ルイ・メナンド『メタフィジカル・クラブ』読書メモ集
- arishima_takeo
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メナンド『メタフィジカル・クラブ』。ルイ・アガシの人種差別主義を支えていたのが、人類の単一起源説ではなく多元発生論だったというのは興味深い。単一説では人種に差は退化の程度によって説明されるが多元説では差異の背後に創造主の意図を深読みできる。アガシはアーノルド・ギヨーの友人でもある
2020-04-19 13:25:30政治熱が高まりを見せだすと、奴隷制は独立宣言の精神を冒漬するものではない、なぜならばジェファーソンの使った「万人(all men)」という表現は、科学的に言えば黒人を対象に含むものではないのだから、という見解に支持を与えるために、多元発生説が引かれるようになった。byメナンド
2020-04-19 13:34:09「動物学と解剖学への関心は続き、一八六五年、アガシがブラジル旅行の志願者を募集しはじめると、ジェイムズはこれに応募した」(メナンド『メタフィジカル・クラブ』)。え、ジェイムズってそんなことやってたの?
2020-04-19 13:50:05『種の起原』のねらいは、進化概念の導入ではない。それがめざしていたのは、超自然的な知性という概念ーー宇宙は一個の観念の所産であるという観念ーーの誤りを暴き出すことだった。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-19 13:52:46『種の起原』に関してラディカルだったのは、それが進化論的だったことではなく、唯物論的だったことである。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-19 13:53:48「ベンジャミン・パースは南部に友人をもっておりーー戦前彼はジェファーソン・デイヴィスの文通相手だったーー、奴隷制は全く正当であるという信念をもっていた」(メナンド『メタフィジカル・クラブ』)。へぇー。
2020-04-20 15:03:52「パリと言えば人が恋に落ちる場所である。アドルフ・ケトレーは曲線と恋に落ちたのだった」(メナンド『メタフィジカル・クラブ』)。うまいこというな。
2020-04-21 14:34:45「「統計学」という言葉は、語源において「国家」と結びついている。統計学者たちのまたの名は「国家統制主義者」であったし、ドイツ語の統計学という語が採用されるまでは、その仕事は英語では「ポリティカル・アリスメティック(政治的算術)」と呼ばれていた」(メナンド)。へぇー。
2020-04-21 14:36:29「ある者などは、「平均的なヨーロッパ人の小便」を確定しようとして、多くの国籍からなるヨーロッパ人たちが通る、とある駅の小便器から取り出したサンプルを分析したりした」(メナンド『メタフィジカル・クラブ』)。研究熱心だな。
2020-04-21 14:41:18確率ーー誤差の法則ーーは、私たちの無知を定量化する道具である。それは、事象そのものにではなく、私たちが事象を把握する際にともなう確実性の度合いにかかわっている。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-21 15:01:34手短に言えばライトは、ダーウィンと同じことを考えていた一九世紀ダーウィニアンの少数派の一人であり、進化による変化と進歩を混同することのなかった数少ない進化論者の一人だった。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-21 15:35:07(ヴェブレンの問題は少々異なっていた。彼の性的逸脱の記録は、チャールズ・パースのそれを陰に追いやるものだった。彼は、同僚の妻たちと枕を交わす習慣をもっていたが、同僚の妻たちはヴェブレンの魅力には抗えなかったようだと報告されている)。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-23 06:49:31ジェイムズにとって、ヘーゲルほどに深い嫌悪をもよおさせられる哲学者は他に(ショーペンハウアーは例外だったかもしれない)いなかった(ハーバート・スペンサーはについては、哲学者を知らない人びと相手の書き手だと、彼はみなした)。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-27 17:46:11プラグマティズムは、思想についてのすべてを説明する。しかしそれは、一人の人間が別の誰かのために喜んで死を選ぶ、ということが起こりうる理由を除けば、の話である。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-04-29 14:30:29学問の自由は、ある社会集団の意向にしたがって享受される特権である。学問の自由をめぐる闘争は、実際には、その社会集団のあり方をいかにして定めるかをめぐる闘争である。結局のところそれは、誰が決めるかということにかかっているのである。byメナンド『メタフィジカル・クラブ』
2020-05-03 13:46:06「南北戦争が彼らに与えた教訓の一つである。彼らの哲学が支持しようと意図していた政治システムは、民主主義だった。そして民主主義とは、彼らが理解するかぎり、正しい人びとだけでなく、間違いを犯した人びとに対しても発言のチャンスを与えようとするシステムである」(メナンド)。重要な指摘。
2020-05-03 14:06:49ルイ・メナンド『メタフィジカル・クラブ』読了。読み終わるのに随分時間をかけてしまったが充実の読書だった。パース、ジェイムズらプラグマティストを生み出した形而上学クラブ。本書は彼らの父親世代からデューイの後続世代までの思想群像劇を豊かな学識とともに描き出す。
2020-05-03 14:18:16特に、その形而上学批判(言葉の意味分かって使ってるの?)が、奴隷制の是非が争われていた南北戦争、さらにはそこに潜んでいたルイ・アガシに代表される人種差別思想との緊張関係で成り立っていたことを分析する筆致には、通りいっぺんのプラグマ解説本にはない貴重なドラマがある。
2020-05-03 14:24:26これを読むとシェリル・ミサックのプラグマ理解にはやはり首をかしげる。例えば、ミサックは多元主義はどう評価するのだろう。パース(真理の単一性)に固執するのなら、これもまたプラグマの歴史から削除するのが吉だと思うが、それってプラグマティズムという思想にとって豊かなことなんだろうか。
2020-05-03 14:31:17メナンド本では、多元主義、そしてこれに連絡した民主主義論や可謬主義がポスト南北戦争というアメリカ固有の時空的条件のなかで読み解かれていく。が、分析哲学からプラグマをつづめようとするとそういった歴史性を捨象せねばならない。捨象してもいいけど、「で?」って感じがする。
2020-05-03 14:37:39一応断っておくけど、分析哲学が悪いって言ってるんじゃないよ。分哲は分哲で完成されてるんだから、わざわざプラグマティズム史を一新するみたいなプロジェクトに手を出さなくてもいいんじゃないのっていう感想。
2020-05-03 14:39:49