「黒い水脈」の出典について(情報募集中)

しばしば耳にする割に実は出典不明なフレーズ「黒い水脈(みお)」について。常時情報募集中です! TL(2011/06/15深夜現在)での結論は、「黒い水脈」というフレーズについては中井英夫のエッセイが確認できる最古のもの。しばしば名の挙がる斎藤愼爾と埴谷雄高については「夢野・小栗・中井」といった挙げ方はしているものの「黒い水脈」というフレーズは見つかっていない(埴谷は全集に記載なし)。といったところのようです。 (ちなみに「四大奇書」の出典については http://togetter.com/li/33237 の最後のあたりに詳しいので興味のある方はこちらもどうぞ)
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原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(4)笠井潔『探偵小説論1』、第二章で埴谷が「署名本」(講談社「群像」1993.9)で、戦時中の大井広介・坂口安吾・平野謙・荒正人ら「現代文学」のメンバーが探偵小説マニアであったので、『不連続殺人事件』や『野球殺人事件』が生まれたと書いていることを紹介。

2011-06-18 00:47:56
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(5)笠井潔『探偵小説論I』、第八章戦後探偵小説の内破で、中井論を展開、「黒い水脈」の出典への言及はなし。『探偵小説論II』東京創元社67頁に「黒い水脈」の言葉が見られ、68頁に「埴谷による論」とある。60年代後半に「黒い水脈」論的見方が確定したらしい。

2011-06-18 00:58:51
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(6)山路龍天・松島征・原田邦夫『物語の迷宮』創元ライブラリ、帯文に「夢野、小栗、中井……「黒い水脈」の魅力を<読む(レクチュール)>日本の探偵小説論の白眉」との笠井潔による推薦文あり。相変わらず、出典の明示なし。

2011-06-18 01:03:09
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(7)笠井潔編『本格ミステリの現在』国書刊行会、笠井潔はまえがき20頁で「暗黒の断層」という云い方をしている。収録論文、千街晶之「尾を喰う蛇は<絶対>を夢見る」で、『匣の中の失楽』には三大ミステリの他、『死霊』の影響もあることを書いている(33頁)。

2011-06-18 01:10:35
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(8)埴谷雄高『埴谷雄高文学論集』「ポオについて」を収録しているが、「黒い水脈」への言及はない。鶴見俊輔『夢野久作 迷宮の住人』、「黒い水脈」への言及はない。万事窮す、か。

2011-06-18 01:15:33
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」の出典について(9)教養文庫異色傑作選ロマンの饗宴のちらしにも、埴谷の言葉は載っていない。三一書房のちらし、全集の月報の類いが怪しいが……。

2011-06-18 01:35:14
原田 忠男 @harapion

「黒い水脈」問題。確か、三一書房の中井英夫全集の広告パンフに、埴谷の文章が載っていたと記憶しますが、見つかりません。 しかし、見つかったとしても、70年代の広告ですから、意味がありません。 60年代の出版広告の類いが怪しいと思うのですが。

2011-06-18 02:12:27
原田 忠男 @harapion

承前。埴谷は、ドストエフスキーの影響の強い作家です。これは拡大解釈ですが、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を、広義のミステリーに分類する論者もいるようです。

2011-06-18 02:13:08
原田 忠男 @harapion

承前。ドストエフスキーを、実存主義文学の先駆とすると、あと同系列の作家として、澁澤龍彦が紹介していたような西欧の異端作家やオカルティズム文献もまた、実存主義文学の先駆、西欧文化の地下水脈となります。

2011-06-18 02:13:47
原田 忠男 @harapion

承前。埴谷による位置づけも、このようなものではなかったかと思います。黒い水脈も、キーワードというように固定した概念というより、西欧のアンダーグラウンド文学の系譜に繋がるという位置づけではないかと思うのです。

2011-06-18 02:14:19
原田 忠男 @harapion

@huyuta  問題となっている三一書房版中井英夫集のパンフhttp://t.co/SfLB4dXの埴谷雄高の推薦文ですが、見つかりましたので、要点だけ書きます。1.二十年近く前に、大岡昇平・丸谷才一との対談の際に、日本の探偵小説ベスト5に『虚無』を入れたこと。

2011-06-20 22:23:38
原田 忠男 @harapion

@huyuta 2.乱歩・虫太郎・久作・十蘭の系譜が、現在中井のみに継承されている。このことは淋しいことだが、逆から言えば、文学の幅が衰弱しきっていないともいえる。こんなことを言っています。黒い潮流という言葉は文中にありません。このパンフは1986年初頭のものです。

