【再放送】グッド・オーメン・フライング・クルーン 前編

劉度 @arther456

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（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい）

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　9/28

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翔鶴が鎮守府に着任してから数日が経つ。彼女に降ろされた艦は、姉妹艦の瑞鶴と共に戦い、守るように傷付き、そして沈んでいった船だ。艦娘となってもその性格は変わらず、いつも瑞鶴を第一に考えて行動している。……例えこの鎮守府に瑞鶴がいなくても。

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「瑞鶴、お勉強？偉いわねえ」隣で翔鶴がそう言っている。念の為書いておくが、私は瑞鶴ではない。翔鶴が勝手に私を瑞鶴と呼んでいるだけだ。迷惑だが、瑞鶴はいないと指摘すると暴れ出して危険だ。正規空母の力で暴走されたら誰も止められないので、しばらくは瑞鶴扱いを我慢するしかない。

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　9/29

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翔鶴のメンタルについて問い合わせたみたところ、艤装が原因かもしれないとのことで、近いうちに技師を派遣してくれることになった。「瑞鶴、ポートモレスビーに行きましょう」今日の翔鶴は南方海域の進軍作戦を提案してきた。計画書を読んでみたけれど、ちょっと杜撰で採用できない。

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「翔鶴、悪いけどこの提案は受け取れないよ。南方海域までの補給路と敵戦力を確認してみて」そう伝えると、翔鶴はとても悲しげな顔をした。「あのね、瑞鶴。瑞鶴は私のことを『翔鶴姉』って呼ぶのよ？」「何その設定」「ちゃんとして」「は、はい……」何か凄い迫力があった。

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　9/31

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技師に翔鶴姉を検査してもらったけど、艤装に問題はなかった。艦霊を降ろしたばかりの頃は情緒不安定になるからそれが原因かもしれないと言っていた。慣れれば元に戻ると言っていたけど、それまでどれだけ時間がかかるかわからない。いつまで私は『瑞鶴』を続ければいいんだろう？

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「とってもよく似合ってるわよ、瑞鶴」今日の翔鶴姉は私を弓道着に着替えさせた。それに、長い髪をリボンでまとめてツインテールにさせられた。本人が言うには、これが瑞鶴の格好らしい。……ところで、この弓道着、サイズがピッタリなんだけど、どこから持ってきたんだろう。まさか、自分で……？

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　10/2

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ようやく翔鶴姉が眠ってくれた。ここ数日、翔鶴姉は私にべったりだ。ちょっとでも瑞鶴らしくない事をするとすぐに注意される。いや、注意だけで済むならいい。体罰を加えてくることもある。ついさっきも左の小指を折られて、軍医に処置してもらったばかりだ。１日で治るとはいえ、痛いものは痛い。

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翔鶴姉が言うには、瑞鶴は朝食にご飯を食べる。瑞鶴は短距離走よりも長距離走の方が好き。洋菓子よりも和菓子の方が好き。着替える時はスカートからする。覚えることがいっぱいだ。 瑞鶴は和菓子が好きだけれど、ショートケーキは別よ？　あの子、大好きなイチゴは最後までとっておくの。

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　10/3

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大丈夫、翔鶴姉は見てない。改めて書き始める。航海日誌には鍵をつけた。これで昨日みたいに翔鶴姉が勝手に書き足したりすることはできなくなる。私は提督だ。瑞鶴をやっているのは、翔鶴姉の機嫌を取るためだけだ。それ以外の理由なんて無い。無いんだから。

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　10/6

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翔鶴姉が怪我をした。なんでも料理をしてる最中に、包丁で指を切っちゃったんだって。翔鶴姉は昔からおっちょこちょいなところがあるから不安でしょうがない。今はいつも一緒にいられるけど、私がいなくなったら、翔鶴姉、どうなっちゃうんだろう？

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『横須賀鎮守府第33地区　活動日誌』　10/7

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昨日の日誌を書いたのは、誰だ。

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「翔鶴姉、どうして外に出ちゃいけないの？」「ごめんね瑞鶴、お外には出られないの。外には怖い人たちがいるから。お家でじっとしていましょう？」「ええっ、何それ！？怖いよう……」「大丈夫よ、私が側にいるから。瑞鶴のことは私が絶対に守ってあげるから、ね？」1

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【グッド・オーメン・フライング・クルーン】　前編（再放送）

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「誰゛も゛い゛な゛い゛の゛で゛す゛！」秋晴れの空の下に、電の絶叫が響いた。電は新人の艦娘を迎えに行っていたのだが、帰ってくると鎮守府から人がいなくなっていた。正門はもちろん、宿舎にも、演習場にも人っ子ひとりいない。2

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「誰もいないみたいだけど、大丈夫なの、ここ？」電の後についてきた少女は、呆れ混じりに呟いた。ツインテールに弓道着の少女。彼女がこの鎮守府に新しく配属される艦娘だ。「大丈夫じゃないのです！皆さん、どこに行ったのですか……？」電は涙目になりながら鎮守府をくまなく探す。3

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探し回って30分、ようやく電は人だかりを見つけた。工廠前に大勢の艦娘やスタッフ、警備兵が集まっている。電は不思議に思った。工廠はこんなに人が集まる場所ではないし、全員武装していて妙に重々しい雰囲気だ。電は人だかりの中から薄紫色の少女を見つけ出すと、呼びかけた。4