貴金属スペシャリスト 池水雄一によるツイートで読み解く貴金属講座「ゴールド」

日本貴金属マーケット協会(JBMA)代表・貴金属スペシャリスト 池水雄一によるツイートで読み解く貴金属講座。
16
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその1」 さてゴールド。たぶんその100くらいまで行ってしまうかもしれませんが、ゆるりとお付き合いください。ゴールドの元素記号はAuです。シルバーはAg、プラチナはPt、パラジウムはPd。大雑把にこの4メタルが貴金属です。(白金族はあと4っつありますが、マーケットがあるのはこの2つ)

2019-12-14 15:32:43
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその2」 ゴールドの年間鉱山生産量は3300トンぐらい。プラチナ250トン、パラジウム284トン。シルバーは桁が違って26500トン。もし純粋に生産量からの希少価値だけで考えるとゴールドが1475ドルとするとPt 19470,Pd 17110, Ag 17.64ドルとなります。

2019-12-14 16:35:03
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその3」 希少価値は大事ですが、それだけでゴールドの価値が決まっているわけではありません。まずその本質的価値を考えてみましょう。僕が考えるゴールドの最高の価値はその不変性です。自然界に存在するいかなるものにも反応しません。鉄や銅のように酸化して朽ちることは無いのです。

2019-12-14 16:43:09
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその4」 ゴールドはその不変性のおかげで何千年たってもそのままの形で残ります。その重さゆえのコンパクトさでそして永遠に富を残すことができる「富の入れ物」としてこれ以上のものはありません。3000年以上前のツタンカーメンのマスクがそのまま残っているのはまさにゴールドだからです。

2019-12-14 17:54:53
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその5」 ゴールドは有史以来人間により蓄積されて来ました。その不変性が故に一度地上に出されたゴールドは減る事はありません。そのため地上のゴールドは増え続けていると言えます。現在の地上在庫は約19万トン。オリンピックプールの約3.7杯分ぐらいだと言われています。

2019-12-14 19:50:25
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその6」 地上に存在するゴールド約19万トンの約半分の9万トンが宝飾品。4万トン近くが投資家が保有する地金やコイン。3万トンちょいが世界の中央銀行が地金で持っており、余りの3万トンがその他の形で存在しています。現在年間3000トン以上掘られており、その分地上のゴールドは増えます。

2019-12-14 20:09:51
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその7」 19万トンあるとされる地上のゴールド、そのうちの2万から2万5000トンがインドの個人と寺社が持っているとされます。インド人の金好きは本物です。世界の中央銀行の保有ゴールドの総計が3万2000トンくらいなので、インドの個人と寺社の保有量の規模の凄さがわかるでしょうか。

2019-12-14 20:36:40
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその8」 各国の中央銀行は「外貨準備」と言う名目で資産を保有しています。ゴールドも外貨の一項目としてこの中に入ります。ドルやユーロ、円などと並びゴールドも外貨として蓄えられているのです。ゴールドの保有量だけでなく、外貨準備におけるゴールドの割合を見ることが大事です。

2019-12-15 08:24:54
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその9」 ゴールドを一番多く保有するのはやはりFRB。8134トン。米国の外貨準備の75%を占めます。基軸通貨を自由に発行できる米国がそれ以下の通貨を持つ意味があまりなく、ゴールドがおそらく唯一の選択肢と言っても良いのでしょう。しかし実は米国は1971年以来ゴールドを触っていません。

2019-12-15 16:30:53
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその10」 1971年ニクソン大統領は突然ドルとゴールドとの兌換の中止を発表しました。第二次ニクソンショックです。それまで米国はゴールド1オンスを35ドルで交換していました。ゴールドは35ドルの固定価格だったのです。1960年代頃までは米国は2万トン以上ものゴールドを保有していました。

2019-12-15 16:38:56
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその11」 1960年代ベトナム戦争の影響で米国の財政は急速に悪化。欧州各国はドルを持ち込みゴールドを米国から引き出し、ゴールド持高が8000トン近くまで減少。1971年米国は金本位制を放棄、ゴールドの価格は35ドルから一挙に需給が価格を決める自由相場へと移行したのでした。

2019-12-15 16:43:41
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその12」 外貨準備で高い割合(6割から7割)で持っているのが米国以外では西欧の国々。ドイツ3370トン70.2%、イタリア2452トン66.6%、フランス2436トン60.2%、オランダ612トン66.7%、ポルトガル383トン65%。みんな2度の大戦での経験からか、ドルよりもゴールドを信頼しているようです。

