空想の街 とある冬の一日 鳥に纏わる掌編・籠ノハナ屋・はなのえ文庫・曳舟荘

2020.1.23~24+α #空想の街 企画様に参加させていただいた #籠ノハナ屋 #はなのえ文庫 #曳舟荘 #鳥に纏わる掌編 のまとめです
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こみや@空想の街 @Ne2_co

「蔵にあったハンコ捺してない分と……こないだ買った分……さっさと済ませとけばよかったな……」 ざっと一つかみはあるだろうか。とりあえず舞い散ってしまう前にどうにかしなければ。あゆ子は筆立てからピンセットを手に取ってため息をついた。 #空想の街

2020-01-23 10:27:55

(副音声)

こみや@空想の街 @Ne2_co

文売りしばらく本読ませとこう あゆ子ちゃんに羽根拾ってもらわないと

2020-01-23 10:28:33
午前、ちどりとめじろとお届け先 時計塔前広場にて
こみや@空想の街 @Ne2_co

「……あ!」 小さな声が上がる。 「あ、分かった?」 「分かった分かった!あのときのお花さんだ!」 最近では時計台の屋根に上っていると怒られるようになってしまったので、鐘楼からだ。他の子が真似をするとさすがに危ないし、人をむやみに驚かすのも良くない。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 10:56:40
こみや@空想の街 @Ne2_co

「行こう!」 「行こ!」 とはいえ階段は滑り降りるように。あっという間に地上階へたどり着いて、広場にその人影を探す。もし街で見かけるようなことがあれば、と託されたそれを懐に。 「こんにちは、 #原料屋 さん、ですよね?」 #空想の街 #鳥に纏わる掌編 @ura_saraha

2020-01-23 11:00:03
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 元気いっぱいの二人の少年を微笑ましく見ていれば、あっという間にその子たちは窓也の前まで駆け寄った。「こんにちは。良い一日は良い挨拶からってね。俺に何かご用かな?」笑いかけて、ふと見たことのある面影に気づく。「君は確か…」浮かぶは鳥籠の男の姿。 #原料屋 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:04:20
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 「めじろはお久しぶり、なんですよね。ぼくはちどり。この子はめじろ」「お久しぶりですー!」 目の前の大人のいでたちは変わらないが、もう随分前のような気がする。まだ鳥籠に入っていた頃に原料屋に出会っているめじろは、あの時の山茶花の香りを覚えていた。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:13:38
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha だからすぐに見つけられたし、親代わりだった例の人物も、言付けなどをしてみようと思ったのだ。 「これ、鳥屋さんが。原料屋さんなら面白く使えるかもな、なんて」 めじろが懐から布包みを取り出して、開いて見せる。#空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編 中には拳大の巻貝の殻—―さて、何だと思う?