2011-06-20 22:29:14
原田 忠男 @harapion

@huyuta 朝日新聞1967.6.23埴谷雄高「『虚無への供物』―中井英夫」(『幻視の詩学』128~129頁に収録)論旨:社会派隆盛だが、推理小説は「つくりもの性」から脱することはできず、『虚無への供物』はその中で論理的徹底性で突出している。「黒い水脈」の文字はなし。

2011-06-22 07:06:44
パソコン嫌いの高齢者 @liedansich

@harapion 見つかりましたか! お知らせありがとうございます。大岡・丸谷との対談については知り合いから「黒い水脈」や「奇書」のフレーズはなかったと聞いていますが、ちょっと確認してみます。新聞は今週中に見てみる予定でした。結果はまたお知らせします。何とか見つけたいところ!

2011-06-20 23:11:58
真悠信彦 @nukuteomika

@huyuta 初出は1980年「中央公論」夏季臨時増刊号

2011-06-20 23:41:03
真悠信彦 @nukuteomika

@huyuta 『覚醒と寂滅 埴谷雄高対話集』(未来社)収録の座談会「推理小説の魅力」(丸谷才一・大岡昇平、1980年)で、推理小説ベスト5中に三大奇書を挙げています(ただしそれが「三大奇書」であることや『匣の中の失楽』への言及はなし)

2011-06-20 23:30:22
真悠信彦 @nukuteomika

@huyuta この座談会で大岡昇平が笠井潔の『バイバイ、エンジェル』(79年)を挙げてるからこれの記録の間違いということはなさそうだけど、前に同じ座談会をしたという様子でもない

2011-06-20 23:55:54
パソコン嫌いの高齢者 @liedansich

@harapion ありがとうございます。「黒い水脈がらみ http://t.co/0vjBmnv」←こちらを見て、『虚無』乱歩賞応募年の『文藝年鑑』(埴谷が1年の総括担当)を見ましたが、言及なし『虚無』出版年の『年鑑』内の推理小説総括にも「水脈」なし(『虚無』は言及)でした。

2011-06-22 23:20:49
パソコン嫌いの高齢者 @liedansich

@harapion 一つ以前のtweetで確認したいのですが、「1986年初頭の三一書房版中井英夫集のパンフにて、二十年近く前に埴谷・大岡・丸谷対談」とのことですが、この対談は(続く)

2011-06-22 23:25:35
パソコン嫌いの高齢者 @liedansich

@harapion (続き)http://t.co/hiwDaD6 にある【「中央公論」夏季臨時増刊 昭和55年8月10日】のことではないでしょうか。この内容は友人@nukuteomika経由で別書『覚醒と寂滅』の記述と一致することを確認済みです。何らかのミスではないでしょうか?

2011-06-22 23:28:27
原田 忠男 @harapion

@huyuta @nukuteomika 手元にあるのは、表面に中井英夫作品集・全十巻別巻一・三一書房、裏面に第一回配本I流刑一九八六年四月刊行、第二回配本III変身一九八六年六月刊行と書かれたパンフレットです。この作品集はX死を所持していますが、奥付に一九八七年六月とあります。

2011-06-22 23:47:37
原田 忠男 @harapion

@huyuta @nukuteomika ゆえに、パンフの一九八六年というのは誤植ではないと考えられます。年代確定のため、正確さを必要とするようです。学術目的につき埴谷氏の推薦文を全文引用します。「二十年近く前、私は『虚無への供物』を推賞し、また、数年前、大岡昇平、(→続く)

2011-06-22 23:52:48
原田 忠男 @harapion

@huyuta @nukuteomika (続きから)丸谷才一、私との鼎談で、吾国における探偵小説のベスト・ファイヴに『虚無への供物』を私はあげているが、しかし、中井英夫の文学の独自性は『虚無への供物』一冊に尽きるものではない。嘗て、乱歩、虫太郎、久作、十蘭と続いて文学の(続く)

2011-06-22 23:59:29
原田 忠男 @harapion

@huyuta @nukuteomika (続きから)幅を拡げてきた系譜が、現在、中井英夫のみにみられるとは淋しいことであるが、しかし逆にいえば、まだ中井英夫によって、吾国の文学の幅が衰滅しきらず、幸福にも保たれているのだともいえるのである。」

2011-06-23 00:03:45
原田 忠男 @harapion

@huyuta @nukuteomika 推賞と鼎談は、別タイミングですね。混乱を招いてしまい、申し訳ありません。鼎談の方は、【「中央公論」夏季臨時増刊 昭和55年8月10日】のことなのでしょう。推賞は1967年の朝日新聞のことなんでしょうか。

2011-06-23 00:07:30