エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その11~
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以下本編
◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 略して #えるどれ 。 このハッシュタグで元ネタになった各種ファンタジー雑談や、皆さんの描いて下さったイラストが見られますよ! 過去のまとめはこちらから読めます! togetter.com/t/%E3%81%88%E3…
2020-02-05 21:17:59さてさて、魑魅魍魎の巣食う影の国では、エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の七代目が斃れ、すったもんだのすえ奴隷は闇の女王として蘇りました。 一方で八代目ドレアムはどうしているかというと、おっぱいを吸っていたんですね。ラッコの。雄の。
2020-02-05 21:20:00ラッコは昆布につかまって寝るし、お腹の上で貝を石で割るし、ふしぎな生きものですけど、でもやっぱり哺乳類なんです。つまりお乳で子供を育てる。 だから吸われると、ね。 「出ねえから!?いでででで!いっで!!おい!何笑ってんだ?おかしいから!微笑ましい光景とかな?違うから?」
2020-02-05 21:21:42猛抗議をしているのは赤毛の雄ラッコ。仲間からはナガレルヒと呼ばれ、昆布の森を守る男衆のまとめ役、極夜の戦士という責任ある身分についている。 「それで、出たのか?」 横からアザラシが問う。アザラシもね。いる。雄ですよこっちも。ちなみにラッコの巣にいるぐらいだから変わりもの。
2020-02-05 21:24:30趣味一筋でほかには構わぬ性格で、故にこそ他者に興味を示すのは珍しい。 「いっ…ぁっ…んっ…いや出ねえから?何が出たのかだ?お前はよお?まじ人をいらつかせる天才だなこのアザラ野ろ…んっ…」
2020-02-05 21:26:25悶える雄ラッコはやがてどこか艶めいた声を上げ始める。 「ちょっ…誰か…止めれ?いつまでも見てねえで…はぅっ」 ほかのラッコとアザラシはじっと見守っている。無言。
2020-02-05 21:27:45ナガレルヒはじたばたともがき、最後の力を振り絞って毛皮の襞のあいだに隠し持っていた石を掴むと、勢いよくドレアムの額に打ち付ける。 カッ カッカッ カッ カッ
2020-02-05 21:28:43「ふわあ…おやじさん…」 ようやくと影の国の世継ぎ、黒の賭け手、六本指の博徒は目を覚ました。 「夢ん中で吸ったおやじさんのおっぱい…ちょいと味が変わってやした」 「出てねえから!?何も出てねえからな?」
2020-02-05 21:29:48暗い膚に尖り耳の若者は四方を見渡し、頭を掻く。 「こいつぁどうも。お恥ずかしいところをお見せして」 「いったい何があった」 アザラシが静かに尋ねる。またしてもアザラシらしくもない関心の示し方だ。
2020-02-05 21:31:21「へえ…それがどうも…国元で何かよくねえことが起きたんじゃねえかと」 「影の国でか。ならば帰るのか」 「そうさせてもらいまさ」 「引き止めはしないぞ。貴様はかのラヴェインの子孫だ。白銀后の眠る海域にふさわしい男ではない」 「そいつぁどうも」 「だが…白銀后親衛隊の隊員でもある」
2020-02-05 21:33:19アザラシはすいーっと貝殻の浮桟橋を離れると、さっと鰭を高く掲げた。 たちまちラッコの雄と雌が周囲に集まってくる。 「せめてもの餞別に、この白銀后親衛隊昆布の森支部の、最新の芸を披露しよう!!」 「そいつぁすげえ!」
2020-02-05 21:34:38「っておいいい!!」 腫れあがった乳首を抑えていた赤毛のラッコ、外敵から森を守る戦士の長がきれちらかす。 「おま…あ?何いつの間に邪教のよ?え?改宗者をそんなに作ってんだこらあ!!」
2020-02-05 21:35:42だがナガレルヒの怒りを無視して、アザラシとラッコは昆布が揺らぎ舞い、雪の華の乱れ踊る壮大な芸を披露し始める。 「白銀后!」 「「「白銀后!!!!!」」」 「よーっ!!はっ!!!」 「「「はっ!!!!」」」
2020-02-05 21:37:20アザラシは錐揉み回転しながらまき散らす雫を細かな宝玉の如き結晶に変える。まさしく金剛石塵(ダイアモンドダスト)。先だって、世界を眠りに就かせんとする常冬の使者、海魔との対決で苦戦した敵の術を模倣し、取りこみ、芸を新たな高みへ引き上げたのだ。
2020-02-05 21:39:22ラッコ達は一斉に腹の上で貝を石で打ち、乱調子の響きが威勢よく森に谺する。 「白銀后!御身の眠れる海に萌ゆる昆布の森に、今捧ぐ!!魔法芸!!」
2020-02-05 21:40:44ドレアムはうるうると目を潤ませながら拳を固めて正座し、すべてを見守っていた。 傍らではナガレルヒがげっそりしながら同胞の変わりようを眺めやっていた。 「なんでよ?こういうことになっかな?おかしくね?おかしいよなあ?」
2020-02-05 21:43:03芸が終わると、近づいてきたアザラシにドレアムはすっと手を差し出す。 向こうも厳かに鰭(ひれ)を差し出す。 将棋の駒や賽子を握るのに慣れた六本指が、海を掻くのに慣れた五本指を握る。
2020-02-05 21:45:07「いやな?よそでな!?やってくんねえかなあ?邪教の儀式っつうか心の通じ合いみてえのはよお!?」 赤毛の雄ラッコが怒りを込めて石で貝を叩く。するとそばに金毛の雌ラッコがひょこりと頭を出して呟いた。 「でもさ。何だか楽しそうでない?あたしも入ろうかなあ」 「それだけはだめだかんな?」
2020-02-05 21:47:37感動の別れを済ませたドレアムは、蒼黒い毛並みの海馬にまたがり、褪せた青衣をまとった鼠ほどの大きさの翁二人を両肩に載せて、昆布の森を辞した。 見送りには雲突く丈の漁りの巨人が風車の如く手を振る。 「拙者の娘、火の巨人に嫁したデギによろしく。国元は考古の研究の進捗を心待ちにしておる」
2020-02-05 21:51:35「承知でさ!」 ドレアムがそう告げて合図をすると、海馬は駆ける。どんな船よりも速く。魚よりも、水鳥よりも速く。 “約束を忘れるな。天馬と勝負して勝てるのはお前のみ。黒の賭け手よ” 「もちろんでさ。でもまずは里帰り」
2020-02-05 21:53:12