ナラク・ウィズイン#10

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アブナイ！」ケイトー・ニンジャはブリッジ姿勢で三枚刃ダイシュリケンを躱した。「もうやめないか！我らは話し合うべき……」「イヤーッ！」退路を断つように現れたのはディスバンド！ケイトーは顔をしかめた。「エート、君はどちら側だったか……」「イヤーッ！」ディスバンドは両手を切り離す！45

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

離れた手首は有線ケーブルで繋がっており、電熱を発しながらケイトーの斜め後方へ飛ぶと、そこからスリケンを投擲した。「イヤーッ！イヤーッ！」「ヤメロ！」ケイトーは身を躱した。「クウッ……親王め、思いがけぬカラテを私にふるいおって……からに！イヤーッ！」緋の稲妻！「アバーッ！」　46

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

帯電し、口から焦げた煙を吐いて痙攣するディスバンドを尻目に、ケイトーはダイシュリケンをキャッチしたトリリウムに向き直った。「考え直し給え。君には私との未来があるやも」「ほざけ親王の敵！イヤーッ！」「イヤーッ！」ケイトーはトリリウムの顔を掴み、緋の稲妻を流し込んだ！「サヨナラ！」47

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おの……れ」「イヤーッ！」ディスバンドをカイシャク！「クケェ……全くどうしようもない連中めが……」ケイトーはギンカク・オベリスク方向の地響きを見上げ、息を呑んだ。ゴバッ……ゴバババッ……DOOOOM……崩れゆく崖、立ち上る粉塵！鈍色の水晶は再び土の中に帰ってゆく！「ああ、あ」　48

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ケイトーは頭を掻いた。「まいったな。ナラク・ニンジャはどうなった！？まだ打つべき手があるようにも思える……しかし……」「イヤーッ！」崩落する崖から回転ジャンプし、着地したのはニンジャスレイヤーであった。ケイトーは目を剥いた。「……ニンジャスレイヤー」「……」「君、勝ったのかね」49

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはケイトーを睨んだ。「矢を見たか。貴様」「矢？あ、ああ、無論だ！」ケイトーの頭の周りを緋の稲妻が走った。「あれはね、タイクーンの大陸間弾道兵器で、天下布武……」「ネオサイタマはどうなった」「……それは……ふむ」ケイトーは唇に指を当て、高速思案する。　50

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「君は今、非常に重大な局面にいる」ケイトーは真剣な顔になった。「私の助言に従えば、うまくいくやもしれんぞ、ニンジャスレイヤー君。君は……」「……」ニンジャスレイヤーは一歩踏み出した。凄まじい眼光。赤黒。ケイトーは上で起こった全てを悟った。ニンジャスレイヤーの両手に黒炎が燃える。51

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……！」ケイトーは一歩後ずさった。そして我に返る。「ク……クキキィ……アハア、アハア！ちと、虫の居所が悪いかね。私も万事、計算通りだが、無傷とはいかんものだ、ここはひとつ、君の目的達成に免じて……イヤーッ！」SMACK！稲妻を足元に叩きつける。粉塵の陰に隠れ、ケイトーは退散した。52

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAACK……KRAAAACK……「アバーッ！」崩落する崖、降り注ぐ岩に、あい争っていたゲニンが押し潰され、逃げ惑うなか、ニンジャスレイヤーは火のような速度で走り出した。　53

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「イヤーッ！」「グワーッ！」足元を掬われたアカゾナエ・ゲニンが倒れ込んだところを、トムがハンドガンを撃ち込み、トドメを刺す！「アバーッ！」その後ろでは、「ハイハイッ！ハイヤーッ！」「グワーッ！」連続カンフーを受けたゲニンが池に転落し、人食い鯉に生きたまま食われた！「まあ！」54

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんなものが！」走りきたコルヴェットが凄惨な捕食光景に打ちのめされた。コトブキもショックで顔に手を当てていたが、我にかえり、「コルヴェット＝サン！良かったです！」と声をかけた。「うむ。状況はどうなっておるかね」「それが、タキ＝サンの通信が途絶しているんです」「やはりか……」 55

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「空に映った顔や、さまざまな不穏な宣言……」「ああ。始まったんだ」トムは暗い顔で頷いた。「ニンジャスレイヤー＝サンはどうなった。コルヴェット＝サン」「戦っておる」コルヴェットは答えた。「だが、必ず状況を制する筈だ。具体的な材料があるわけではないが、信じるほかない」「そうか」　56

