【愛しのハナ】福間健二 ‪#k2fact257‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

福間健二 @acasaazul

あと、ザーッと掃除機かけて、洗濯物畳んで、怒る打楽器片付けたら。でも、大改造は。反射熱、周波数、きみの期待どおりではない。もうあいている飲み屋もないしね。晩ごはんなら、きのうのタラとジャガイモが残ってるけど。抒情詩を採集しようと空を見た。月がいない。（愛しのハナ１）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

いないけれど、アネ。亡くなったけれど、アニ。発音する唇がやわらかいことに気づいて、ミルクと砂糖を入れたコーヒー。許された十五分を引き返すために使う。使いきる。ミルキー、網入りガラスごしの白い雲に羊の家族を思うためでもいい。きのうは金星もいなかった。（愛しのハナ２）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

なんとかしなければ。ハナは思う。うれしい便利さがいつのまにか通りすぎた町の、二十歳。何に塗る。老いたエクスプレスには間に合うとしても青が足りない。そうだろうか。サナギの羽化するところは見逃して当たり前。動作、言い方、瞬き、花を感じての顔は生きてくる。（愛しのハナ３）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

いまこそ、名作に退屈する。こぼれる粒たちを拾って、重くならないことだ。無用の、省。なにか黒く飛ぶその軒下で仮定法を使う。遮光性のささやき。人間をやめるとしたら、であって、人間をやめるとは言ってない。風がうなり、靴の紐がほどけている。しゃがむ必要がある。（愛しのハナ４）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

片付け作業で見つかったリリカル・バラード。真実を見えなくするものかもしれない。いつのまにか滲んでいる蛇口付近の澄んだ目。だれかの弟子。だれかの便利な道具。そうであるしかなくて、思い出すのもつらいけど、最後の日記を何度も書いた。そのたびに傘をだめにして。（愛しのハナ５）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

なんとなく現れてはすぐにまた消える。そのうち、もう現れなくなる。自分のことを話さない男。水瓶座。財布に折りたたんだメモ。黄ばんだ新聞の切り抜きも。高校生の投書。人生相談だったかもしれない。別の男の財布だったかもしれない。似たような男。似たような消え方。（愛しのハナ６）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

前があり、あとも長い。どうしても合わない人が。そういう相談。時間が。環境の変化が。意外ではない出発が。そういう回答。公民館の裏あたり。だれもが少しは発情してなにか踏みにじる。メイやヒマリはよく覚えていないらしい。二〇二〇年の春ごろ、地球がどうだったか。（愛しのハナ７）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

一位はメイ。二位はヒマリ。ハナは三位。二〇一九年に生まれた女子の名前。平成が終わり、令和になっても、余裕のない対症療法。人ひとりの、内側の闇を含む全体を見ない統計と分類で歌えるのか。脱いだもの畳まない社会の、それから。代わりの代わりの、自信のなさなど。（愛しのハナ８）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

いまは、いつなのか。人類の、未解決の問題が、さらに複雑に行きどまりをつくり、元捜査官でなくても空中に突きだした長い階段を降りなくてはならない夜。危ないから、いいと言ったのに、ハナが途中まであがってきて泣いている。裏切った男たち、痛い目に合わせたよ。（愛しのハナ９）#k2fact257

福間健二 @acasaazul

ニュースで見たのとはちがう。コミュニケーションも、監視も。人々が急に現れて、四方からそれぞれいくつもの目に見られた。だが、ここ。操る者たちの意向で動くふりして先まわりした。三十歳の、これからの抒情。離れているけど、月と金星が出ている地球の浜辺の夜だ。（愛しのハナ10）#k2fact257