エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その3~

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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 22401 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その2~ いえーい。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ 7764 pv 5

以下本編

帽子男 @alkali_acid

天を摩(こす)るように高い岩の絶壁から、にょきにょきと巨木が生えた奇観。 その麓(ふもと)には人のかたちをした大樹がひしめいている。いずれも緑の葉の髪や、蔦(つた)の髭(ひげ)を生やし、ごつごつした樹皮におおわれた顔は恐ろしげに厳(いか)めしい。 木の牧者と呼ばれる存在だ。

2020-01-11 16:22:49
帽子男 @alkali_acid

太古の時代に、花と木の女神が培(つちか)った、森の番人。 林材や薪を取ろうと斧を振るうものに誰彼構わず襲い掛かり、容赦なく殺戮する。 主である女神が西の果てに退いてからは、永い眠りについていたが、最近になって妖精が大地の力を封じた魔法の宝石、碧玉を用い目覚めさせた。

2020-01-11 16:28:15
帽子男 @alkali_acid

枝と幹と根でできた畏(おそ)るべき軍勢。 それらを御する常盤(ときわ)の深い色をたたえた珠(たま)は今、ひとりの少女が首飾りとして下げていた。

2020-01-11 16:30:12
帽子男 @alkali_acid

尖った耳に赤みがかった肌。いったいどんな種族なのかすぐには解りかねる風体だが、どうやら切れ長の双眸や細い頤(おとがい)、すらりとした四肢からして、やはり妖精の血を濃く引いているようだ。 「僕はアルウェーヌ。金の木の森の主ガラデナの長女。だがこの名はめったにほかでは呼ぶな」

2020-01-11 16:32:20
帽子男 @alkali_acid

「がってんでさ。じゃあ、そんときゃなんてよべばいいんでさ?」 少女の名乗りに訊ね返したのは、これまた種族がはっきりしない童児。尖り耳は妖精や小鬼の血を思わせるが、暗い膚は東方の闇の地に住む蛮夷に似る。 「ミドリイシとでも呼ぶがいい」 「ミドリイシ。きれいなおなまえ」

2020-01-11 16:35:34
帽子男 @alkali_acid

二人は向かい合う格好であぐらを掻いて座っていた。 間には目にも綾な卓布が一枚広がり、上に玻璃や白銀、磁器の皿が並ぶ。 丁度、昼餐を終えたばかりだ。喫したのは炙った猪肉や、竈で焼き上げた織り込み生地に青葡萄と豆の奶油(クリーム)をつめた菓子など、森の中で出てくるとは思えない品々。

2020-01-11 16:41:29
帽子男 @alkali_acid

童児はおもむろに手を前に伸ばした。ちなみに指は六本あるが、不思議といびつな感じはしない。器用に銅の水差しを掴む。細かな彫刻を施して、真珠母や珊瑚を打ち込み、さらに金銀の鍍金で図柄を描いた、華やかな細工もの。 薔薇の香りの水が入っていて、口を漱ぐのに使う。

2020-01-11 16:45:20
帽子男 @alkali_acid

同じく檸檬(レモン)の匂いがほんのりとついたやわらかくしっとりとした手巾も数枚あり、指先や口元をぬぐうのに用いる。 ちびた子供が慣れたようすで品々を手にとると、少女の方もさして特に驚きもせずならう。 二人がどちらもさっぱりしたところで、童児は卓布にすべてをのせて囁きかける。

2020-01-11 16:48:25
帽子男 @alkali_acid

「きょうも、けっこうなごちそうでした」 皿も杯も瓶も手巾も水差しもすべてがきれいさっぱりなくなる。 「影の国の魔法か」 アルウェーヌが尋ねると、子供はうなずく。 「黒の料り手ダウバのたてた、こおにの餐庁(レストラン)がこしらえてくれるんでさ」

2020-01-11 16:50:56
帽子男 @alkali_acid

「皿や布はどこから来た」 「黒の鍛え手マーリのともだちの、こびとのしょくにんと、黒の繰り手キージャのなかまの、くものしたてやがつくったんでさ」 「それが物寄(ものよ)せの術ではるばるこの森まで運ばれてくるのか…影の国はつくづく恐ろしいな。ドレアムとやら」

