2011年6月21日の日米「2+2」成果文書の総括について

2011年6月21日の日米「2+2」成果文書の総括を行う。結論を言えば今回の成果文書の内容は大変良いものであると考える。共通戦略目標では対中国の文脈がかなり重視されており、在日米軍再編では普天間基地の辺野古沿岸(V字案)への移設が日米両政府間で正式に決着した。日米の同盟協力は正しい方向に向かっている。今後、仏作って魂入れず、では困るのだが、少なくとも仏それ自体の造形はかなりいいものだ。
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fj197099 @fj197099

以上が共通戦略目標の内容だが24のうちのかなりのものが対中国関連であることがお分かり頂けるものと思う。試みまでに多少なりとも対中国の文脈で捉えられるものを番号で拾ってみると1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 14, 15, 16, 17, 19である。

2011-06-26 11:48:05
fj197099 @fj197099

実に24のうちの15までが名指しはせずとも何らかの形で中国への対抗を意識した内容になっている訳で、その比率は62.5%に及ぶ。今回の戦略目標が如何に対中国=地域の安全保障の文脈に回帰したものであるかが良く分かると思う。これに対してグローバル安保関連は相対的にウェイトが落ちた。

2011-06-26 11:50:51
fj197099 @fj197099

このことは実はこれまで「世界の中の日米同盟」といって地域の安保よりもグローバルな安保を重視してきた「ナイ・アーミテージ報告」の路線からの転換を示唆するもので興味深いのだが、そこは余り深入りしない。とにかく今回は中国の脅威への対抗という地域の安保の文脈が強いという話である。

2011-06-26 11:52:14
fj197099 @fj197099

共通戦略目標の次に文書では「抑止及び緊急時の対処の強化」が指摘されている。「閣僚は、二国間の計画検討作業のこれまでの進展を歓迎し、日米同盟が日本をよりよく防衛し,様々な地域の課題に対処できるよう、二国間の計画を精緻化する努力を行うことを再確認した」という注目すべき記述が見られる。

2011-06-26 11:55:05
fj197099 @fj197099

これは所謂有事における対処計画を日米両政府間でしっかり作りましょうという話であって、そのために「この努力は、平時及び危機における調整のための二国間の政府全体のメカニズムを強化し、米軍及び自衛隊による日本国内の施設への緊急時のアクセスを改善することを目的とする」としている。

2011-06-26 11:56:10
fj197099 @fj197099

これまでの日米同盟というのは情けないことに「同盟」といいつつこうした最小限の対処計画も具体化されていなかったのだが、もうそれは限界である、今後はきちんとやりましょうという記述である。米側の要請による可能性が高く、日本政府がきちんとやれるかが課題だが、方向性としては正に妥当と思う。

2011-06-26 11:57:38
fj197099 @fj197099

次に「閣僚は、日本及び米国の役割、任務及び能力を継続的に検討する必要性を強調し、運用面での協力をより強化する分野を特定するとのこのプロセスの目的を確認した」とある。ここで注目されるのは「役割、任務及び能力」の「継続的」な「検討」ということだが、これは過去も行ってきたことだ。

2011-06-26 11:58:49
fj197099 @fj197099

すなわち在日米軍再編協議においては、まず共通戦略目標、次に双方の役割、任務及び能力の検討、最後に在日米軍の再編という流れで議論が進んできた。今回は共通戦略目標だから次は役割、任務及び能力を検討しましょうという訳だ。再編については普天間の文脈で今回決着させた訳であるが。

2011-06-26 12:00:10
fj197099 @fj197099

次の「閣僚は、非戦闘員退避活動における二国間の協力を加速することを決定した」という記述も注目される。非戦闘員退避(NEO)は重要なのに日米協力がきちんと行われてこなかったが、今回盛り込むことになった。朝鮮半島や台湾海峡の危機が意識されているのであろう。中東なども入るかもしれない。

2011-06-26 12:01:44
fj197099 @fj197099

その次の「閣僚は,能動的,迅速かつシームレスに地域の多様な事態を抑止し,それらに対処するために,共同訓練・演習を拡大し,施設の共同使用を更に検討し,情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大といった協力を促進することを決定した」という記述も大変良い。

2011-06-26 12:02:16
fj197099 @fj197099

これは昨年の日本の防衛大綱で「動的防衛力」構想が採用されたことを踏まえ、シームレスに多様な事態を抑止することが重視された結果を受けての記述だ。日本側のISRの強化等、昨年の安防懇報告書で重視されていた内容も盛り込まれている。戦略共有がしっかり為されている証拠であると言ってよい。

