦さんの発言は、北朝鮮の危険性が増している2018年に、しかもワイドショーという影響力ある場でのものですから、その社会的責任はきわめて重いと指摘しなければなりません。（2018/2/24）*