エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その25~

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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 22401 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その24~ ハッシュタグは「#えるどれ」 ナシールはろくでなし。 3428 pv 1

以下本編

帽子男 @alkali_acid

この物語はエルフの女奴隷に逃げられた主人のヤサグレムカムカファンタジー。 略して #えるどれ ↑こちらのハッシュタグで元ネタになった各種ファンタジー雑談や、皆さんの描いて下さったイラストが見られますよ! ↓過去のまとめはこちらをどうぞ! togetter.com/t/%E3%81%88%E3…

2020-03-08 14:25:34
帽子男 @alkali_acid

奴隷に逃げられた主人から神々への八つ当たりに始まった精霊諸王八番勝負。 第六番までは東は影の国の勝ち。 第七番はいよいよ西は至福の地で最も麗しき女神、精霊の女王ギルネヴィが登場。 勝負の内容は美の競い合い。

2020-03-08 14:29:22
帽子男 @alkali_acid

女神は名前の通り星を帯びている。額には十字に輝く星。くるぶしまで届くまっすぐな髪には、天の川のように綺羅がまとわりついている。 胸元にも、腰の周りにも、手の甲にも足の甲にもそれぞれ瞬く光を点し、ゆるやかな衣は星座を散らしている。

2020-03-08 14:32:50
帽子男 @alkali_acid

「我が美しさをもって挑む」 ギルネヴィの言葉には、うぬぼれや強がりといったものは微塵も感じられなかった。 まるで剣豪が幾度も決闘を共にしてきた刃を抜き放ち、強敵に対するかのように、優れた容姿の持つ力を十全に把握したうえで、純粋に武器として揮おうとする態度だった。

2020-03-08 14:36:23
帽子男 @alkali_acid

「楽しみじゃ!」 黒の繰り手キージャもまた気後れせず答える。我が子である六本指の博徒ドレアムの、男の体をまとい、洒落者とも言い難いいでたちだが、自信をみなぎらせている。

2020-03-08 14:37:52
帽子男 @alkali_acid

星の女神はしなやかな腕を、夜天に掲げた。すると無数の煌めきがが動いて降りてくる。 大空を巡るきらびやかな光のいくつかは、かつてギルネヴィが小さきものを守り導くために打ち上げたのだ。今も高みから民を見守り、時に助けを与えるために働いている。

2020-03-08 14:41:08
帽子男 @alkali_acid

星々は、ちらちらと無数の耀いを縫い付けた透き通った合羽(ケープ)となって女神のむき出しの肩をおおい、翼のごとくふわりと翻る。 髪は連星がいくつもの数珠を作って房にまとめ、左右のこめかみのあたりに木星の輪に似た飾りが傾いて浮かぶ。

2020-03-08 14:44:12
帽子男 @alkali_acid

女神が浮かび上がると、裳裾はどこまでも長く長く伸び、まるで幻燈芝居の銀幕のように、虚無の暗黒の彼方の景色を浮かび上がらせる。新星が燃えた後にあらわれる緑色をした宙(そら)の灯台、漆黒の瓦斯を内側に抱えながら、赤紫に燃えるもうひとつの銀河。

2020-03-08 14:47:36
帽子男 @alkali_acid

大輪の花のように揺らめく右の袖には勢い止まぬ流星雨が映り、左の袖には箒星の弧を描く尾がくっきりと焼きつく。 水平に伸びた両の付け根、つつましやかな胸のあたりにもう一輪の花が開き、奥から溢れたのは、神々さえ目にしたことはないという大爆炸(はじまりのはぜり)を思わす放射状の閃光。

2020-03-08 14:51:40
帽子男 @alkali_acid

今や女神の全身に、天空の奥の闇と光があった。 肌と衣に帯びた星々は、声音ではなく明滅をもって歌っていた。 はるかな昔に創世の地を求め、世界と世界の壁を突き破り、虚無の暗黒を横切った、唯一にして大いなるものの長く孤独な旅を、寿ぎ讃える高らかな凱歌を。

