繋ぐ本、繋がった君

目立たない文学少年と人気者美少女との、とある恋のお話
0
@Oboro_sakamichi

1 〇〇:ふぅ… 今しがた読み終えた本を机の上に置く。 〇〇:あ、雨降ってる… 図書室の窓には、ぱらぱらと降り出した雨の雫が付いていた。

2020-05-11 09:55:10
@Oboro_sakamichi

2 〇〇:これから強くなるかな…今日は早めに帰るか 図書委員の〇〇、本当は最終下校まで残るのが規則なのだが、普段図書室を利用する人などおらず、〇〇は好きな時間に帰っていた。 図書室に鍵をかけ、正面玄関へ。

2020-05-11 09:58:30
@Oboro_sakamichi

3 靴を履き替え、昇降口から外に出ようとした時、 ?:嘘…傘持ってへん、どないしよ… 隣から女の子の声が聞こえた。 〇〇が隣を見ると、そこには1人の女子生徒が。 すると彼女はこっちを見て ?:あ、あーこのままやと濡れて帰らなあかんなー、誰か傘貸してくれへんかなー?

2020-05-11 10:03:35
@Oboro_sakamichi

4 明らかな棒読みでわざと聞こえるように言う彼女。 それを無視できるほど、〇〇は冷たい人間ではなかった。 〇〇:…良かったら、これ使って と、彼女に傘を差し出す。

2020-05-11 10:06:24
@Oboro_sakamichi

5 ?:ほんまに!?ありがとう! さっきの棒読みとは一転、彼女は声を弾ませた。 ?:あ、でも君の分が… 〇〇:僕は職員室で借りるから

2020-05-11 10:08:09
@Oboro_sakamichi

6 そう言って〇〇が校舎の中に戻ろうとすると、 ?:待って! 彼女が〇〇の右腕を掴んだ。 〇〇:なに? ?:その…一緒に、入らへん?

2020-05-11 10:10:01
@Oboro_sakamichi

7 〇〇:は? ?:だから!2人で帰ろうって言ってんの! …突然何を言い出すんだこの子は。 〇〇:僕君のこと知らないんだけど ?:うちは君のこと知ってるで?〇〇君 pic.twitter.com/fFiDxjl0tA

2020-05-11 10:14:54
拡大
@Oboro_sakamichi

8 ?:なぁ、あかん…? 上目遣いでそう聞く彼女に、〇〇は折れた。 〇〇:わ、分かったよ…//

2020-05-11 10:19:16
@Oboro_sakamichi

9 そして今、〇〇は人生で初めての相合傘をしている。 彼女の名前は小坂菜緒。聞けば隣のクラスに転校してきたらしい。「学校一の美少女!」と噂されていたようだが、〇〇には興味がなかった。 pic.twitter.com/Ea0mM88GBA

2020-05-11 10:22:07
拡大
@Oboro_sakamichi

10 〇〇:それで、そんな人気者さんがどうして僕のことを知ってるの? 菜:だって、図書室で本借りた時に名札見たもん 〇〇:あ、そう 菜:自分から聞いといて冷たいなぁ…

2020-05-11 10:25:32
@Oboro_sakamichi

11 菜:なぁ、〇〇君は本が好きやから図書委員になったんやろ? 〇〇:そうだね 菜:じゃあ、菜緒におすすめの本紹介してや! 〇〇:えぇ…

2020-05-11 10:31:11
@Oboro_sakamichi

12 菜:ええやろ?ほな決定! 〇〇:やるとか一言も言ってないんだけど? 菜:あかんの? 〇〇:…別に良いけど

2020-05-11 10:32:29
@Oboro_sakamichi

13 菜:やった! そうこうする内に、菜緒の家に着いた。 菜:あ、着いた!ここが菜緒の家やで! 送ってくれてありがとう😊 約束、忘れんといてな! 菜緒は家の中へ入っていった。 〇〇:約束って、そっちが一方的に…

2020-05-11 10:35:28
@Oboro_sakamichi

14 〇〇:はぁ…帰ろう 次の日、〇〇がいつものように本を読んでいると ガチャッ と、図書室のドアが開いた。 菜:〇〇君!

2020-05-11 10:37:54
@Oboro_sakamichi

15 〇〇:本当に来たんだ 菜:そりゃ約束したから来るやろ笑 ほんで、選んでくれた? 〇〇は隣に置いてあった本を渡した。 菜:これ…恋愛小説?

2020-05-11 10:40:36
@Oboro_sakamichi

16 〇〇:そうだよ 菜:ふーん、じゃあとりあえず読んでみる そして、菜緒は貸し出しカードに名前と題名、日付を書いて、図書室を出ていった。 〇〇:さて、続き読むか…

2020-05-11 10:43:14
@Oboro_sakamichi

17 また次の日 菜:失礼しまーす 菜緒がやってきた。 菜:〇〇君、これ! そう言って、昨日借りた本を差し出す。

2020-05-11 10:45:12
@Oboro_sakamichi

18 〇〇:もう読んだの? 菜:うん!なぁ次の本は? 〇〇:え?選んでないよ… 菜:なんで! 〇〇:なんでって…

2020-05-11 10:46:58
@Oboro_sakamichi

19 菜:じゃあ今選んで! 〇〇:(強引だ…) そう思いながらも、一冊の本を手渡す。 菜:ありがと! そして菜緒は去っていった。

2020-05-11 10:50:02
@Oboro_sakamichi

20 〇〇:ったく、強引だな… 不満を漏らし、本を戻そうとした時、本から1枚の紙がひらりと落ちた。 〇〇:これは…? その紙には「すっごく面白かった!また次の本も選んでな!菜緒」と書かれていた。

2020-05-11 10:52:34
@Oboro_sakamichi

21 〇〇:…まぁ、別に良いけど 〇〇は本を戻し、次に渡す本を選び始めた。 そして 〇〇:次はこれ 菜:分かった!読んでみるな!

2020-05-11 10:55:27
@Oboro_sakamichi

22 ー菜緒の家ー 菜:さ、早く読もうっと…あれ? 菜緒が本を開くと、そこには1枚の紙が。 「感想ありがとう。この本も面白いから、ぜひ読んでみて。〇〇」 菜:ふふっ、可愛いなぁ 菜緒は微笑み、本を読み始めた。

2020-05-11 11:04:27
@Oboro_sakamichi

23 それから、〇〇は本のおすすめポイントを、菜緒は本の感想を書いて本に挟むというやり取りが始まった。 初めは感想だけだったが、ある時からそこに会話も加わった。 本で会話するという奇妙な関係。 しかし、〇〇にはこの関係が心地よかった。

2020-05-11 11:09:29
@Oboro_sakamichi

24 そんな関係が始まって3ヶ月と少し。 〇〇が菜緒に選んだ本は99冊、次で100冊目だった。 菜緒:〇〇!来たで〜 〇〇:はーい このやり取りも慣れたものだ。 〇〇:じゃあ、今回はこれね 菜:分かった!

2020-05-11 11:14:26
@Oboro_sakamichi

25 いつもならそれで菜緒が帰って終わり。だが、今日は違った。 菜:なぁ〇〇、ちょっと喋らへん? 〇〇:喋るって、いつもやり取りしてるじゃん 菜:細かいこと言わないの! 〇〇:(理不尽だ…)

2020-05-11 11:17:05