ノー・グリッター #6(完結)

この後提督たちは溶けたチョコビーンズでベットベトになりました。赤道直下だからしょうがないね。 5:https://togetter.com/li/1488915
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2020-04-04 21:01:00
劉度 @arther456

【ノー・グリッター】#6

2020-04-04 21:02:00
劉度 @arther456

「不幸だわ……」迫る有翼怪物の群れを目の当たりにして、陸軍特殊船舶部隊の山城は思わずそう呟いてしまった。「今回は後方待機で、前線では戦わないって聞いたのに……」ボヤきながらも山城は砲弾を放ち、頭上から襲いかかろうとしていた怪物を撃ち落とした。1

2020-04-04 21:03:01
劉度 @arther456

「口じゃなくて手を動かす!」噴進砲で怪物を迎撃しながら、千代田は叫ぶ。同時に烈風の式神を操り、上空を行く怪物たちを撃ち落とす。多重思考に脳が悲鳴を上げるが、意志の力でねじ伏せる。「一匹でも多く、この化け物を殺すのよ!」2

2020-04-04 21:06:00
劉度 @arther456

山城と千代田は奮闘しているが、それでも撃ち漏らしが出る。そうした残りの怪物を食い止めるのは、ジャカルタ市街最終防衛線。「予備隊も投入しろ!ここが正念場だ!」最上の指揮で、赤い装束に身を包んだ異様な兵士たちが怪物たちを迎え撃つ。3

2020-04-04 21:09:01
劉度 @arther456

そこに巨大な影が落下してきた。他の怪物を率いる全長50mほどの巨大有翼怪物だ。対空砲が精々な最上隊の火力では、この巨体に有効打を与えられない。「加藤ッ!」最上は後ろへ叫んだ。「問題ない。地脈は捉えた」加藤が応えた。4

2020-04-04 21:12:01
劉度 @arther456

「ワヤン・クリより現世の姿を得て、来臨せよ、護法童子!」加藤が中央に立つ巨大魔法陣が輝く。すると加藤の影が濃くなり、更に巨大化し始めた。やがて影は全長50mを超える、8本の腕を持った鬼神・護法童子へと変化した。護法童子はそれぞれの腕に錫杖や独孤といった武器を握っていた。5

2020-04-04 21:15:01
劉度 @arther456

護法童子が武器を携え巨大有翼怪物に躍りかかる。それに対して怪物は威嚇するように吠えると、鉤爪で迎え撃った。護法童子と怪物が武器を打ち合わせる度に、周りのビルが砕け、破片が飛び散る。加藤は破片を避け、護法童子の背後を狙う有翼怪物に式神をけしかける。6

2020-04-04 21:18:00
劉度 @arther456

式神を操り、怪物を迎撃しながら、加藤は前線の様子を窺う。バタビア沖棲姫と魔導大隊の戦いは未だに膠着したままだ。「……最上」「何だ!」刀を振るう最上に呼びかける。「戦況が良くない。撤退も考えておけ」「何!?押されているのか?」「いや。ただ、有効打を与えられていない」7

2020-04-04 21:21:00
劉度 @arther456

「できれば倒しておきたいが……わかった、気をつけよう」加藤たちには加藤たちの目的がある。陸軍、いや、日本軍に死ぬまで付き合う義理はない。「撤退理由はどうする?」「横須賀の連中の護送で先に撤退した、という風にしておこう」彼らの背後では、提督たちが相変わらず謎の儀式を行っていた。8

2020-04-04 21:24:00
劉度 @arther456

《こちら鷲尾隊!負傷者8名、戦闘不能者2名!》《艦内に撤退しろ!大垣隊と交代だ!》《羽黒です!もう少しで敵部隊を突破できます!増援を!》《防空巡棲姫さん、増援出せますか!?》《無理だ、近付けない!》《敵の潜水艦を発見!》《えっ……何だって?》《駄目だ!》《だから何!?》10

2020-04-04 21:27:00
劉度 @arther456

戦闘開始から2時間、艦娘たちは決定打を出せずにいた。敵の数もさることながら、指揮を執っている倉田が海戦に不慣れなため、部隊同士の連携が上手くいっていない。それでも艦娘たちと深海棲艦、そして陸軍は戦い続け、バタビア沖棲姫の喉元へと手を伸ばしていた。11

