テシナプス 第一話「戦場からのエクソダス」その1

たゆさいのオリジナル世界のお話のその1です。過去の作品との関係性は特にありません
0
たゆさい @tayusai

「よし、仕方ねえな」 しかしあたしはアークメイジよ。こういう時の対処法はしっかり心得てる。あたしは右掌を自分に向けて、左手の指で掌に魔術式を書く。精神魔法は得意分野じゃ無いので魔力を引き出すのでこういう面倒な工程を踏まなきゃならん。それが嫌なんであまり使いたくないんだがね。21

2019-12-10 03:11:11
たゆさい @tayusai

しかしそうも言ってられない。どうにか魔術式を書いてイメージを具象化し鎮静作用のある魔法エネルギーを右掌に現出させることに成功した。 「よしと、えい」 あたしは不意を突くように子供二人の額に一瞬で右掌のエネルギーをとんとんと押し当てた。22

2019-12-10 03:59:04
たゆさい @tayusai

即効性のある鎮静魔法のおかげで子供はつい今まで泣き喚いていたのが嘘のように泣き止んだ。あたしは改めて説得した。 「これで落ち着いたな。いいか?ここは危険だ。おっかない兵士達がたくさんいてあちこちで殺し合いをしてやがる。お前らのような住民の事もお構い無しでな。23

2019-12-10 04:15:22
たゆさい @tayusai

要するにここにいるとお前らも死んじまうということだ。お前らを守って亡くなったご両親の後を追いたいと言うんだったら無理強いはしないが、あたしとしてはすぐにここから離れることをオススメするね。どうだ?」24

2019-12-10 04:26:14
たゆさい @tayusai

子供らは両親の遺体に目をやる。魔法で大人しくなっているとはいえやはり辛いんだろう。目から涙がとめどなく流れる。 「…………うん」 長い沈黙の中で男の子が答えた。女の子はまだ俯いたままだったがやがて小さく頷いた。 「いよっし、じゃあここから脱け出すぞ」25

2019-12-10 04:28:34
たゆさい @tayusai

あたしは女の子を抱っこし、男の子を後ろにおんぶした。 「ふんッ」 あたしは全身から放出魔法を出し、魔力のバリアをあたしの周りに構築。これはかなり疲れるが銃弾ぐらいなら凌げる。だが展開できる時間は少ない。急がないと。  こうしてあたし達の逃避行は始まった。26

2019-12-10 04:31:43