「輸送体の構造解析とその進展」第1回

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HattoriM @HattoriM

それでは、なぜ、当時タンパク質の立体構造解析数が指数関数的な上昇を見せつつある中、膜タンパク質の構造解析例は限られた状況にあったのでしょうか。#memstruct

2011-06-20 13:38:05
HattoriM @HattoriM

これには大まかに分けて3つの理由があります。理由1. 可溶化後の安定性の低さ 理由2. 結晶作成が困難 理由3 組み換えタンパク質としての試料調製ができない、というものです。#memstruct

2011-06-20 13:39:28
HattoriM @HattoriM

「理由1. 可溶化後の安定性の低さ」についてですが、膜タンパク質を構造解析するためには、膜に埋まった膜タンパク質を界面活性剤を用いた可溶化、精製を行う必要があります。#memstruct

2011-06-20 13:40:57
HattoriM @HattoriM

が、脂質中と比べ、界面活性剤中の膜タンパク質は低い安定性を示し、凝集、沈殿を起こしやすい傾向にあり、そのような試料は構造解析に不適です。#memstruct

2011-06-20 13:41:10
HattoriM @HattoriM

この問題に対しては、経験則およびトライ&エラーを通して、安定性を確保できるような界面活性剤を多数の候補の中から探索する、といったようなことが解決策の一つです。ちなみに、結構たいへんらしいです #memstruct

2011-06-20 13:42:05
HattoriM @HattoriM

理由2. 結晶作成が困難であるという問題ですが、これについては結晶構造解析に限った話です。疎水性領域に富んだ膜タンパク質の膜貫通ドメインは結晶成長に寄与しない傾向にあるということです #memstruct

2011-06-20 13:44:10
HattoriM @HattoriM

そのため、たとえ、安定な精製試料の調製が出来たとしても、結晶構造解析に十分な質の結晶作成へとつながらないことが多いということです。だから、結晶が出来たからといて素直に喜んではいけないわけです(実体験ではないですよ)#memstruct

2011-06-20 13:45:12
HattoriM @HattoriM

この問題に対する方法としてはたとえば、対象とする膜タンパク質に対する抗体と一緒に結晶化することで、結晶化に寄与する可溶性の領域を増やすというものがあります。#memstruct

2011-06-20 13:46:51
HattoriM @HattoriM

膜タンパク質の構造解析へ抗体を利用した最初の例は1995年にすでに報告されています。この著者の名前を聞いたことがある人もいるかもしれません http://1.usa.gov/lLSIGo #memstruct

2011-06-20 13:49:25
HattoriM @HattoriM

「理由3 組み換えタンパク質としての試料調製ができない」についてですが、チャネル、トランスポーターのほとんどは、生体内に豊富に発現していないため、試料を調製するためには、組み換えタンパク質として発現、精製させる必要があります。#memstruct

2011-06-20 13:50:43
HattoriM @HattoriM

実際、前述のようにその当時すでに多くの膜輸送体遺伝子はクローニングされていたため、組み換えタンパク質として「発現トライアル」を行うこと自体は可能でした。#memstruct

2011-06-20 13:51:21
HattoriM @HattoriM

が、膜タンパク質は可溶性タンパク質と比べ、組み換えタンパク質として発現させた場合でもその発現量が非常に低い傾向があります。可溶性タンパク質よりも桁が1つか2つオーダーの発現量というところです。#memstruct

2011-06-20 13:51:58
HattoriM @HattoriM

じゃあ100倍培養したらいいじゃないか、という声もあるかもしれませんが、また、その発現したタンパク質についてもその安定性が低いことが大半です。 #memstruct

2011-06-20 13:52:56
HattoriM @HattoriM

あと、通常の100倍(数百リットル?)量の培地を日常的に使ったら、ラボが潰れる可能性があります。。。#memstruct

2011-06-20 13:53:13
HattoriM @HattoriM

そのため、さきほど「当時比較的短期間で構造解析が可能な時代が到来しつつ」といいましたが、その前提条件である「構造解析に適した安定なタンパク質試料の大量調製」が、膜輸送体の構造解析においては達成できていなかったのです。#memstruct

2011-06-20 13:54:04
HattoriM @HattoriM

実際、膜タンパク質、とくにアルファへリックス型膜タンパク質の当時の成功例はすべて組織からの直接調製されたnon-recombinant proteinによるものでした #memstruct

2011-06-20 13:54:46
HattoriM @HattoriM

さて、以上のことから、チャネル、トランスポーター輸送体の構造解析におけるキーポイントの当時の(今も?)キーポイントは「安定な試料を構造解析に十分な量調製することが難しい」ということでまとめられます。#memstruct

2011-06-20 13:55:30
HattoriM @HattoriM

1998年は、そのような問題に対し、様々なグループが取り組んでいた/取り組みはじめていた時代です。次回(第二回)は、その1998年に発表された初のイオンチャネルの立体構造であるカリウムチャネルKcsAについてです。#memstruct

2011-06-20 13:56:05
HattoriM @HattoriM

カリウムチャネルは、その名の通りカリウムを 輸送しますが、興味深いことに、カリウムイオンより小さなイオン半径を持ったナトリウムイオンはカリウムチャネルのポアを透過できません。#memstruct

2011-06-20 13:57:03
HattoriM @HattoriM

1998年から始まるマッキノンのグループによる一連のKcsAの構造解析の仕事は、この「イオン選択性」の問題に対して、かなりクリアな解答を与えています。#memstruct

2011-06-20 13:57:52
HattoriM @HattoriM

次回は、そのカリウムチャネルKcsAを中心とした以下の論文に基づいてお話をしますhttp://1.usa.gov/krK0DS http://1.usa.gov/lbL1fd http://1.usa.gov/lP2ykL

2011-06-20 14:00:24
HattoriM @HattoriM

有名な仕事なので、ご存知の方も多いと思いますので、単に構造、メカニズムの内容の説明だけではなく、当時の背景をある程度踏まえた話が出来れば、と考えています。#memstruct

2011-06-20 14:01:34
HattoriM @HattoriM

以上です。予定原稿の後半部分の投稿ということもあり、構造解析分野のテクニカルな話が多く、分野外の人にはさっぱりな内容だっだと思いますが、前半部分(膜輸送体分野の基礎知識)に興味がある方は後ほどbiokids.orgをみていただければと思います

2011-06-20 14:05:35
HattoriM @HattoriM

@K_Miyamichi そういっていただけるととてもうれしいです!かなりマニアックな内容なので、ごく一部の人々以外は???とならないか心配だったのです

2011-06-20 14:36:28
HattoriM @HattoriM

ちなみに次回以降の予定ですが、第二回1998年、カリウムチャネル第三回 2000年 水チャネルアクアポリン第四回 2001年(多剤排出輸送体などに代表される)ABCトランスポーター、の順です #memstruct

2011-06-20 14:40:24