2020-04-04 21:30:00
劉度 @arther456

「……見えた!そこだっ!」重巡ネ級改が尻尾の砲を放ち、正面の怪物を撃ち落とす。広がる爆炎を突っ切り、向こう側にいた別の化け物を殴り倒す。眼前に海と空が広がる。敵の群れを抜けた。正面にはバタビア沖棲姫。「クインシー、行くぜ。マッハで蜂の巣にしてやるよ!」12

2020-04-04 21:33:00
劉度 @arther456

ネ級のガトリングガンが火を噴いた。銃弾がバタビア沖棲姫に殺到する。ダメージは無い。だが、戦局は大きく動いた。主人を狙われた有翼怪物たちは、慌ててネ級に襲いかかる。それにより、怪物たちの陣形が乱れた。艦娘も深海棲艦も、その大きな隙を見逃しはしなかった。13

2020-04-04 21:36:01
劉度 @arther456

「深海棲艦に遅れは取りませんよ!マイクチェックの時間だオラァ!」霧島が三式弾を放ち、正面の怪物を怯ませると、その尻尾を掴んで投げ飛ばし、強引に道を切り開いた。「ツァ!」別方面ではツ級が得意の対空砲火で怪物たちを片付け、バタビア沖棲姫の前に辿り着いた。14

2020-04-04 21:39:00
劉度 @arther456

3方向からの攻撃を受け、バタビア沖棲姫が遂に動いた。背中のオウムガイに似た怪物に取り付けられた砲が発射される。「ぐうっ!?」「ツァッ!?」ネ級改とツ級に命中。ネ級改はその重厚な装甲で身を守ったが、ツ級は一撃で胴体を撃ち抜かれ、爆発四散した。15

2020-04-04 21:42:01
劉度 @arther456

「なんのっ、まだまだ!」霧島は足を止めず、バタビア沖棲姫の照準を揺さぶる。そして砲弾が逸れたのを見計らい、徹甲弾で反撃する。砲弾は直撃したが、バタビア沖棲姫は意に介していない。「何という装甲……ひょっとして、私でも力不足ですか!?」16

2020-04-04 21:45:00
劉度 @arther456

今の横須賀隊の最高火力は霧島である。陸奥は石化し、不知火と翔鶴はクリスマス、大和は正月だ。霧島の砲撃でも装甲を抜けないとなると、バタビア沖棲姫を沈める手立てが無い。「どうすれば……」「皆さん、そのまま撃ち続けて!」霧島の背中から声がかかった。17

2020-04-04 21:48:01
劉度 @arther456

「その声は……大鯨さん!?」大鯨が危険を顧みず前線に接近していた。近づく有翼怪物は、彼女が操るドローンに迎撃されている。《あと2分、それを釘付けにしてください!》「どういうことです!?」「最終計算中です!」「何の!?」「2分でわかりますから、撃ち続けて!」18

2020-04-04 21:51:00
劉度 @arther456

「霧島ァ!とにかくfire, fire, fireデース!」追いついた金剛がバタビア沖棲姫に攻撃し始めた。「わ、わっかりました!」霧島も続けて更に深海棲艦の航空機も攻撃に加わる。バタビア沖棲姫にダメージは入らない。それでも霧島たちは撃ち続ける。19

2020-04-04 21:54:00
劉度 @arther456

「あと1分!」不意に、バタビア沖棲姫の気配が変わった。「まずい……!」石化光線の予兆。その魔力は先程の比にならない。自分で召喚した有翼怪物諸共、この海域一体を丸ごと石にするつもりだ。焦る霧島。その頭上が、不意に翳った。思わず上空を見上げる。20

2020-04-04 21:57:00
劉度 @arther456

巨木が飛んでいた。「は?」それは『鳥堀』から魔法で射出された巨木だったが、前線で戦っていた霧島には何だかわからなかった。巨木は落下し、バタビア沖棲姫に突き刺さる。「エクスプロージョン!」掛け声がかかると、巨木は燃え上がり、大爆発を起こした。21

2020-04-04 22:00:03
劉度 @arther456

それでもバタビア沖棲姫は傷つかない。しかし、注意が戦場全体から巨木の射出地点、『鳥堀』へと向いた。《こっちを見ろ……!》倉田の挑発に乗ったバタビア沖棲姫が、石化光線を放つ。膨大な魔力の奔流を受け、『鳥堀』の四重の魔術障壁が砕け散った。「倉田さん!」22

2020-04-04 22:03:00