メイはどうしてサツキに叱られても走り回るのか――『となりのトトロ』試論

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その昔、宮崎駿氏が「小さい子はすぐ走り出す。おとなが『走っちゃダメ』といくらいっても走り出す。しかし子どもにすれば走っていない。『急いでいる』にすぎない」と喝破したといいます。 ちょっとこのテーマで語ってみます。

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２）日本人が「走る」に目覚めたのは幕末。長距離走が西洋から入ってきたのです。 陸上競技とはすなわち「走る」「泳ぐ」「飛ぶ」「跳ねる」など、人体のある動作を取り出して競わせることです。

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３）私たちは小学校のかけっこや体育やうんどうかいで、そういう抽象概念を体で学ばされる。 しかしそういう規定化を経る以前の人間、すなわち幼児は「走る」なんて高度な概念はわからない。「急ぐ」はわかる。そして「急ぐ」のなかにおとながいう「走る」がパーツのひとつとして回っている。

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４）たとえばこの女の子は走っていない。「追っかけている」のです。 pic.twitter.com/zbXzTYdsgL

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５）この場合は「後を追っている」。男の子が先を走っていますね。これは案内しているのですよ。大急ぎで電話をかけたいと右の女の子がいうので、電話機のある家まで連れて行ってあげている。大急ぎだから彼は駆けている。そして女の子はその後を追っている。 pic.twitter.com/UaWDpbVoAa

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６）これは「大急ぎで戻っている」。４歳の妹・メイが行方不明になって村人総出で捜索していて、池に幼児のサンダルが浮かんでいると聞き知って、この子は必死に池まで急いでる。 pic.twitter.com/Tbwjjg5cM5

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７）これは「雨粒から逃げ回りながら雨宿りの場所を探している」 pic.twitter.com/CdNjw01l4A

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８）これは「よくわかんないけど何か大変なことが起きているらしいのでお姉ちゃんの後を追っている」 pic.twitter.com/oa4TZZ3ZUC

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９）いかがでしょう皆さん。「走っている」は１カットもないのですよこのアニメ。 pic.twitter.com/YQ4bltZ1lP

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１０）『トトロ』の裏テーマとして「学校の体育をとおして方眼紙のうえで記号化されてしまった私たちの身体を取り戻す」があるんではないかなーと愚考するのであります。