地の文に求められているのは技巧の凝らされた文學的価値のあるものではなくて、『共通で知っているようなもの(風景や状況)』を表すもので、それから仮にみんな持ってる状態なら地の文なしでも物語は作れるという実験小説なのです twitter.com/tokurontinus/s…
2020-01-22 21:15:20ところで、前作ドラえもんssでは地の文入れてるんですけど、今回、一切入れてないのにセリフだけでみんな読んでるの凄くないですか? 皆さんの脳内にある『ドラえもんの記憶』を引き出して補完される物語なんですよね、これ
2020-01-22 21:04:01「僕たちが今いる『世界』は、ヒミツ道具の多くが開発されない……?」 「そう。僕たちは、野比君やドラえもんを介して、ヒミツ道具にあふれた『未来』を何度も見てきたはずだよね……でも、今、僕たちがいるこの『世界』の『未来』は、そうはなっていない……」
2020-01-23 10:04:09「それが、単にヒミツ道具が必要のないような『未来』に繋がったというだけならいいけど……この『世界』がヒミツ道具を開発出来ないような状況……例えば、大規模な戦争だったり、飢饉や自然災害による人口の減少だったり、そういう"ヒミツ道具を開発する余裕のない"状況になっているのだとしたら」
2020-01-23 10:07:39「出木杉さん、私怖い……」 「大丈夫、静香君。まだそうと決まったわけではないから」 「……あ!僕ちゃん、そろそろ塾の時間だから」 「お、そういえば俺も母ちゃんに店番頼まれてるんだった!」 「私もピアノのお稽古だわ」 「ちょ、ちょっと待ってよみんな!ドラえもんはどうするのさ!?」
2020-01-23 10:12:11「のび太、出木杉も『まだわからない』って言ってるだろ!今日はここまでなんだよ!」 「じゃー僕ちゃんは帰るねー」 「のび太さん、ごめんなさい」 「……野比君。辛いかも知れないけど、みんなの言う通り、今日はここまでにしておこう。今すぐ解決出来るようなことじゃない……そんな気がする」
2020-01-23 10:15:48「……ちぇっ!何だよ、みんなして。ドラえもんが心配じゃないのか!まったく………わっ!!」 「おっと!?君、大丈夫かい?」 「いえ、僕がぼーっとしてたので……あ……眼鏡が……」 「見せてごらん……ふむ、ネジが外れてしまったようだね。幸い簡単な工具を持っているから、僕が直してあげよう」
2020-01-23 10:20:57「おじさんが?」 「おじ……まぁそうかな。そこの空き地に行こうか。なに、この程度ならすぐ直るさ」 「……君はこのあたりの小学生なのかい?」 「うん。○✕小学校の5年生だよ」 「○✕小学校!……懐かしいなぁ、おじさんもその学校出身でね」 「へー!ということは、月見台に住んでたの?」
2020-01-23 10:27:20「ああ。すすきヶ原に」 「えっ!?近所だ!……でも、眼鏡がないからよく見えないけど、おじさんは見たことないような……」 「もう30年近く前の話だからね。でも、この辺りは……この空き地も、何も変わってなくて……少し安心したよ」 「ふーん」 「……学校は楽しいかい?」
2020-01-23 10:31:05「うん!時々嫌なこともあるけど、友達もいるし楽しいよ」 「そうか、それは良いね……でも、何か困っているのかな?」 「!?何で?」 「そういう顔をしてる」 「……ちょっと"大事な友達"に大変なことがあって……その友達は今喋れなくて」 「それは辛いね……その友達のことは本当に大切かい?」
2020-01-23 10:38:55「もちろんだよ!一緒にいっぱい遊んで、冒険もして、ママに叱られるときも一緒で、喧嘩もいっぱいしたけど……大切な、大切な友達なんだ……」 「そうか……ほら、眼鏡直ったよ。ネジが見つからなかったから、おじさんの持っていたものを使ったけど、かけて見てごらん?」 「ありがとう、おじさん!」
