ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン#3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン】#3 pic.twitter.com/yYcX2O72aE

2019-12-28 18:29:59
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「ウォーワワー!ワワーウォー!」銃座のカラテナキウサギが前方を指差し、マスラダに語りかけた。((( "谷" の入り口だ。隠されている))) 彼のニューロンに声が響いた。マスラダは頷いた。並走するコトブキはマスラダのその様子が気になってならない。「コミュニケーションしています。動物と」 1

2019-12-28 18:31:55
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「できるさ。アニキだからな」ザックは頷く。バイクが岩に乗り上げ、高く跳ねたので、慌ててコトブキにしがみついた。マスラダは二人を一瞥する。コトブキが思い切ったように尋ねた。「どうしてカラテ動物と話ができるんですか」「いや、違う」マスラダは言った。「こいつの声ではない」 2

2019-12-28 18:35:40
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「どういう事です?」「こいつらを中継して、話しかけてきている奴がいる。多分な」「IRC通信の端末めいています」「さあな……」「わたしも受信できればいいのに」「鬱陶しいだけだ」「でも、動物と相互理解できるんですよ」「俺もやってみてェ!」「ウォワー!ワンワーワー!」見よ、前方! 3

2019-12-28 18:41:13
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峡谷は不意に先が細り、行き止まりが見えた。切り立った崖の亀裂から水が落ち、飛沫を作っている。だがバギーは停止するそぶりを見せない。スワ、衝突!ザックは目を閉じる。しかしその一秒後、彼らはディジタル・ノイズの霧を突き抜け、棚田めいた景色を見下ろしていたのだ。 4

2019-12-28 18:45:53
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「ス……スゲェ」ザックが驚嘆した。バギーの中ではヨロシ・サトルが、さも平常時めいて、狼狽えるナインに対して自信に満ちた説明を行っていた。何しろ彼は先程一度この信じがたい迷彩領域に招かれているのだ。一行は段上の大地を巡りながら、徐々に底部を目指していった。 5

2019-12-28 18:49:38
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道の脇の棚田では実際、痩せた農作物が栽培されている。速度を落とし進む彼らを、農作業中の二足歩行カラテビーストがじっと見つめる。彼らは黒帯を締め、手には農機具を持っている。「ウォンウォー」銃座のカラテナキウサギが手を振ると、彼らも手を振り返した。 6

2019-12-28 18:53:22
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「さすがにこれは奇妙ではないですか?」コトブキが訝しんだ。「ここは一体……?彼らは積極的に人間を襲撃する危険なビーストである筈です」「おれに訊くな。じきにわかる」マスラダはしかめ面で答えた。「ここにおれ達を呼んだ張本人が出てくるだろう」 7

2019-12-28 18:57:23
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ドンポコ、ポコポコ、ポココ……。要所要所に建てられた物見櫓の上にはカラテビーストと防護服姿のリコナーがペアで居り、下へ来訪者の到着を伝えるように、櫓に垂れ下がった粗末な打楽器を棒で叩いた。奇妙なリズムがマスラダ達に寄り添う。やがて彼らは底に辿り着いた。円い湖を囲む家々に。 8

2019-12-28 19:00:23
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「ウォーワンワワ」「ワンワー!」車両を停止させた彼らのもとに、カラテウォンバット達が駆け寄った。バギーのドアが開くと、カラテウォンバット達は用意した担架に手際よくナインを寝かせた。CEOがナインの手を取り、安心させる。「彼らはよき隣人だ。信頼できます。今は休みなさい。働くために」 9

2019-12-28 19:04:42
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カラテウォンバットと入れ替わるように、防護服姿のリコナーが二人現れアイサツした。「よくぞ戻った、アーロン=サン」「報告は既に、ドリームキャッチャーとファストストリーム=サンを通じて」「ああ」二人はうなだれるアーロンに近づき、ハグした。「彼らは残念だった」「死は終わりではない」 10

2019-12-28 19:08:25
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それからアーロンを含めたリコナー達はあらためて、CEOとマスラダ達に向き直り、オジギした。「ようこそ。ドリームキャッチャーの谷へ。歓迎いたします」コトブキとザックはアイサツに応じたが、CEOは尊大であり、マスラダはいまだ心を許していなかった。「それで?おれを呼びつけた奴はどこにいる」11

