ナラク・ウィズイン#5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは警備のアカゾナエ・ゲニンを蹴り殺し、振り向きざまのスリケン攻撃でもうひとりを倒した。BRATATATA!「グワーッ!」最後の1人はトム・ダイスが片付けた。然り、トム・ダイスだ。「ニンジャスレイヤー=サンか」トムは一瞬の警戒を解いた。「感謝する」19

2020-04-18 21:58:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここは北塔付近か」ニンジャスレイヤーは屋根越し、黒々とそびえる影を見た。トムは頷いた。「ああ。敵に時々鋭い奴がいる。そう易々とはいかん事が……」「デアエ!」「デアエ!」左右から駆けてくるアカゾナエの声が聞こえた。「ちッ……!」2人は部屋の中へ身を引いた。 20

2020-04-18 22:03:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATA……TATATA……北方向で鳴っていた銃声や破砕音が止んだ。「大丈夫でしょうか」コトブキは心配した。『ああ、ニンジャスレイヤー=サンだ、心配要らねえ』タキが通信を入れた。『なんか知らねえが、戦いながらトム=サンと合流したようだぜ。派手に戦いやがって、あっちに兵が集まってら』 22

2020-04-18 22:06:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかりました。サイオー・ホースな」コトブキは奥ゆかしく歩き出した。「私のこの服装はミコー・プリエステスなので、うまくごまかせる可能性が高いのです」タキに説明し、エンガワを進む。庭の池には鯉が泳ぎ、あちこちに藤の花が垂れている。「感傷的なパレスです」『もっと緊張感を持て』 23

2020-04-18 22:08:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時、目の前のショウジ戸が開き、アカゾナエのゲニンが現れた。北の銃声を気にしたのだろう。「アアー?何だ、お前は」顔をしかめてコトブキを見る。コトブキは微笑んだ。「私は神聖な任務を受けて、これから勤め上げるところです。お通しになって」「ア?それはアレか?ゴマのか?」「はい」 24

2020-04-18 22:11:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あそこはボンズの集まりだろうが」「そうです、応援したり、ミコー・プリエステスの役目が……」「……アレよ。ちと、休んでいけ」ゲニンは欲望的に目を細め、コトブキの手をとった。「儀式警備と親王の警護にだいたいの人員が割かれておるからな、このパレスの仕事は少ない。クルシュナイだぞ」 25

2020-04-18 22:14:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「でも……」「いいから。チャの一つでも淹れろ」「アーレー……」ゲニンは外を警戒したのち、コトブキを連れ込んでショウジ戸を閉めた。「……」ショウジ戸がすぐに開き、特殊警棒を持ったコトブキが出てきた。後ろには昏倒ゲニンの脚。「油断も隙もありません」コトブキは呟き、西塔に向かった。 26

2020-04-18 22:17:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だ?北で凄い音がしたが」「何が起こってもおかしくない」「違いないな」「ザンマ・ニンジャ=サンを見たか、お前?」「いや」「頭がおかしくなりそうだった。さすがシテンノだ」「マジか」「馬丁が……」「ナムアミダブツ」ゲニンが通り過ぎると、風が吹き抜け、コルヴェットが膝をついた。 28

2020-04-18 22:21:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まだいけるか」コルヴェットは懐のスキットルを探り、呟いた。「あまり飲まんようにせんとな。俺の本番はこの後だ……」彼はシンデンヅクリ・パレスを背後に、しめやかに進む。塀に飛び乗り、ゴマグラウンド陣幕を囲むマングローブに飛び移る。そして異様なモミジの葉に身を潜める。 29

2020-04-18 22:26:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「進行はどうだね、タキ=サン」彼はIRCに呼びかけた。『アー、そうだな、トム=サンはニンジャスレイヤー=サンと合流した。ちと難儀してンだ。まあニンジャを相手にしてたから、成り行きでよ。そのうちそっちによこすから、待機しろよな』「フム……」『ガキとフィルギア=サンは東塔だ』 30