2019-12-15 17:02:03
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその13」 欧州の中央銀行は80年代から2007年までゴールドの売り手でした。ソ連崩壊により冷戦が終わり、戦争を知らない世代となった中央銀行の資金運用担当者は、金利の低いゴールドを売って、より金利の高いドルに乗り換えて行ったのです。しかし2008年その流れが変わります。

2019-12-15 17:12:54
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその14」 2008年リーマンショックにより欧州の中銀のゴールド売却は終わり、逆にそれまでゴールドとはあまり縁のなかった新興国がゴールドを買い始めます。それまでゴールドの売り手だった中央銀行と言うセクターが今度は大きな買い手となることで二重のインパクトを相場に与えたのです。

2019-12-15 17:17:49
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその15」 近年特にゴールドを増やしているのがロシアと中国です。2018年末でロシアは2113トン18.7%、中国1853トン2.4%。両国とも外貨準備の大部分米国債ですが、それをゴールドに乗り換える動きです。経済制裁や貿易戦争を考えると当然の動き。ゴールド買い余地はまだまだあるでしょう。

2019-12-15 17:26:26
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその16」 ゴールド年間鉱山生産は約3300トン。最大の産金国は中国400トン、2位オーストラリア312トン、3位ロシア282トン、4位米国253トン、5位カナダ193トン、6位インドネシア190トン、7位ペルー165トン、8位南ア124トン、9位メキシコ122トン、10位ガーナ101トン。以下は100トン以下。

2019-12-15 21:28:45
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその17」 ゴールドと言えば南アのイメージが強いですね。確かに1960年代南アは年間1000トンを生産し、当時の生産量の1500トンの2/3を占めるガリバー的存在でした。しかし、その生産量は年々減少し、今は124トン。まだゴールドはあるのですが、深くコストのかかる鉱脈となっているのです。

2019-12-15 21:35:36
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその18」 ゴールドはプラチナと対照的にほぼ世界中に分布しており、その生産も安定しています。例えば南アで生産障害が起きても現在の世界の供給には深刻な影響は与えません。十分な地上在庫もあり、流動性の心配が無いことが、逆に投資対象としても安定性として評価されています。

2019-12-16 13:22:18
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールド19」 ゴールドの供給は鉱山生産に加えて、スクラップからの二次供給があります。鉱山生産3300トンに対して1200トン。総供給は4500トン前後(2018年)でした。都市鉱山と言う言葉を聞くことが増えましたが、まさにそれにあたります。宝飾品が最大ですが、電子機器にもゴールドが含まれます。

2019-12-16 17:17:55
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその20」 日本はその昔「ジパング」と呼ばれましたが、その名に恥じない金生産大国でした。佐渡や土肥、伊豆、尾去沢、たくさん金山はありましたが、ほぼ掘り尽くされて、現在稼働している金鉱山は住友金属鉱山の鹿児島県の菱刈金山のみです。年間約6トンのゴールドが生産されています。

2019-12-17 14:14:07
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその21」 菱刈鉱山はその生産量こそ年6トンと少ないものの鉱石1トン当たりのゴールド含有量は30グラムと世界の金鉱山の10倍以上を誇るとてもゴールドが濃い鉱脈です。これまで242トンを産出しており、閉山した佐渡金山が83トンであったことを考えると歴史的にも日本最大だと思います。

2019-12-17 15:13:10
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその22」 2018年ゴールドの需要4153トン。宝飾需要が51%で最大2129トン。投資需要が26%1097トン。公的機関購入13%536トン(これはおそらく新しい統計で増加訂正されるはず)、その他産業用需要10%391トン。宝飾も投資と考えるとゴールドの需要の9割は投資需要という事になります。

2019-12-18 09:27:20
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその23」 ゴールドの需要が宝飾品と投資で9割を占めるのは、他の貴金属と正反対でそれがまさにゴールドのゴールドたる所以。その他のメタルは7割から9割が実際に使われる産業用需要です。投資用という事では圧倒的にゴールドがその中心にあります。中央銀行はプラチナは買いません。

2019-12-18 10:21:26
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその24」 今朝の円建て価格5330円は40年ぶりの高値でした。では歴史的高値は?1980年1月に6495円。第二次オイルショックとソ連アフガニスタン侵攻でゴールドが875ドルへ急騰。当時の為替は240円台でした。たった数日間でゴールドは急落したので、月足や四半期足のチャートでは出ません。

2019-12-27 14:35:03
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「ゴールドその25」 ドル建てゴールドの最高値は2011年9月の1923ドル。しかし当時の為替は70円台後半だったので円建ては4800円程度でした。円建て価格にはゴールドよりも為替の影響が大きいことがよくわかります。外貨建てのゴールド価格で過去数年に最高値をつけてないのは円建てだけかも知れません。

2019-12-27 14:51:37