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らは渡り廊下を駆け抜けた。このままゴマグラウンド方向へ抜ければ、合流地点に辿り着く。「怪我はないかね」「フィルギア＝サンとザック＝サンが心配です。通信がうまく出来ないものですから……」コトブキは表情を曇らせた。「タイクーンのせいですよね？ファック野郎です」　57

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「デアエ！デアエ！」後方から追いくるゲニンの叫び。BRATATAT……しんがりを行くトムは後方に威嚇射撃を行う。「急げ！」彼らはシンデンヅクリ・パレスの門を越え、湿地に走り出た。ブオウー……。法螺貝の音が霧の向こうで聞こえ、松明の火が揺れた。「ここにも敵兵」コルヴェットは顔をしかめた。58

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

霧の中から進み出たゲニン騎兵が、ライフル銃を彼らに向けた。「怪しい奴！デアエ！」その時だ！「イヤーッ！」「アバーッ！」ウォルルルル！横から走りきたモーターサイクルが体当たりで騎兵を吹き飛ばしたのだ！「あッぶねえ！」叫び声をあげたのはバイクに乗るフィルギアにしがみつくザック！　59

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドルルルル！フィルギアがバイクをドリフトさせると、ザックは後ろで振り落とされまいと必死でしがみついた。そして言った。「コ……コトブキ姉ちゃん！姉ちゃんのバイクだぜ！」「済まんね。先に借りてきたほうが早いと思ってさ」フィルギアが言った。「塔の組、全員いるか？後は……」　60

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤア！ヤアーッ！」ダカダッ！ダカダ！ダカダ！ゲニン騎兵が続々と霧の中から走り出、そのままコトブキ達の横を走り抜け、ゴマグラウンド方角へ向かっていく。「……助かったか」フィルギアが呆気に取られた。「敷地から出るなり、この霧だからな」「おかげで身を隠すにはいい」トムが言った。　61

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、「デアエ！？」「デアエ！」彼らを見咎め、立ち止まる者もいる！方向転換して向かってくる槍ゲニン集団！「イヤーッ！」ゴアアアオオオオン！そこへ凄まじい排気音が鳴り響き、「アババーッ！」彼らを轢き殺しながら、シグルーンに乗ったニンジャスレイヤーが到着した！　62

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アニキ！」「ニンジャスレイヤー＝サン」ザックが歓声をあげ、コトブキが駆け寄る。「乗れ。おれは走る」ニンジャスレイヤーはシグルーンを飛び降り、コトブキに譲った。「ここを離れるぞ。もう、用はない」カーン！カーン！ゴマグラウンド方向から半鐘の音が聞こえる。混乱だ。　63

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やった、わけだな？」コルヴェットはニンジャスレイヤーに問うた。「ああ」ニンジャスレイヤーは頷いた。「手間をかけさせられた」彼は己の胸に手を当てた。……ナラクは再び、彼の内に在る。　64

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「ヌウッ……！」「お体に障ります、殿下！」「ここは……ワシは……貴様は」「リキッドでございます、殿下」洞穴の入り口で、ジョウゴは目覚めた。彼の傍らにはリキッドが跪いている。外にはバラバラになった青銅の甲冑があった。「殿下のカゲムシャ馬にございました」　65

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジョウゴは己を認識し、全身の火傷から記憶を遡る。屈辱、敗北感、そして……ランマルが語りし真実。「リキッドよ」「は」「貴様は忠義深きニンジャであったな」「……無論にございます」「……」ジョウゴは凝視する。試金石。この者がついて来ぬなら、どのみち終わりだ。彼は口を開いた。「聞け」66

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ヘラルドは目覚めた。荒れ果てたゴマグラウンドで、彼は仰向けに倒れていた。砕けた岩の狭間で、彼は誰何されることなく、意識を失っていたようだ。空には満天の星空があった。星座たちが彼を冷たく見下ろしている。「……」ヘラルドは胸に手を当てた。エメツがあった場所に、塞がった傷がある。67

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……！？」ヘラルドは起き上がった。胸の傷はひどい火傷の痕だった。頭痛が走り、断片的な記憶を彼のニューロンに連れてきた。燃える闇の中、独り苦悶し、呻き、火に焼かれながら叫ぶ彼のもとへ現れ……そしてその苦しみから解放し、助けた男の影を。（返してもらうぞ）　68

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤー。ヘラルドのローカルコトダマ空間に、渦巻く闇に踏み入り、ケイトーが植え付けた炎を打ち払い、去っていった。「……」ヘラルドは呆然として、震え、そして首を振って、つぶやく事しかできなかった。「私……。……俺は……」　69