2020-01-23 11:18:31
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「やっぱり君か」少し前の冬、鳥籠からご機嫌に鳴いてみせた記憶を引っ張り出してしみじみとする。「大きくなったなあ。さらにお喋りになったんじゃないか?」笑って受け取った巻き貝をじっくり見分して。「貝殻と言えば、王道はこれかな」そして耳に当てた。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:24:25
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 当たり、と二人は微笑む。耳に当てれば聞こえる潮騒の音を、その中の歌声を邪魔せぬように。――鳥よ、鳥。ちょいと港へ飛んでくれ。あいつに伝えて欲しいんだ。風が回れば帰るって。星を目指して帰るって。伝えてくれたらしろがねの、いやさこがねの鈴をやる―― #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:30:33
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 明るい節回しのそれは舟唄だろうとと大家さんが言っていた。 「こうやって歌が吹き込めるんですって。何故か歌じゃないと駄目らしいですけど……上書きして使ってくれ、って」 わざわざ貝に歌を吹き込んでいる鳥屋さんのことを思うと、二人はちょっと笑ってしまう。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:33:39
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「へぇ…」ひっくり返し、覗き込み。どれだけ見てもごく普通の貝殻にしか見えないそれに、窓也は感嘆する。「珍しいものを貰ってしまったな。これはさぞかし面白いことに使えそうだ。さあ、貴重な貝殻と希少な歌声の代価に、君達は何がご所望だい?」 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:43:06
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 原料屋さんの言葉に二人は満足げな笑みで応える。鳥屋さんは何かお前らの好きなものでも貰っておけ、と言っていたので。 「何か、いい香りのするものありますか?」 「のんだり食べたりして大丈夫なの!で!」 「そう、味よりも、香りのするもので」 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:50:56
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「そんなもんでいいのか?」肩透かしをくらって窓也は瞬いた。窓也の売った原料が知らない場所であの男を助けでもしたのか?「飲食可で香りの強いものね…」ごそごそとつづらを探る。 「水晶蘭。透明な花弁からは甘い香りが強くする。味はないが、毒もないさ」→ #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 11:59:06
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「蜜胡桃、炒ると甘く香ばしい香りと味だ。テンペラの雫、7色のテンペラの花それぞれから採れた雫で、永遠に冷たくスッと鼻に抜ける香り。願い星の灰、そのままじゃ無味無臭だが他と混ぜれば驚くほど深みを増す。好きなだけ取っていけ」 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:06:39
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 「わあ……!」 取り出されたものたちを見る目が輝く。これはあの花と合うかな、これはお茶で飲むとよさそうだ、冷たい香りなら夏向けだよね。色んな想像が駆け巡る。好きなだけ、の言葉を受け取って、一つかみずつ。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:23:16
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha ありがとう、とお礼ついでに、めじろが口を開く。 「そうそう、鳥屋さんが原料屋さんから昔もらった布ね、今も使ってるって。あのときみたいにおおい布にしたり、えりまきにしたり。あったかい布だったからねえ」 鳥屋さんからもありがとうってさ、と笑う。#空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:24:10
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「そりゃ良かった」売った物の行く末は窓也の預かり知らぬところではあるが、こうして伝えられるとそれなりに嬉しくはある。「商いだからね、礼を言われることではないが受け取っておく。ところでそれ、何に使うんだい。君達、料理でもするのか?」 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:28:35
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 「料理っていうのかな、ぼく達は植物の香りに敏感なので。お茶とか香料の調合、好きなんですよ」 「お花やさんがそばにいるからねー、こういうのも楽しいかなって」 まだ身内に喜んでもらう程度だが、ゆくゆくはそういう方向でも力になれたらいい、そう思っている。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:35:26
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「へえ!自立心旺盛だな」わしゃわしゃ、と低い位置の二つの頭を思わず撫でて、窓也は笑った。「旅人には保存食や香り袋は必須だからね。いい目のつけどころだと思うよ。売れるようなものが出来たら、ぜひ仕入れさせてもらいたいもんだな」 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:43:31
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 「えへへ、そのときはよろしく!」「いつになるかなぁ」 旅のにおいのする原料屋さんになでられて、二人はくすぐったい笑い声を上げた。いつも旅のにおいのするあのひとは、きっと今もどこかの旅のそらの下。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:48:01
うらはら @ura_saraha

@Ne2_co 「楽しみにしてる」両手いっぱいに原料を抱えて嬉しそうに笑った二人の鳥に、窓也も思わず笑う。「またいつかの冬に会おう。君たちの親にもよろしく」元気な声をあげて走っていく背中を見送りながら、窓也は再び貝殻を耳に当てた。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:52:48
こみや@空想の街 @Ne2_co

@ura_saraha 「またいつか!」「またねー!!」ふたりの子どもは走っていく。さあ、早く帰っていろんな香りの、これから生まれる香りの話をしよう。また、と投げ合った言葉で胸がぽかぽかしていた。 #空想の街 #原料屋 #鳥に纏わる掌編

2020-01-23 12:55:51
うらはら @ura_saraha

「つたえてくれたらしろがねの、いやさこがねのすずをやる…」貝殻から漏れる意外と悪くない歌声をなぞって、窓也は小さく口ずさむ。「帰る港のない鳥は、一夜の宿に籠を持て…」姿のない潮の音が遠く、近く、耳に響いた。 #空想の街 #原料屋

2020-01-23 13:04:23
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