ダンテ『神曲 煉獄篇』一人読書会(2020年3月19日〜27日)
第25歌 593頁、魂の不滅論をスタティウスが語る(というか彼自身が魂みたいなもの)。「この人間の魂、つまり霊的魂は肉体が滅んだ死後も消滅しない(79-81行目)。神由来の形相である人間の魂は、質料である肉体がなくとも空気を質料にして感覚を組織し、 (続く)
2020-03-27 10:29:13(承前)自身の持つ欲望や感情に従って形が変わる(88-108行目)。これがスタティウスの答えであった。」
2020-03-27 10:30:25第26歌 ここはダンテの愛と詩についての重要箇所と原先生は注意を促している。 599頁、「父」であるグィニツェッリとの〈愛〉の認識についての違い。「グィニツェッリの詩では、世界のあり方と人間の発生の仕方が愛の例えに使われている。 (続く)
2020-03-27 10:34:53(承前)一方ダンテにとって、愛は世界のあり方と人間の発生の仕方そのものであり、貴婦人達は、魂を神(キリスト)のもとに導く力(徳)と一体化している。この違いから、ダンテはグィニツェッリを、中庸を逸脱し、神にまっすぐに向かわずに獣性の愛に狂った罪ある者としたのであろう。」 (続く)
2020-03-27 10:36:48第27歌 602頁、ベアトリーチェ、とはつまり神の愛のことである。ここで別の愛との対比があるので引用。恐怖に足がすくんでしまっているダンテに「罪の赦しへの最後の一歩を踏み出させることに成功したのはベアトリーチェ、神への愛であった (続く)
2020-03-27 10:40:41(この愛は、ここでは血を流して死んだバビロニアの恋人達の抱いた、愛に殉じる情熱を思わせるとともに、互いを所有したがるその愛とはコントラストをなしているようにも思える)。」 (続く)
2020-03-27 10:42:34(私見)ベアトリーチェ=「神の愛」は個人が所有できるものではない、だがバビロニアの恋人達の愛は「所有」である。このことは経済の問題と関係があるだろう(がとても今はきちんと学ぶ余裕がない)。
2020-03-27 10:43:27603頁、「結論だけを言えば、煉獄は、理想のローマ帝国のあり方を象徴している。」→世俗と神という、二つの太陽をもつローマ(106-108行目)。
2020-03-27 10:45:06第28歌(地上楽園、貴婦人の名前はマテルダ) 605頁、ダンテとカヴァルカンティの愛の違いについて記述がある。「地5、煉25、煉26などで見てきたように、ダンテとグイド・カヴァルカンティの違いは〈愛〉のとらえ方にあり、ダンテのそれは神に向かう愛(アモール・カリタス)であり、 (続く)
2020-03-27 10:47:35(承前)グイド・カヴァルカンティのそれは神に向かうことのない愛(アモール・パッショーネ)であった。」→関連で606頁からの引用。「人類が独力で地上楽園、つまり至福直感に到達できるとしたカヴァルカンティらの思想(地26)を傲慢とし、またその熱情の愛を罪としていることが表現されている。」
2020-03-27 10:50:24第29歌 609頁、7つの贈り物〈賢明、知性、忠告、剛毅、学問、慈愛、神への怖れ〉が空から降りてくる。これは7つの大罪の逆であり、いよいよ『神曲』の折り返し地点であるという。
2020-03-27 10:52:03第30歌 612頁、ベアトリーチェ同上、ウェルギリウス退場。前者は神の意思であり、後者は異教徒にして、地上の事物に神の意思を読み取るものであるが故に、ということ。
2020-03-27 10:53:16614頁、ベアトリーチェ、ダンテの罪について説明する。要するに地上のことへのこだわり過ぎが問題だという。「ダンテが自然(宇宙の各天空や星座の影響力)が彼に与えた素質と、神が彼に与えた素晴らしい素質を備えていたにもかかわらず、 (続く)
2020-03-27 10:55:14(承前)神の知恵から離れて地上の事物、地上での出来事に己の全存在をかけてしまったというものだった。」→これはダンテ『新生』の記述に対応するように書かれているという。
2020-03-27 10:56:17615頁、ベアトリーチェの、ダンテの罪の説明。説得力があるというかなんというかなので引用する。「ダンテは、地上の事物の偽りの美しさに惑わされたと答えた(34-36行)。それに対してベアトリーチェは詳細に補足し、地上の最高の美であったベアトリーチェでさえ滅んでしまうのだから、 (続く)
2020-03-27 10:59:22(承前)ダンテはベアトリーチェの死後、地上の事物を思うのではなく、彼女の美が暗示していた神的な至高の美を目指すべきであったと指摘した(49-57行)。そしてまた、ダンテが地上に帰った後にも「セイレーン」の誘惑があるだろうことも述べた(45行)。」
2020-03-27 11:01:26第32歌 620頁、鷲の攻撃(帝政ローマによるキリスト教徒への迫害)や狐(初期の異端)、竜(イスラムか教皇庁による教会分裂?)といったアレゴリーの解説。
2020-03-27 11:03:05こうしたアレゴリーを駆使して詩を書くダンテについて、原先生の言葉。「政治的に追い詰められていたダンテは困難のな状況の中で正義を訴え、かつ権力から抹殺されないために、この難解な預言の詩に己を託した。この政治に対する文学の戦い方は現代文学にまで影響を与えている。(続き)
2020-03-27 11:04:43第33歌 624頁、ダンテが愛について語るというよりは、神からダンテに与えられる愛がダンテを媒介として語るということになる。こういう意味でダンテは「預言する詩人となった」という。なるほど。
2020-03-27 11:07:02これで煉獄篇「各歌解説」のメモは終わり。このあと原先生の「「煉獄篇」を読み終えてーーカヴァルカンティ、ダンテ、ペトラルカ」というエッセイがあるのだけれど、これはどうしようかな。
2020-03-27 11:08:42