『ウェーイwオタクくん観てる~?w』

俺の、雄姿をさ……へへ……
85
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「とゆーわけでww今夜オタクくんと俺だけの飲み会を開催しまーすwww」 ことさらに明るく、クロモリ鋼の義肢の駆動音を残してささやかな密談は一方的に終わった。 「……整備用の純水でもこっそり持ってくるか」 男はそう一人ごつと、『機械仕掛け』の格納庫へと歩を向けた。

2020-01-12 13:23:19
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「とゆーわけでwwオタクくんのさらなる発展を願いましてーwwwwかんぱーいwwwww」 かつん、とアルミカップが触れ合う。一応『英雄』である男には特別待遇として個室があてがわれており、バディである彼用の簡易寝台さえ用意されているので、こっそり酒宴を開くくらいは造作もない。

2020-01-12 14:25:56
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

整備用の純水で割った火酒は、カップの中でもやもやと滲んで溶け合う。 ここ数年で嗅いだなかでは最も、と言っても過言ではないくらいの豊潤な香りが部屋を満たす。思わず男は深呼吸をする。

2020-01-12 16:16:03
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「さーてとりあえずwww一杯いきますかwwww」 彼の声に合わせてまずは一口含む。『戦い』の始まる前でさえほとんど飲みつけなかったのだが、今はすっと飲み干せることに自分のことながら驚く。対して彼は軽く咽せこんでいて、そちらにも驚いたのだが。

2020-01-12 16:25:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「うっわ濃いなーこれwwwオタクくんよく飲めんねこんなキッツいのwwwwwソンケーするわwww」 強い酒精のせいか目が潤み、頬を染めた彼が、ひどく魅力的に見え男はカップを呷る。 「ねーオタクくんさーwww……」

2020-01-12 16:25:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「今日、なんの日か覚えてる?w」 男の心臓が跳ねた。 記憶が正しければ、彼女の誕生日『だった』日であり、彼が腕と脚を失った日であるはずだ。 「……覚えてる」 「さっすがオタクくんww記憶力いーいwww」

2020-01-12 16:25:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

極めて平板な声を装ったつもりだが、多分彼は勘付いただろう。 彼が腕と脚を失った日、それはとりも直さず『男が英雄になった日』でもある。 彼の四肢を犠牲にしながらも、男が『彼のための英雄になる』と決めた日。

2020-01-12 16:38:40
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「おかげでさ、俺もこんなカッケー体になれたわけよwwwピンピンしてるしさww」 「しかし……」 「昔よりよっぽど女子ウケやっべーわけwwwオタクくんには感謝しかねーわwwww」 「……」 けらけらと彼は笑う。その姿が痛々しく見えてしまうのはこちらの錯覚だろうか。

2020-01-12 16:38:40
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「でさww酒誘ったのも実はウソwwwオタクくんと久々にサシで話したくてwwww」 「……?……!?」 男が首を傾げる間もなく、彼は男の身体を掻き抱いていた。 「……こーしたかったんだわw」 「どうして……?」 「オタクくんとの付き合いwww何年になると思ってんのwwww大体のことはわかるって〜wwww」

2020-01-12 17:00:59
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「オタクくん、ここ最近寝てねーっしょ?w」 「……ッ」 「ハイ図星〜w」 たしかにここ数日、男はほぼ眠れていない。『彼女』の誕生日が近くなると毎年のように不眠が数日続く。

2020-01-12 17:18:11
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

彼の硬い右腕と、しなやかな左腕の感覚を背中に感じながら、男は彼を抱きしめる。 体温のない彼の右腕が、辛うじて男の理性の糸をつなぎ止めていた。

2020-01-12 17:43:47
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

戦闘のあとの熾火のような感覚がまた臍の下にわだかまるのを感じて、男はあわてて身をよじった。しかし彼はそれを見越したのか、男の腰を太ももでがっちりとホールドしていた。 「オタクくんダメだぞ〜w恥ずかしいことじゃないからなww」

2020-01-12 17:51:49
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

男が観念したように体の力を抜くと、彼の唇で男の唇が塞がれた。貪るように激しく、渇きを癒すかのように切なく。

2020-01-12 17:55:09
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「〜〜〜〜っぅ!」 途中から呼吸も忘れていたらしく、息苦しさに先に唇を離したのは彼だった。 「は〜wwwオタクくん肺活量やっばwwww」 口調のわりには彼の表情に余裕はなく、瞳は夏にうかされたようにとろけている。男はそれに応えず、彼の首筋にもキスを浴びせる。

2020-01-12 17:59:14
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「痕残るじゃんwwwやーめーろーってーwwww」 「じっとしてろ」 「オタクくんワイルドぉ〜www」 彼の簡素なタンクトップを脱がせて、男は存分に彼の身体を味わう。 「えっ、ちょっ、そこは」 「……」

2020-01-12 18:16:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

キスが形のいい胸板に及んだとき、彼は初めて顔を背けた。嫌悪ではなく、与えられる快楽に負けそうであるという意思表示として。 右の胸は腕との結線のためほとんど金属プレートと神経接続のためのケーブルになっている。

2020-01-12 18:16:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

が、その接合部位はかなり敏感である、と軍属のエンジニアやドクターから聞いていた。いつもはやり込められているのだ、多少の意趣返しくらいいいだろう、と男は金属と肌の境目に軽くキスをした。

2020-01-12 18:16:50
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

「〜〜〜〜〜ッッ!?」 声にならない悲鳴、いや嬌声をあげて彼は弾かれたようにのけぞった。 そうして息も絶え絶えという状態で彼は男の体に身を預ける。 「……えっち」 かすれた声で彼が男に告げる。

2020-01-12 18:21:26
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

それが体力の限界だったらしく、彼はそのままスイッチの切れるように寝息を立て始めた。 金色の滑らかな髪を撫でながら、男も久々の柔らかな睡魔の誘いに乗ることとした。

2020-01-12 18:42:24
賽骰だいす@甘味を要求する @Saikoroid

最後の意趣返しとして、機械ではない左の胸に特大のキスマークを残すつもりのキスをしながら。

2020-01-12 18:43:27