アニメ映画「おまえうまそうだな」レビュー 自宅待機中のご家族にオススメの良質ファミリー向け映画

アニメ映画「おまえうまそうだな」のレビューです。ネタバレあり。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

2010年公開のアニメ映画「おまえうまそうだな」を何年かぶりにみた。 やっぱり傑作だなぁ、これ。当時じわじわと評判が広まってソフトが出て後追いで見たけど、ポスターの絵柄とは真逆のパワフルな内容に圧倒された。 完全非ジブリ系国産アニメ映画としては10年に一本レベルの痛快作品かもしれない。 pic.twitter.com/lzE2ZycYm0

2020-04-12 06:44:42
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

原作「おまえうまそうだな」は、宮西達也氏による絵本作品。絵本のほうは読んだことがないのだけど、国内だけでシリーズ累計200万部の有名シリーズらしい。 それを原作としたオリジナルアニメ映画の本作。アニメーション制作は亜細亜堂。監督は藤森雅也氏。 pic.twitter.com/yX1Yrajghe

2020-04-12 06:44:42
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

以下ネタバレだが、ネタバレといっても内容は実にシンプルなので大筋を知って見ても特に問題はない(勿論何も知らずに見るのが一番だけど) コロナの影響でお家で色んな映画を子供に見せてるお宅が多いと思うが、本作はたぶん忘れられているのではないだろうか。是非オススメしたい隠れた傑作だ。

2020-04-12 06:44:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

さてこの作品、当時は予告があざとすぎて敬遠された(自分もした)ところがあったと思う。いかにも「感動作!」みたいな感じで、内容も簡単に予想がついてしまう。完全に児童向け映画だと思っていた 「あーハイハイ予告の最後の『感動のお別れ』がラストなんでしょお?w」youtube.com/watch?v=OV4ZsY…

2020-04-12 06:44:43
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しかしこの映画、実際は全然違う内容なんである。 肉食恐竜の「ハート」と、草食恐竜の「うまそう」の絆の話は実は副次的なもので、主軸は主人公ハートの男としての成長にある。実は超熱血成長物語なのである。 pic.twitter.com/NiC7QbCs2i

2020-04-12 06:44:44
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私が広報担当でポスターを作るならこんなかんじにしている。文字も血文字で乱暴に書き殴ったような迫力あるかんじにする。劇場に見に来た無邪気な子供達を震え上がらせてやります。 pic.twitter.com/2km6HiOiIk

2020-04-12 06:44:44
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

冗談はさておき、本作の見所は何と言ってもその迫力あるアクションシーン。少年向け作品もビックリの大迫力バトルアクションが堪能できる。キッズ向けアニメを数多く制作してきた亜細亜堂による簡潔ながら動きまくるパワフルなメリハリある作画が素晴らしい。 pic.twitter.com/xrCdro9gSN

2020-04-12 06:44:44
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

寺嶋民哉氏による音楽も素晴らしい。氏はジブリの「ゲド戦記」でも、久石譲氏が担当されないなか負けず劣らない濃厚なファンタジー音楽を作られていた。 私はNHKで放送された「魔法少女隊アルス」のOPが好きで、映画音楽のスケールで聴きたいと前から思っていた。 youtube.com/watch?v=0GtUd9…

2020-04-12 06:44:45
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

迫力あるバトルアクション、濃厚なBGM、ちゃんとした音響での観賞を是非オススメしたい本格作品である。(公式さん、10周年だしいい加減サントラ出して?)

2020-04-12 06:44:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

脚本は至ってシンプル。展開も結構駆け足だし、要素の全てを描き切れているとは言い難い(草食と肉食の倫理的問題等) しかし「ハートの成長物語」としてみればよく出来たシナリオだと思う。本作はその割り切りの良さもよかった。 本作が描いてるのは「親の無償の愛、自分を貫く生き方の責任」だと思う。 pic.twitter.com/oTg0hebnrU

2020-04-12 06:44:46
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草食恐竜のお母さんに拾われ、草食恐竜の兄弟と一緒に育てられたハートは自分が周囲の恐竜と少し違うことに悩む。ある日自分が肉食恐竜だと知って家を飛び出し、そのまま独り立ちしてしまう そこに卵のうまそうを見つけ、いつか食べてやろうと思いつつ肉食恐竜と草食恐竜の共同生活が始まってしまう。 pic.twitter.com/JFu0MCKaqu

2020-04-12 06:44:46
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作の主眼は「相容れないハートとうまそうの絆」にはあまり無い。うまそうは全編を通してハートに全幅の信頼を置いているし、種族の違う親に育てられたという葛藤も特にない。 本作で重要なのはハートが「他人と違う(マイノリティである)こと」「いつも自分から逃げている」ということなのである。 pic.twitter.com/TWXttnN4kC

