ゆずさちまとめ

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@megimuko_tl 本が天井ギリギリまで積み上がっているのを見たら、どうしろと…と途方にくれますね。仮眠を取ってから考えようと居間に戻り、惨状を見たら｢流石にこれはいけませんよ！纏め直すまでおやつはあげませんからね！｣とどこぞへ向かい宣言するかと

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 上下バラバラではあるものの、ぎゅうぎゅうと棚に詰め込まれた本を見渡す。己も何時までも怒っている訳にはいくまい。さて努力は認めねばと、朝食用にと買いためてあった果物入りのゼリーと、王冠で蓋をされた瓶入りコーラを居間に置いた。さて、己は少し仮眠でもしようか。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl この短時間で部屋を元どおりにできるとは。なんて自分はできた妖怪だ。多少違和感はあるが、ぐずな人間は気づかないだろう。だがこれでつけあがってもらっては困る。次の標的を探しに居間に行くと、封がされた奇妙な形の器が二つあった。どちらも半透明だが、素材が違うようだ。いつもと勝手が違う。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 片方は半透明で、手に持って光に透かすと黄色や赤の混ぜ物が光った。水──でもないようだが、毒が入っているにしてはあまりにも鮮やかな配色だ。横に置いてある細長いヘラもよくわからない。 問題はもう片方だ。頑丈な封がされた器の中で、黒い液体が揺れている。これは絶対に毒に違いなかった。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 敵はよほど強気になっている。こうも見え透いた殺意を隠そうともしないとは。…なるほど。つまりこれは"問題"だ。片方が正解、もう片方は不正解。随分となめられたものだ。もう絶対に許せない！僕は馬鹿じゃないから正解を選ぶことができる。もちろんこっちのキラキラしてるほうあれっこれ開かないな。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl ごろりと横になり、微睡んでいると、ふとある考えが浮かんだ。ゼリーを食べるためのスプーンは置いたが、はたしてコーラを開けるための栓抜きは置いただろうか。置いたような気もするが、うっかりという事もあるかもしれぬ。そうこうしているうちに不安になり、目を開くとちいさな後ろ姿が目に入る。

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@shen_mao @megimuko_tl 居た。なんか居た。眼鏡を外しているためよく見えないが、鮮やかな着物を羽織った…子供だろうか？一呼吸置いてから驚きに目を見開くと、反射的に起き上がろうとした。だがこたつに入っていたのを忘れていたため、強かにすねを打ち付けた。｢…ぐぅッッ…！！｣

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl どしんと突き上げるような衝撃と低いうめき声に驚いて振り向くと、人間が横たわったまま顔をしかめていた。しまった！ここでようやく気が付く。わざと開けづらいものを置いて、気を取られている隙をつくのが作戦だったわけだ。なんという卑怯な手だ。これだから人間は！

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl すばやく立ち上がる。まだ痛みに耐えるようにうつぶせになっている人間の背中を踏み台にして大きく跳ぶと、一足で僕は居間を飛び出していた。縁側から庭に逃げるほうが早いのはわかっているが、依り代を傷つけられたらことだ。ここはいったん屋根に逃げて様子を見よう。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 相手がさっと立ち上がったと思うやいなや、背に強い衝撃を受けた。息がつまり、つい蛙の潰れたような悲鳴をあげてしまう。もしや私は踏み台になったのか。のそのそと炬燵から這い出し、逃げた人影を視界で追う。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl なんとなく気配は屋内にとどまっているようである。痛む背を擦りながら、ちらとゼリーとコーラの瓶へと視線を向けると、やはりそこには栓抜きがなかった。｢…悪かった、開ける道具を一緒に置くのを忘れてしまっていましたよ。道具を持ってきて、開けるから今から一緒にどうですか？｣