2020-01-11 16:53:48
帽子男 @alkali_acid

ドレアムと呼ばれた男子(おのこ)はあぐらをかいたままみをのりだす。脚が短いので組んだかたちが解けてしまうが、また慌てて組みなおす。何やら座り方にこだわりがあるらしい。 「ごちそう攻めにして影の国に寝返らせようとしても無駄だぞ。僕は誇り高き妖精の修験(しゅげん)、森伏(もりぶせ)」

2020-01-11 16:55:56
帽子男 @alkali_acid

「もりぶせ」 「神々に闇との戦いを誓った身だ。お前のような暗き力を操るものには屈しない」 「てまえと、ミドリイシのあねさんは、てきどうし」 「そうだ」 「なら、もうひとしょうぶしやしょう!」 「む…ぐ…よ、よかろう」

2020-01-11 16:57:24
帽子男 @alkali_acid

ドレアムは将棋盤を持ち出す。アルウェーヌはいささか腰が引けている。 すでに何十局も打ってこてんぱんに負けているのだ。 いまいち乗り気でない少女を、童児はうかがい見て不安そうになり、やがてぱっと顔を明るくする。 「ごちそうはきにいりやしたかい?」 「闇の地のものにしては悪くない」

2020-01-11 16:59:33
帽子男 @alkali_acid

「なら、このごちそうのでるぬのをかけましょうや!」 「…何!?それは魔法の品。たいた宝ではないか」 「あねさんがかったら、さしあげまさあ!」 「闇の術でできたものなど受け取れぬ!賂(まいない)にたぶらかされる僕ではないぞ!」 「かったらでさ、しょうぶのぶんどりひんもだめなんで?」

2020-01-11 17:01:29
帽子男 @alkali_acid

「ぶんどり…戦利品か…うむ…戦利品なら…あの布は毎回同じ献立が出るのか?」 「ほしいものは、ごちそうといっしょにでてくる、ふでとかみにかいときゃ、つぎんときでてきまさ」 「ほう…うむ…ならば…いや待て。お前が勝ったら何を要求するつもりだ」

2020-01-11 17:03:11
帽子男 @alkali_acid

「んー…」 「この剣は西方の宝。決して渡さぬぞ」 「…んー」 「首飾りと宝玉は絶対にだめだ」 「んー…んー」 「僕はお前の手下にはならない!」 「んー…あねさんのおうちにいっぺんあそびにいきてえんでさ」

2020-01-11 17:05:53
帽子男 @alkali_acid

「うち!?金の木の森にか?お前…それが目的か…妖精郷への侵入…恐るべきやつ」 「ガラデナさんてのは将棋はつええんで?」 「将棋?かなり指すぞ。先生と五局指せば二は勝ちをとる」 「ようせいはみんな将棋がつええのかなあ…ガラデナさんとしょうぶしてみてえなあ」 「…おかしなやつ」

2020-01-11 17:09:11
帽子男 @alkali_acid

アルウェーヌは迷ってから溜息をついた。 「闇の軍勢を連れてくるなよ」 「つれてかねえんでさ」 「ならば…お前が勝ったら森に入るのは許そう。ミドリイシの名においてな。一度だけだ」 「ありがてえ!さ、しょうぶしょうぶ」

2020-01-11 17:10:41
帽子男 @alkali_acid

今度は少女が勝った。ぎりぎりのところで。すると童児はあっさりと卓布を譲り渡した。 「…本気か…?」 「しょうがねえんで…でもまだまだでさ。つぎはこの、ころもをかけまさあ」 合切袋から一着の裳裾(ドレス)を引っ張り出す。深緑の妖精風のしたてで、葉模様の布地のあいだに銀の糸が煌めく。

2020-01-11 17:13:18
帽子男 @alkali_acid

「なぜそんなものを持っている」 「てまえのおきがえでさ」 「女物ではないか」 「?」 「…影の国はおかしいな…僕には寸法が合わない」 「こいつは、てまえのおやじさんの、黒の繰り手キージャがしたてたんでさ。きたものにあわせておおきさがかわりまさ」 「そんな長い裾では戦えない」

2020-01-11 17:14:52
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