「……わかってもらえて助かるよ。俺だって手荒なことはなるべくしたくないんでね」 「のび太!お前はそれでいいのかよ!」 「ジャイアン……」 「俺は知ってるぞ!ドラえもんは……例え、機械だって、涙を流して、震えながら、勇気を叫んで一緒に冒険してきたのを!お前はそれを見捨てるのかよ!」
2020-01-26 12:12:53「!?何を!!やめろ!」 「行けよ、のび太!!」 「ジャイアン!」 「剛田君!!」 「チッ!クソッ!!仕方ない!」 「『ひらりマント』!」 「!!?」 「……ありがとう、ジャイアン!僕、行くよ!『タケコプター』!」 「ああ、行ってこい!心の友よ!!」
2020-01-26 12:17:42「ドラえもん……もうほとんど形がなくなって……でも待ってて!今、助けてあげるからね!」 「のび太さん!!」 「しずかちゃん!?どうして、ここに?」 「話は後で。私も連れて行って!」 「危険かもしれない」 「わかってる」 「戻ってこれないかも」 「ええ……でも、のび太さんがいるわ」
2020-01-26 12:22:23「しずかちゃん……」 「行きましょう!のび太さん!」 「うん!行こう、一昨日の商店街へ! 僕たちの『最後の時間旅行』へ!!」
2020-01-26 12:35:31「……いた!商店街の出口に、ドラえもんだ!」 「ドラえもん!……? まさか……もう動かない……間に合わなかったんじゃ……」 「のび太さん!まだどら焼き食べたばかりなら口の中に残ってるんじゃないかしら」 「あ、ああ!ごめんよ、ドラえもん…………あった!これでーー」
2020-01-26 12:41:16『ネコ型子守ロボット型番R-01 FR001-MKIIは、機能維持に重篤なエラーが生じました。セーフモードに行こうします。下記の問題について、トラブルシューティングをーー』 「な、なんだ!?これ!」 「ねぇ、見て、ドラちゃんの目に何か映ってる……この部品を取り替えろってことかしら?」
2020-01-26 12:48:27「そっかじゃあ"これ"を取り替えればいいんだね、早速ーー」 「でも、のび太さん。私たち未来で作られたネジなんて持ってないわ……」 「じゃ、じゃぁタイムマシンで」 「タイムマシンはもう……」 「あ………そんな……ここまで来て、間に合わなかった?僕はまた……間違っちゃったのか……そんな…」
2020-01-26 12:53:07「僕は君を救えなかったのか……ドラえもん……それとも、スネ夫や出木杉の言う通り、これが『世界』にとっていいことなのか?……ねぇ、答えてよ……ドラえもん……」 「のび太さん……」 「しずかちゃん!?」 「このまま……このままでいいから聞いて。私ね、あの別れ道の先でーー」
2020-01-26 12:56:32「僕に…?もしかして、僕が会ったおじさんって…」 「40歳のあなたは私を見て驚いていて、ちょっとだけ泣いた後でこう言ったの。『彼はー5年生の僕はぐうたらで泣き虫で…でも本当はちゃんと出来る力は"持っていて"、ただ自信がなかっただけなんだ。だから、もし彼に会ったら言ってあげて欲しい』」
2020-01-26 13:07:04「『……例え、君が何者でなかったとしても、ちゃんと世界は救えるよ。そのためのものは、もう全部君は持っているから』って」
2020-01-26 13:09:41「もう全部………そうか!」 「のび太さん!?何で眼鏡を?」 「これはあのおじさんがーー未来の僕が直してくれたんだ、だから」 「!!ドラちゃんの目に映ってるものと、同じ形だわ!……でも、サイズが……」 「ううん、しずかちゃん。僕は"大切な親友"を救うための道具は、もう持っているんだよ」
2020-01-26 13:13:46「見て、出木杉!セワシの身体が!」 「透けていく!?……そうか、野比君が!」 「クソッ!自分たちが何をしたのかわかってるのか!これで……これで地球は破滅の道を辿ることになるんだぞ!」 「知るかよ、そんなこと!もしそうだとしても、この俺様とその仲間たちが何度だって救ってやる!」
2020-01-26 13:19:33「……ああ、身体が消えていく。そうか、今度は5年生の『僕』が、ちゃんと君を救えたんだね……ドラえもん。しずかちゃんがきっと『僕』を支えてくれたんだろう……ありがとう」
2020-01-26 13:22:45「まさか会えると思っていなかったから、ちょっとびっくりしてしまって……泣いたのは流石にみっともなかったかな?君が10年前にノビスケを残して逝ってしまってから、僕はずっと考えてたんだ……本当に『あの時』ドラえもんを見捨てたのは正しかったのかってね」
2020-01-26 13:25:21「君との生活はとても穏やかで楽しかったけれど、いつもどこかで僕は悔やんでいたのかもしれない。それで、君のところに逝くつもりで、残っていたタイムマシンでこの時代にやってきたんだ……そして、ちゃんと僕は『僕』の勇気を見ることができたよ。ありがとう、静香」
2020-01-26 13:28:16「最後に君にーー大切な親友の君に会いたかったけれど、でも会ってしまったら、きっと未練が残るだろうからね。このまま逝くとするよ。 ……ああ、とっても大好きだよ、ドラえもん」
2020-01-26 13:30:25「ふがっ!?……あれ?のび太君!?どうしてここに?学校はどうしたんだい?」 「うあああ、ドラえもん!!!」 「な、なんだ!?」 「ドラちゃん!!」 「えっ!?しずかちゃんまで!?」 「な、何だかよくわからないけど……まったくしょうがないなぁ、君たちは」
2020-01-26 13:32:57「いっぱい……いっぱい心配したんだぞ!」 「ああ、よくわからないけど……ごめんよ、のび太君」 「……とても悲しい人も見たわ」 「それは辛かったね、しずかちゃん……とりあえず二人とも、うちに帰っておやつにしよう。そこでゆっくり聞くことにするよ」
2020-01-26 13:36:07「元はというとドラえもんの食い意地が悪いのがいけないんだからな!」 「な、なんだと!」 「知らない人に貰ったもの食べるのはちょっと……」 「しずかちゃんまで!」 「罰として……ずっとそばに居てよね、ドラえもん」 おわり
2020-01-26 13:40:30後書き
……というわけで、長々と続けましたが、星野源( @gen_senden )さんの『ドラえもん』を聞いて、何か映画に出来そうと思って書いたストーリーでした
2020-01-26 13:43:43お気づきの通り、このSSでは地の文(会話以外の文)を一切使用していません。それでも物語が成り立つのは、皆さんの中の『ドラえもん』の共通の記憶をお借りして、皆さんの脳のなかで補完されていく物語にしようという実験小説でした
2020-01-26 13:47:13