2020-01-23 10:42:27「……うん、大丈夫!」 「これはおじさんの独り言なんだけど……おじさんにも、君のようにとても大事な友達が居てね。でも、おじさんはその友達が大変なときに、自分が『良い子』でいるためにその子を助けてあげることが……手を伸ばしてあげることが出来なかったんだ。それでーー」
2020-01-23 10:45:22「それで?」 「その友達とはそれっきり。30年経った今でも会うことが出来ていない。だからね、もし君がその"大事な友達"のことで、何か大きな決断をしなくてはいけないときには、周りの言葉に惑わされず、自分の心にしたがって決断してほしい……そんな風に、おじさんは思うんだよ」
2020-01-23 10:48:37「何だかよくわからないや」 「ははは、おじさんの独り言だからね。さっ、僕はそろそろ行くとするよ」 「ありがとう、おじさん。また会える?」 「いや、またしばらく遠くに行くからね。たぶん会えないんじゃないかな」 「そうなんだ……あれ?やっぱり、おじさんの顔どっかで……あ、行っちゃった」
2020-01-23 10:52:26翌日
「やぁ、静香君。これで全員そろったね。それじゃ昨日の続きだけど……野比君、ここ最近ドラえもんの様子がおかしかったことはないのかい?」 「ドラえもんの様子?……いや、特に変わったところは……一昨日だって商店街でアンケートに答えたらもらったとかで、どら焼きを一人で食べてたけど」
2020-01-23 11:57:21「商店街でアンケート?どら焼き? のび太、その日も俺は店番をやってたけど、そんなの知らねーぞ」 「ジャイアンが知ってたら、真っ先に行ってそうだもんね」 「なんだと、スネ夫!!」 「……ところで、野比君。タイムマシン以外の"まだ使える"ヒミツ道具には変わったことはないかい?」
2020-01-23 12:00:51「そう、それなんだよ出木杉!あの後、気になって調べて見たんだけど、どの道具も残りのエネルギーがほとんどないんだ!残りの使用回数に差はあるけど……使えて数回、石ころぼうしや透明マントはたぶん5分くらいしか残ってないんだよ」 「……どうしたの、出木杉さん。怖い顔して……」
2020-01-23 12:04:56「昨日ずっと気になっていたんだ。仮にこの世界がヒミツ道具を生み出せないような『未来』に繋がっていたとしても、開発はされているタイムマシンのエネルギー残量が、野比君の言うように、"突然減った"のは何故だろうってね」 「……どういうこと?」
2020-01-23 12:11:47「推測でしかないけど、やはり『この世界』には何か深刻な問題があって、ヒミツ道具のエネルギーを確保できない……と考えるべきじゃないかな」 「そんな……」 「で、でもよ、出木杉。それもドラえもんが元に戻れば解決するんだろ?とりあえず、そのどら焼きのことを調べようぜ!」
2020-01-23 12:16:53「そうだね、剛田君の言う通りだ。野比君、タイムテレビを出してくれるかな?」 「ああ、わかった!」 「使える回数は何回残っているかな?」 「たぶん……あと二回だよ、出木杉」 「二回……か」 「ねぇ、出木杉さん。やっぱり『未来』の様子を見ておくべきじゃないかしら?……とても怖いけど……」
2020-01-23 12:20:13「わかった、そうしよう。それじゃぁ野比君」 「えっと場所は商店街で……時間は一昨日の……」 「あ、これ!ドラえもんだ!」 「本当に知らない男と話してるな……少なくとも俺は商店街ではこんなヤツ見たことないぞ」 「40歳くらいかな?…あ、どら焼き渡した!」 「ちょ、ちょっと僕にも見せてよ」
2020-01-23 12:26:27「……え?おじさん?」 「野比君?」 「間違いない、昨日僕がみんなと別れた後に会ったおじさんだよ!眼鏡を直してくれたんだ!」
2020-01-23 12:28:20ここでCMです