2020-04-12 06:44:47
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ハートは自分が周囲と違うことにショックを受けお母さんと兄弟の元から逃げ、一時はうまそうと共同生活するも、「どうせいつかバレる」と思い、自分の都合でうまそうと別れようとする。 「個としての強さ」を求めつつ、他人から拒絶されてしまう恐怖からは終始逃げている。 pic.twitter.com/WISxFsaued

2020-04-12 06:44:47
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しかし優しい草食恐竜の母に育てられたハートは、母から受け継いだ優しさからかうまそうを見捨てることが出来ず、うまそうを襲った肉食恐竜の仲間を蹴散らしてうまそうを救い、その一帯の主である「片眼のバクー」から追放を言い渡されてしまう。ハートは黙ってその場を去る。 pic.twitter.com/XPpMjxRNp8

2020-04-12 06:44:48
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この「バクー」はどうやらハートの実の父親であることが匂わされる。 で、なんやかんやあってハートが元居た「卵山」が噴火の危機を迎えていると知り、ハートは家族を助けるために戻る決意をする。 うまそうと平和に暮らしていたハートは自分の過去と向き合うことを迫られる。 pic.twitter.com/aLyP9OdB7o

2020-04-12 06:44:48
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ラストは燃え盛る森の中(このシチュエーションの演出もうまい)のバクーとの一騎打ちで、これがまた迫力あるバトルアクションと壮大なBGMで大変燃える。父と子の戦いというシチュエーションも燃える。 pic.twitter.com/TkVAjevp7C

2020-04-12 06:44:49
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

間合いを計る描写や、体格差を意識した立ち回り、戦い方等、重心移動や重さを感じさせる作画等キッズアニメとは思えないほど本格的なバトル描写男子なら思わず血が滾ること間違いなしだ。 pic.twitter.com/iogwq6KLr8

2020-04-12 06:44:49
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

他人と違う道を生きるということはそれなりの覚悟がなければならない。縄張りや仲間意識が重要な野生では、好き勝手な生き方は許されない。 バクーは自分の手で育てられなかった息子の力と覚悟を試すために、越えなければならない壁として立ちはだかるのだ。ここにも「父の愛」というテーマがある。 pic.twitter.com/9tYG6ITAk4

2020-04-12 06:44:50
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

今見るとサブテーマとして「マイノリティの生き方」というものも少し含まれているのかと感じた。ハートが道中出会う「ペロペロ」の一人称は「ボク」だが中性的な声で種族も違うのだが、このパートは妙にロマンティックなムード。サラリと流されているのだが、案外LGBT映画の要素もある? pic.twitter.com/hbVdJNpbJx

2020-04-12 06:44:51
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しかし基本的には男の子映画。アツい挿入歌「heart beat」が流れる中特訓する2人のモンタージュは、ロッキーの特訓モンタージュ以来の「燃える特訓モンタージュ」だと断言する。 pic.twitter.com/eqOR1z3MCN

2020-04-12 06:44:51
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作はあらゆる映像演出が駆使されてるところもいい。本編89分で物語もシンプルだが演出のメリハリがしっかりと効かされているので非常に観賞感がよい。明るい特訓モンタージュの後には静かな雨のシーン、たまに挿入される幻想的なイメージシーン等、物語の展開に合わせて多種多様な演出が施されている pic.twitter.com/lItnM8EcMg

2020-04-12 06:44:51
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

演出の基礎ながら、これが出来てる作品は案外多くない。何かと一本調子で進む単調な作品が多いのが現状だ。

2020-04-12 06:44:52
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私が好きなのは物語終盤、もはや完全に格下となったかつての敵「ゴンザ」が立ちはだかった時(股抜きショット!)に、ハートが「…死ぬぞ。」と冷たく言い放つシーン。口を開かず牙だけが動く表現。こういう何気ない芝居がカッコイイ・・・ pic.twitter.com/r3SyQ5hHp7

2020-04-12 06:44:52
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

最終決戦の男と男の意地のぶつかり合いのシーンで、ハートの鼻から流血させる表現もうまい。子供向けなので残酷な表現は全くないが、こうしたところでしっかりと「血を流す」 制作者の本気度が伝わってくる名演出だ。 pic.twitter.com/UmvuFppNCC

2020-04-12 06:44:52
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

物語は極めてシンプルながら、力の入った映像表現と工夫を凝らした演出、良質な音楽、迫力ある音響で子供から大人まで楽しめる痛快娯楽作品となっている。 自宅待機で良作映画を探されている方が多いと思うが、これを機にご覧になってはいかがだろうか。 pic.twitter.com/aFvCdlYVrR

2020-04-12 06:44:53
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