ラテンアメリカ版『十二国記』 ぷりめ文書

『十二国記』の世界観が、仮に中華王朝ではなく南米ラテンアメリカだったら、という話です。面白いですよ。
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@ぷりめ @prime46502218

そもそも政府とはなんなのか理解してない人たち視点で独裁者を描くと、 「よく知らんけどずっと昔から官邸にいて、ラジオから声が流れてくるけど顔を知る者はおらず、たまに親衛隊と名乗るやつらが兵舎から出てきてトウモロコシやニワトリを出せと言う、みんなから大統領と呼ばれてるやつ」になります

2020-05-17 13:47:50
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 その国の大統領は人の姿をした精霊により選ばれたと信じられている。国をよく治めて選挙で過半数を取り続ける限り、大統領の身体は精霊の魔力に保護されて不老不死となる。民衆の支持を失い反乱で官邸を追われると精霊は勝者に移る。 フンタでトロピコで魔術的リアリズムで十二国記だ。

2020-05-19 12:48:42
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 大統領が官邸にいないと国が荒れる。凶作になったり災害が起こったり魔物が出たりする。 聞き取り調査した研究者が「魔物とは何か」と訊くと、土地の長老は「背丈が並の男のニ倍あって、鶏に似ていて、カエルを熱湯に放り込んだ時のような声で鳴き、ときどき乙女を孕ませたり鶏を盗む」

2020-05-19 14:15:51
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 ここで別の男が「鶏には似ていない」と言い出し、みんなで20分ぐらい話して、最終的に「猿のような姿で幅が二メートルある」という結論に達する。

2020-05-19 14:17:49
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 国内には軍と教会と労働組合と、どちらも大地主と資本家に支配された二大政党がある。大統領は彼らの利害を調整し、同盟し、必要に応じて討つことで権力を保つ。 貧しい農民たちにとっては、ラジオから流れてくる大統領の声と、村に駐在する巡査だけが政府との接触だ。

2020-05-19 14:58:49
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 だから「我こそ精霊である」と名乗る少女が村に現れたとき、長老が巡査の知恵を求めたのは不思議ではなかった。 巡査は少女を見た。体つきや髪、肌色は先住民との混血(メスティーソ)に似ていた。顔形は美しく均整がとれていて、悠然と地酒(チチャ)を飲む仕草はどこか高貴であった。

2020-05-19 15:12:50
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 巡査は、貴女が精霊であるなら何故官邸にいないのか、と問うた。精霊は、大統領は命脈が尽きたのに、まだ官邸に居座り、私を捕らえようとしたから逃げてきたのだ、と答えた。 村の者たちは困惑していたが、街の中学校に通ったことがあり、村で唯一新聞を読む巡査は、思い当たった。

2020-05-19 15:16:58
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 近ごろ、首都ではゼネストなる物が起こっているという。社会正義党と名乗る者たちがそれを先導しており、彼らを嫌う軍が介入する見込みである、と山越えで運ばれてきた七日遅れの、検閲で白抜きだらけの新聞は伝えていた。 大統領の命脈が尽きたとは、このことなのであろう。

2020-05-19 15:27:22
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 巡査はまだ半信半疑であったが、村の者たちはすでに少女が精霊であると信じ始めていた。村人は少女に、これから何をするのか、と問うた。 少女は、次の大統領を選ぶ、と言った。巡査が、それは選挙の仕事であり、貴女ではないというと、少女は、私の選んだ者に皆票を投ずるのだと笑った

2020-05-19 15:32:21
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 皆、次の大統領は誰なのか知りたがった。少女は広場の中心に出て、私を信じるか、と皆に問うた。村人は口々に、貴女を信じる、と叫んだ。少女は、広場の隅でただ一人叫ばずにいた巡査に歩み寄り、我は運命、国家理性である。我を信じぬものこそ為政者にふさわしい、とその頬に接吻した。

2020-05-19 15:39:03
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 巡査は、しかしどうするのか、私はただの警官に過ぎないし、武器も軍隊も金もない、これでは首都まで行けもしない、と言った。 少女は、武器はしまってあるし、兵は養ってあるし、金は預けてあるといって笑った。皆ふもとの街にある、と。

2020-05-19 15:42:48
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 巡査は少女とともに麓の街に行った。護衛を任じてついてきた、屈強な村人を二人伴っていた。 少女はまず、兵営の前へ行って、開門を命じた。山の村の巡査が報告したいことがある、非常な重要事であると。門衛はいぶかしみつつ門を開けた。 そうして少女は司令官室に入り込んだ。

2020-05-19 15:46:23
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 少女は司令官の大佐に、仕舞っておいた武器と、預けてあった兵を返してもらいたい、と言った。大佐はいぶかしんだが、少女が印を切ってその額に口づけすると、少女が何者であるか理解した。大佐は兵を中庭に集合させ、しかるべく手配りをするといった。巡査は気が気ではなかった。

