空想の街 とある冬の一日・2日目

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

小雨は、あの日を思い出すから。 #空想の街 #アティア 傘を差したり鞄で頭をかばったり。港を出て街に向かう人々の疎らな影の中を、傘を差さず、長旅で草臥れた様子もなく、軽い足取りで進む者がいた。『師匠』と呼ばれる、地図屋の店主だ。

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

あの日、あの夜はどうしようもなくどうしたら良いか分からなくて。最初から分かっていたのに堂々巡りで。だからこそ、今、この雨が楽しい。#空想の街 #アティア 『楽しい』なんておかしな表現だ。師匠はふふっと笑い、「～♪」鼻歌を歌う。

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

本当は土砂降りの雨の曲らしい。歌詞は知らないが、陽気なメロディが好きだった。「～♪」外れた音は雨が拾ってくれる。音痴であることは恥じてはいないが、雨に唄えば分からない。 #空想の街 #アティア 足が、街の北区にかかる橋に差し掛かる。

ルイス・ビスケット記者 @hutahiron

#空想の街　#ナントナクオリティ 【ただ今の編集部(退社済み)】 #原料屋 からもらった定規が編集長の机から飛び上がり落下。床から5ミリほど浮いた状態で滑るようにしてお散歩を開始

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「おー速っ！そんな急がなくてもいいのにーけどめっちゃ助かりますありがとうございます」よっ、とトランクからおりて頭とケープと帽子とを拭います。ついでにボロボロの羽やセーターもどうにかなさいませ。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「濡れてないだけでもあったかいわー.......」

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ しみじみとした声を漏らす彼女に、安心する。「ほんと、濡れて冷えるとどんどん嫌な気持ちになっちまうからさ」と、その胸元に、ひどく見慣れた何かを見つけた。#空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「あれ……その、首飾り」はた、と見返す彼女に。「それ、売ったのおれだわ」

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「えっどれ、これ？」そこらを見渡して最後に気がつく茶色い羽の入った鳥籠ネックレス。そういや貰い物でした。買った物と思っていたがいやはや #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「...あー...なるほどぉ？いい品ですからねぇ...？」しげしげと籠屋さんを見て、納得して、心底微妙な顔のひばりさん。

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ 「えっ何。えっ…？」何やら名状しがたい空気を醸し出しはじめた彼女にどぎまぎする。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 中にはどこかで見知ったような茶色の羽が見える。売った時は空だったはずだ。鳥籠が中身を得て、それが誰かの胸にあるならば、それでもう幸せだろう。

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「いやええんやで...気にせんよ...」すきっ歯になってしまった羽を最後に叩いて粉を落とし、丁寧に畳んで手拭いをお返しします。どちらかと言うとこれは哀れみでしょうか。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 中の羽が寒くないかとセーター内に落とそうとして、これから会う人を思うとそのまま外に。

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ 夜目に鮮やかな青い羽根。手ぬぐいを仕舞いながら、「おねえさんみたいな羽根持ちが震えてっとさ、おれ悲しくなっちまうから。傘貸せて良かったよ」そう笑う #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「で、どうだい、あの兄いだろ。何か花でも持ってくかい？」

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

港からやってきた人影が街に吸い込まれた後、残った影は師匠一人だけになったろうか。 #空想の街 #アティア 三年、否四年。街の祭事や有事を蹴った旅は、今回が初めてかもしれない。それも、おそらく、しばらくなくなるのだから、良い思い出作りにはなったかもしれない。

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

長らく店番をお願いた『助手』くんにお土産も買ったし、同業者に預けていた私物はほとんど回収したし、あとは……。 #空想の街 #アティア はたと気付いて、足取りが止まる。あとは、そうだった。忘れていた。いやでも別に街で買えばいいか。助手くんに見繕ってもらえば、

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

「うーん」小雨を浴びながら、濡れた額に手を当てたり唸ったりを一通りして出た予想は。『師匠はこれからこの街で暮らすんですから、ご自分のものはご自分で用意してください。だいたい師匠は私があれこれ用意しなかったら今頃――』 #空想の街 #アティア 真面目なあの子からのお説教だった。