2020-03-08 14:54:57
帽子男 @alkali_acid

ギルネヴィが両腕を引き寄せ、胸の前で組むと衣は黒と銀から白一色に変わる。 世界の眠りの雪の色。しかし精霊の女王の肌はなおいっそう皓(しろ)い。吐息は夜気に煌めき、唇の赤さのみが情熱のありかを示す。

2020-03-08 14:57:50
帽子男 @alkali_acid

二つの灯が点る。 女神の左右に半ば影となった高い塔をなして。 薄緑の仄明りとともに命が目覚める。柔らかに広がった裳裾に、たっぷりとした袖に。妖精族を思わせる色鮮やかな影絵が天の女王の見守る下で野と森に飛び跳ね、歌い奏でるさまがあらわれる。

2020-03-08 15:00:35
帽子男 @alkali_acid

ギルネヴィの胴の優美な曲線を這うように二本の木が生える。 今や衣装を飾るのは星ばかりではない。花と木の女神ケメンティーアとも相似た花と葉と枝が細やかな金と銀の糸となって薄く柔らかな布地を覆っている。

2020-03-08 15:02:34
帽子男 @alkali_acid

精霊の女王の首の周りに三つの星が浮かぶ。 大宝玉。妖精の鍛えた傑作。 星の女神の完璧な容貌と、完璧な肢体を、今や七つの明りが照らしている。 二つの灯 二つの木 三つの大宝玉 いずれも星々が作り上げ模した輝きだが、しかし装身具として意匠が加わり、互いに調和しながら主の美を際立たせる。

2020-03-08 15:06:24
帽子男 @alkali_acid

光の軍勢は跪き、馬さえ足を曲げて、星のうち最も眩きものを仰ぎ見た。 闇の軍勢のうち悪鬼や亡者、魔狼や蝙蝠は算などを乱して逃げ去り、巨人や竜さえも瞼を閉ざさずにはいられなかった。

2020-03-08 15:08:58
帽子男 @alkali_acid

星の女神は、倒れ伏す伴侶、風の男神と敵との間をふさぐよう、虚空に浮かびながら、威(たけ)くも厳しい眼差しをもってあたりを薙ぎ払った。 「見事じゃ!!」 黒の繰り手は感に堪えぬように讃える。

2020-03-08 15:12:02
帽子男 @alkali_acid

「では次はこなたの番」 キージャは言うや、着ていたものをすべて脱ぎ捨て、一糸まとわぬ裸身をさらすと、胸を張って海の女神が残した泉に近づき、足を踏み入れる。 怒号にも似た轟きとともに奔流が噴き上がり、暗い膚に尖り耳の肢体を推し包む。 「わぷっ」

2020-03-08 15:14:31
帽子男 @alkali_acid

びしょ濡れになった黒の繰り手は、どうにか外へ歩み出ると、全身を震わせて水を飛ばした。 「我が同胞(はらから)よ!来れ!糸仕事の始りじゃ!」 呼びかけに応じてどこからともなく銀の小蜘蛛が集まってくる。 宙にただよう万物の審判者は一回転したが特に警告は発さない。

2020-03-08 15:16:24
帽子男 @alkali_acid

「金の針ヒルディカ!注文注文!黒の繰り手キージャからの注文じゃ!黒の賭け手ドレの身にとびきりの一着を仕立てるぞ!」 手招きに応じて、恍惚の軋みをさせて、妖精の木でできた織機にして紡機、縫機でもあるからくりがあらわれる。

2020-03-08 15:18:45
帽子男 @alkali_acid

「よーしよし!次は泥竜(ナイロン)じゃ!!泥竜の股引(パンスト)がなくては始まらぬの!」 キージャが口笛を鳴らすと、泉から透明な鰭を持つ長虫あるいは水母のような、奇妙な生きものともつかぬ蛇身が躍り上がる。 「うむ。黒小人の真銀の針に鎚!縫匠サンドーラより授かりし裁ち鋏よ!」

2020-03-08 15:23:31
帽子男 @alkali_acid

精緻極まるドワーフの道具類と、何の変哲もない、しかし手入れの行き届いた鋼の裁ち鋏がそばに並ぶ。 「さあ!!まずは糸から」

2020-03-08 15:25:00
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