2020-05-19 15:49:55
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 少女は満足し、兵を十名連れて兵営を出た。 それから少女と巡査と兵隊たちは、街でいちばん大きな銀行に行き、預けてあった金を返してもらいたい、できればドルかポンドがいい、と言った。 銀行員は、口座残高を調べるから名を教えてくれ、と言い、少女は国名を答えた。巡査は頭を抱えた

2020-05-19 15:54:13
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 銀行員は、そんな名前の口座はないし、あっても引き出せない、この国は破産状態で口座残高はゼロだ、そして外貨引き出しは一週間前から制限されている、と答えた。 少女は兵士たちに、銀行員の首を切れと手まねで伝え、巡査は慌てて止めた。 一時間後、一行は金を得て兵営に戻った。

2020-05-19 15:57:18
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 同時刻、憲兵隊の少佐が州都についた。地元の大地主である知事と会った少佐は、自分は非常に重要なスパイの捜査を担当している、これは大統領の特命であり、地方警察や軍を動かす命令書も持参している、と告げた。 少佐が持参したスパイの写真を州知事は見た。可愛らしい混血の少女だ。

2020-05-19 16:06:08
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 兵営の兵士たちは、村人と同じく、少女が精霊であるとあっさり信じた。兵士の大多数は兵役代納金が払えなかった貧しい農民なのである。 少女は、司令官と参謀に、州都襲撃計画は順調かと尋ね、参謀が色々難しいことを説明した。少女はよしそうかと言った。分からなかったのである。

2020-05-19 16:13:16
@ぷりめ @prime46502218

兵役経験があり、元伍長である巡査がかみ砕いて説明してやると、少女はもっと怒った。理解していないのが自分だけだと分かったからである。 その日の夜半、兵営から騎馬隊が出た。蹄の音を聞いた町人は朝になって、兵士たちが街の駅へ行進していくのを見て、演習であろうか、珍しい、と不安がった。

2020-05-19 16:26:22
@ぷりめ @prime46502218

兵士たちは軍が徴発した列車に乗って州都を目指した。ある新兵は列車に乗るのは生まれて初めてだとはしゃいだ。少女は自分は何度も乗ったことがあると自慢した。 列車を止めるものは何もなかった。先行していた騎馬隊が、途中の駅と電信局、電話交換所を占拠しておいたからである。

2020-05-19 16:33:14
@ぷりめ @prime46502218

しかし州都の寸前の駅で、味方の兵士から文が投げ入れられた。州都ではこちらの動きを察知して警戒している、憲兵隊がいる、というのである。 同時刻、憲兵隊の少佐は、列車を待ち構えていた。州都に入る直前にある古い引き込み線に列車を入れ、伏せた兵と機関銃で武装解除するつもりなのである。

2020-05-19 16:38:02
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 地方軍の指揮官が、これほど手配りしたのだから、そのまま蜂の巣にすればいいではないかと言った。 しかし少佐は、あのスパイを何としても生かして捕らえたい、銃撃戦は最後の手段だ、と言った。 少佐たちは引き込み線で待ったが、その時、本線が走る方角から列車の音が聞こえた。

2020-05-19 16:41:47
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 少佐は、こちらの計略が見破られていることを知った。おそらく切り替え地点に配した部下が殺されたのであろう。少佐はサイドカーに飛び乗った。 巡査たちは州都の駅から下車し、新聞スタンドを横目に走って、州都の要所を制圧すべく走った。警戒していた割に妙に手薄だと参謀が呟く。

2020-05-19 16:47:07
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 少女は、たぶん郊外の空気でも吸っているのだろう、街の生活は肩がこるから、と笑った。銀行で国名で金をおろそうとすれば少佐が飛んでくるだろうし、少佐ならこういう手を使うと知っていたのである。 兵士たちは街を占領したが、知事が官邸で頑強に抵抗するので、司令官は手を焼いた。

2020-05-19 16:51:59
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 少女は抜け道を使って私たちが陽動する、と言った。この官邸は植民地時代に総督のために作られたもので、反乱時にそなえた抜け道があると、年ふるい少女は知っていたのである。巡査が、その道を反乱軍に使われるとなれば、本末転倒だ、と真面目な顔でいうと、少女は笑った。

2020-05-19 16:55:16
@ぷりめ @prime46502218

#ラ米十二国記 巡査、少女、村人二人で抜け道を使って官邸に入った。巡査はまだ警官の制服を着ていたし、少女や村人は軍服をもらっていたので、邸内にいても味方だと思われて自由に動けた。主人公たちはまんまと知事と司令官を人質にし、電話線を切って部屋に立てこもり、軍の指揮をとれなくした。

2020-05-19 16:59:56