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「あっくそバレてないと思ったのに！」ケープを肩にかけた所で、兄いの言葉に歯をむき出しで嫌そうな顔になりました。「棒手振りなのによく覚えてらっしゃいますことでぇ！」#空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「あーもーこーなったらヤケよ。荷物の中で一番高いの頂戴」取り出してますのは、人の財布。

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ 「いやね、あの兄い忘れられるわけないでしょーっていや深い意味はねえけど」さながら威嚇の表情だ。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 苦笑をふと悪戯っぽい笑みにかえる。「高いっつたらやっぱでっかい鳥籠だよなーんでもってこれにこれをこうしてでっかいブーケなんかつけちゃったりして」

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「忘れられんなら忘れといた方が幸せになれるわよ...」籠屋さん器用ですねぇ、あっという間に山盛りのブーケが出来上がり。「もしかして実はすごいお花屋さんだったりした？やばいひばりさんびっくり」。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「ね、ちょっと注文なんだけど今の時期実のなる奴ってある？」

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ 「いやすごくはないけどさ、まあ腐っても花屋ってことで」小脇に抱えるくらいの大きさにはなってしまった。例の薔薇も何本か混ぜてある。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「実？食えるか微妙なのでよけりゃあ骨実薔薇があるが」真っ白い茎に、少し紅色のさした実が鮮やかな植物を示してみせる。

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「職人みんなそういうー凄いんだから胸張って生きなさいよーこのこの」このコロコロしたの可愛いですね？「そう！花が嫌いな訳じゃないけど実がつくから花だし。花だけ摘まれるのもさ、あんまりじゃん」 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「ありがとー！！とりあえずお代とチップとチップとお賽銭｣

こみや@空想の街 @Ne2_co

@gp_c_ 「ちょちょちょい待ておひねりみたいに挟むのやめなさい！はいまいどあり！」ねじこまれながら、トランクに品物を結わえておいてやる。 #空想の街 #巣烏記 #籠ノハナ屋 「傘、ゆっくりで構わないからさ。#籠ノハナ屋 まで持ってきてくれたらいい。そんじゃ。いい夜になるといいな」

はなまめ @gp_c_

@Ne2_co 「.......ほんとにね。いい夜よ、今夜は」神妙な顔でお札を袖や襟やにズンドコ突っ込み、籠屋さんを困らせます。 #空想の街 #巣烏記 「#籠ノハナ屋 ね！」最後にダメ押しみたいに捻ったお札を耳の穴に突っ込むと「あんたの羽持ちも凍えてないといいわね」傘を大振りで開いて逃げ足速く逃げていきました

日魚ときお @tokyosanfish

その瓶頭に詰まったインクは空色なのだという どこからどう見ても真っ黒なそれに私が首を傾げていると「覗いてご覧」とその人は言った 深い深い暗黒の中カチカチと星が光っていた その人が頭をゆっくり揺らすと星もころりと転げるのだった #空想の街 #喫茶馬頭琴

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

「私、ここでやっていけるかしら……」橋の柵に項垂れてため息。なんて、旦那の故郷に引っ越した新妻みたいなことを言うから、いつまでも助手くんに叱られるのだ。 #空想の街 #アティア 生来の甘え下手だから、こういう態度を取りがちなのもある。

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

ああ、でも、嬉しい。自分が、自分のふるさと( #空想の街 )と決めた場所で、助手くんが守ってくれた家( #アティア )で暮らすこと。できれば死ぬまで、この街の人々と、親愛なる隣人たちと過ごすこれからが。「～♪」

れんれん★うちよそ垢 @auoioua

夢は街と共に。自分は夢と共に。そして街と共に――。 #空想の街 #アティア ダンスもスキップもできないけれど、軽快な足取りで歩き出す。踊るように、これからを描きながら。小雨の向こう側、希望の星に唄いながら、師匠も街に吸い込まれていった。

日魚ときお @tokyosanfish

空がひっそり目覚める頃 彼のインクも目を覚ます 今日一日を迎えるために 星たちがいっせいに道を開き 透明に満たされた瓶の中 生まれたばかりの太陽が そろそろと瞼を開けるのだった #空想の街 #喫茶馬頭琴