2019-12-28 19:13:50
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「ウォルー」カラテナキウサギが銃座から飛び降り、マスラダの腕をポンと叩いた。(((この者が案内しよう。私も、君の物理姿に対して、直接アイサツしたいと思っているのだ))) 「こいつらも同行させる」マスラダはコトブキとザックを示した。(((勿論だ。構わない))) カラテナキウサギが歩き出した。12

2019-12-28 19:18:25
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「貴方も来るのですか?」コトブキは後ろをついてくるヨロシ・サトルに尋ねた。サトルは頷いた。「無論です。私はなにも、ここにリゾートしに来たわけではありません。あらためてビジネスの話をせねば」「ワンワー」彼らは湖畔の桟橋から、エンジンつきのボートに乗り込んだ。 13

2019-12-28 19:26:29
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ドッドッドッドッ……。うるさいエンジン音のボートは、湖上の影に向かう。近づくにつれてその詳細がわかる。水没しかかった、データセンターじみた建造物だ。最上階部分が湖上に露出しているのだった。「それで、何故ヨロシサンのCEOがネザーキョウに居るのですか」コトブキがサトルに尋ねた。 14

2019-12-28 19:31:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ、それはちょっとした手違いです」サトルは答えた。「プライベート・ジェットがネザーキョウの領内に墜落しましてね。おかげで重大なビジネス会合が数件延期となってしまいました」「まあ!大変なのでは?」「ハッハッハ」サトルは新鮮な反応に寛大な笑いで応じた。「どうという事はない」 15

2019-12-28 19:34:59
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「遭難というわけか」マスラダはCEOを鋭く見た。ザックが感心した。「詳しいぜ!ヨロシサンって超デカイ暗黒メガコーポなんだ。そこの社長でも、そんな風にボロボロになっちまう事あンだな!」「いえ、手違いです」CEOは言った。「既に救難信号も発信し、応答を確認している。遭難ではありません」16

2019-12-28 19:39:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え!だってさあ……」「坊や、君にはわからない複雑な物事が、世の中にはあるんですよ」サトルはザックの肩を強めに叩き、微笑んだ。「旅程を変更し、急遽、私CEO自らが、未開の地であるネザーキョウ内で健気に文明活動を行っている皆さんとの、力強い協力関係を築く事になった。普通ですよ」 17

2019-12-28 19:44:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウーン」コトブキは眉根を寄せた。マスラダは「株価だ」と言った。サトルは微笑み、否定しなかった。「不用意な流言飛語で世界恐慌を招きたいとは思わないでしょう。そして実際、いかにネザーキョウを切り崩すかは、UCAにとって重要事項です。今回はリコナーとのホットラインを築くチャンス」 18

2019-12-28 19:52:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺、リコナー詳しいぜ。俺達、前に、リコナーの世話になっててさ。尊敬できるやつだった。……ゲニンどもに、殺されちまったけど」ザックは伏し目がちに言った。「この谷に住んでるのは、皆リコナーなのか?」「そのようですね」サトルは頷いた。「彼らは獣と共存している」 19

2019-12-28 19:56:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それが気になるんです」コトブキは勢いこんだ。「どうやるんでしょうか?」「……その答えが、ドリームキャッチャー」と、CEO。「この谷のいわば心臓は、最初のリコナーであるファストストリーム=サンと、ドリームキャッチャー。この地の共存関係を作っているのは彼らが通じ合っているからです」 20

2019-12-28 20:03:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待って!最初って事はさ、俺の知ってるXX-002のセンセイのXX-001の、そのまたセンセイの、ええと、そのまた、そのまたセンセイって感じの奴なのか!?」「フフッ、そういう事になりますね」CEOは認めた。「彼は別名A-1。カナダを旅し、プロキシを伝導し、やがてこの地に辿り着いたようです」 21

2019-12-28 20:07:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スゲエ!アンタ俺より詳しいな!」「当然です。私は責任あるヨロシサン・インターナショナルのCEO。特にネザーキョウは文明社会にとって目下の重大な懸念だ。リコナーに関しては以前より目をつけていました。私は相当に詳しいのです。ゆえにA-1との遭遇は、ちょっとした驚きで私を感動させました」22

2019-12-28 20:11:32