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl こちらの居場所がわからないのか、人間は適当な場所を向いて話している。僕は天井の梁に座って下を覗き込みながら鼻で笑った。いかにも嘘つきの、ずるい人間が言いそうな事だ。 まあ…あのキラキラしたものが食べ物だとしたら、どんな味か気になるけど。それにしても痩せっぽちのくせに背が高いやつ。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 言葉への反応はない。聞こえないか、通じないか、それとも警戒してあえて応えないか。さてどうしたものかと思案しながら眼鏡をかけ直すと、キッチンへと脚をすすめた。しばらくして戻ってきた雨水の手には、ガラス製のコップとお椀、そして栓抜きだった。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl パキ、と軽快な音をたててゼリーをあけると、スプーンで半分すくって椀によそう。生憎最低限の食器しかないのだ、己はプラの容器の方を頂こう。そして骨ばった手で栓抜きを持つと、瓶の王冠を引っかけた。ポンと音をたてて王冠が天井の方へ飛んでいく。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 一体どういうつもりなのだろう。人間は僕を探すのを諦めて、さっきの包みの中身を器にあけている。あのキラキラしたものはいいとして、もうひとつの毒の水はどうする？と身を乗り出したとき、軽い音と一緒に何かがこちらへ飛んできた。驚いたついでに思わず声が出て、梁から足を滑らせた。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 放物線を描いて飛んでいく王冠を目で追うと、目蓋に焼き付いていた鮮やかな色彩が側にあった。危ない。声に出すより先に瓶と栓抜きを放り投げて、悲鳴をあげて滑り落ちてくる者を抱き止めようと手を伸ばす。こんな事なら鍛えておくのだった。腕は重みにすぐ負けてしまうから、せめて私は敷物になろう

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 普段ならこんな高さの場所から落ちても難なく着地できるのだが、不意を突かれたなら話は別だ。足から落ちる僕を、人間が両手で抱きとめる──が、それだけだった。骨ばった身体がぐらりと傾き、僕もろとも畳の上に転がる。その間、そいつは頑なに僕の頭を守るように手で覆い、決して離さなかった。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl ｢……ッ、｣覆っていた手を恐る恐る開いて、小さな頭を見る。もし倒れた拍子にぶつけていたらどうしようかと思ったが…良かった、目立つ傷はない。良かった、良かった、どんくさい己でも、なんとか庇う事が出来たのだと思うと鼻の奥がツンとして何だか泣けてきた。｢良かったぁ～…｣

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 己の頭の横で転がった瓶から、炭酸とともに中身が静かにこぼれだして私を濡らす。涙とコーラでぐしゃぐしゃになりながら、己の腹の上にちぢこまっている子へと改めて目を向ける。そこに居たのは、目にも艶やかな着物を羽織った、藤色の髪の少女だった。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 仰向けになった男の上で腹ばいになりながら、僕は初めてそいつの顔を間近で見た。「人間」というものを水で薄めて引き伸ばしたような男だ。痩けた頰、まぶたが半分くらいしか開いていない目。そこから大粒の涙がこぼれて落ちていく。どうして、と呟くより先、男が顔を歪めて「よかった」と言った。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl ふと甘い香りに気づいて横に目をやると、容器からこぼれた黒い水が人間を濡らしている。しゅわしゅわと泡立っているのは、もしや皮膚を溶かそうとしているのか。 危ないところだった。飲んでいたらどうなっていたか。馬鹿な人間は、自分で用意した毒で死ぬのだ。 僕は思い切り鼻で笑ってやった。

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 「馬鹿なやつ。僕を騙そうとするからだ」 どうせ人間は人間だ。身を起こそうとすると「待ちなさい」と男が僕の背に手を回す。痩せっぽちのくせに妙に力が強い。 「怪我は」 「はなせ！お前なんか嫌いだ！」 僕はこぶしを握ると、人間の肩や胸を殴った。寝そべったままではうまく力が伝わらない。

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl ｢騙すとは…?開ける道具を忘れ勅使まったから、くれ騙しかと思ったのかい？｣人慣れず毛を逆立てる猫のように、ばたばたともがく少女にどうやら怪我はなさそうだ。少女の小さな拳でぽこぽこと殴られるくらい、普段ならどうという事はない。しかし下敷きになったさいに強かに打ち付けた胸元にまで

クリスタのログボもらった？ @on9tabetai

@shen_mao @megimuko_tl 及ぶと、流石に鈍く傷んだ。傷の程は打ち身ぐらいか。骨にまで及んでいないのは不幸中の幸いだった。｢……そうか、うん、そうだね。私は一人で過ごす時が長かったから、貴女に気づいた時に同居人が出来たみたいで嬉しくなってしまったのです。貴女の気持ちも考えずに、勝手でしたね…｣

まお（auxroro） @shen_mao

@on9tabetai @megimuko_tl 「同居人？馬鹿をいうな！ここは僕の家だ！出ていけ！出て行けよ！」 こいつは一体なんなんだ。人間のくせに僕のことをちっとも怖がらない。それどころか嬉しいだなんて。 人間のくせに生意気だ。わからない事を言うんじゃない！嫌いだこんなやつ。僕は妙に悔しくなって、なんだか泣きたくなった。