2020-04-18 22:28:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一番心配だが」『知らねえけどよ。平安時代でリアルニンジャなんだろ?ダメだったら隠れさせてよ、ニンジャスレイヤー=サンを向かわせッから』「うむ」『南は……コトブキの奴が、手が空いたら向かう。だがまあ、北西東の3つブッ飛ばしゃ、奴らも流石にパニックだろ。どうだ?ゴマの様子は』 31

2020-04-18 22:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「芳しくない」コルヴェットは望遠鏡を覗き込んだ。「ニンジャが続々集まっておる。奴らも、よほど期するものがあるか。遅きに失したと思いたくないが……」コルヴェットはオベリスク付近の後ろ姿を見ようとして、本能的な危機感に、望遠鏡を引っ込めた。おそらくはクローザーだ。 32

2020-04-18 22:34:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あと数呼吸、その姿を注視すれば、逆にその視線を感じ取られてしまったであろう……そんな確信があった。コルヴェットは恐れた。「度外れとるぞ。一体全体、アレは何者だ……?」『何が』リイイイン……リイイイン。ギンカク・オベリスクの光と唸りが強まっている……。 33

2020-04-18 22:39:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

塀の亀裂の下の土を掘り広げた穴を這ってゆくザックを見送り、フィルギアは周囲を警戒しながら待った。やがて、ガタン、扉の向こう側の閂が外された。「来なよ」門が少し動いて、ザックが顔を出した。「やるなァ、ザック=サン」フィルギアは褒め、滑り込んだ。「だろ?」ザックは得意げだ。 35

2020-04-18 22:42:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダテにニンジャスレイヤー=サンと一緒に行動してないな」「ピッキングもお手の物だぜ」「Tシャツのセンスもいいよ」「エッ、わかるのか」ザックはTシャツの「アベ一休」のロゴを掴んだ。フィルギアはにっこり笑い、頷いた。「ワカル、ワカル」「マジで?」「ライブも見たよ」「すごすぎる!」 36

2020-04-18 22:44:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヒヒヒ……お兄さんは大昔からの生き字引だし、本当だったら今のもキミにやらせないで、蛇に変身して潜り込めた」「それはちょっと、どうだかな」「キミも信じないか。辛い時代だね」彼らは東の五重塔の敷地に入り込んだ。塔の上では黒紫の火が燃えているが、さいわい、警備の姿はなかった。 37

2020-04-18 22:48:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネザーの火……」塔を見上げ、フィルギアは呟いた。ザックが急かした。「早くやろうぜ」「ああ、うん」フィルギアは懐からC4爆弾を取り出す。トムに渡されたものだ。「こんな物騒なもの、そうそう扱った事無い、笑えるな」「ほら、普通の兄ちゃんッて感じだもん」「イヒヒヒ……」 38

2020-04-18 22:52:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トムはニンジャスレイヤーと共に暗い閉所を這い進んでいた。天井裏だ。咄嗟に上へ逃れた彼らは、そのまま、できるだけ騒ぎから離れた地点を目指した。「……そういえば、さっき俺に、何か訊こうとしていなかったか」進みながら、トムはニンジャスレイヤーに問いかけた。「……ああ」「何を」 40

2020-04-18 22:56:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」沈思黙考の後、ニンジャスレイヤーは言った。「この件そのものだ」「この件?」「塔の爆破の作戦を作ってまで、お前が動く必要はなかったろう」「荷物がある」「なら、それを取ってくれば、それで終わりだ。爆破までする危険を……」「なにが危険かは、やってみるまでわからん」 41

2020-04-18 23:00:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ニンジャスレイヤーは納得していないようだった。トムは、この男の中で、なにか個人的な引っ掛かりがあるのかもしれない、と思った。そして、さほど知り合って長くない自分相手だからこそ、問いかけの中で、話を振ってきているのかも知れない、と感じた。「俺がやるべき事はわかっている」 42

2020-04-18 23:05:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何をだ」「UCAは……違うな……俺は、ネザーキョウと戦う。この場所で行われている事は、ホンノウジで体験したひどい出来事と地続きだ。ホンノウジは世界を冒涜するような場所だった。五重塔が建ち並び、名状しがたい生物が放たれていた。俺はあのタイクーンとやらの世界に呑み込まれたくない」 43

2020-04-18 23:08:47