2011-06-26 12:03:53
fj197099 @fj197099

その次には私も度々触れてきた日米共同開発の弾道弾迎撃のためのミサイル、SM-3 Block IIAミサイルの第三国輸出の許可の話である。第三国輸出は当然なのだが注目されるのは如何なる場合に第三国輸出が認められるかの要件である。その要件は将来の武器輸出三原則等緩和にも影響を与える。

2011-06-26 12:06:33
fj197099 @fj197099

この点、今回の記述は「米国政府から今後要請され得るSM-3ブロックⅡAの第三国への移転は,当該移転が日本の安全保障に資する場合や国際の平和及び安定に資する場合であって,かつ,当該第三国がSM-3ブロックⅡAの更なる移転を防ぐための十分な政策を有しているとき」となっている。

2011-06-26 12:07:11
fj197099 @fj197099

まあ、比較的柔軟な緩い記述となっているといってよいだろう。これは将来、如何なる国に供与するかの柔軟性を確保する上で大変重要である。現在のところ、供与先はルーマニア等であるが、NATO加盟の民主化された中東欧諸国に供与されることが国際の平和と安定に悪影響を与えるとは考えられない。

2011-06-26 12:09:01
fj197099 @fj197099

次に日米間で二国間の「拡大抑止協議」が立ち上げられたことを歓迎するとの記述がなされている。余り知られていないが日米は2009年8月の政権交代直前ごろから拡大抑止の協議をスタートさせている。今のところ、成果がはっきり見える訳ではないが、そのうち詳細が詰められていくのだろう。

2011-06-26 12:10:49
fj197099 @fj197099

その他、宇宙における安全保障やサイバー安保における協力が指摘されているが、これはもちろん中国の存在を念頭に置いていると読む人が読めば直ぐに分かる記述である。要するにこれらの記述は対A2/AD能力の文脈で書かれているのである。拒否的な対中抑止の流れでの記述と考えて問題ない。

2011-06-26 12:12:30
fj197099 @fj197099

「抑止及び緊急時の対処の強化」の次は「地域及びグローバルな場での日米同盟の協力」という記述があるのだが、ここにも少し面白い記述が存在する。まずは日米及び地域において共通の価値を共有する諸国は人道支援・災害救援及びその他の活動での三カ国・多国間の協力を促進するとの内容である。

2011-06-26 12:14:30
fj197099 @fj197099

人道支援・災害救援とは言うが、これはすなわち共同演習のことであって、名目はともあれ、日米とこれら第三国(豪・韓・印?など)との共同演習を行うことで有事の際の相互運用性を高めようという意思がここでは示されているのである。無論人道支援等にも役立つが、対中国の文脈で捉えることも可能だ。

2011-06-26 12:16:03
fj197099 @fj197099

次に「閣僚は、また、地域の人道支援・災害救援分野の後方支援の拠点を日本に設置することの重要性につき一致した」という。「人道支援・災害救援分野の後方支援の拠点」とは何かといえばこれは北澤防衛大臣が触れたように南西諸島の下地島空港をそういう拠点にしようという構想を指しているのである。

2011-06-26 12:18:07
fj197099 @fj197099

この件も過去につぶやいてきたが、すなわち中国に反発されずに下地島空港を有事の際の航空機のアクセス拠点として整備しましょうという話なのである。これは北澤大臣のイニシアチブであり、今回の「2+2」での数少ない「政治主導」の産物といってよい。私もこの点は評価できるものだと考える。

2011-06-26 12:19:42
fj197099 @fj197099

最後に文書は「日米同盟の基盤の強化」について触れているが、ここで注目されるのは「閣僚は,運用面での協力についてより効果的で,…様々な事態により良く対応することができるよう二国間の枠組みを継続的に検討し,強化していくことの重要性を認識した」とする記述だ。抽象的な表現だが重要である。

2011-06-26 12:21:41
fj197099 @fj197099

というのは、日米両政府はおそらくここで日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定を視野に置いた検討を行うつもりなのではないか、ということが推測されるからである。ガイドラインは1978年に作られた後、1997年に改定されて現在まで続いているが、そろそろ再改定の時期と言って良い。

2011-06-26 12:22:55
fj197099 @fj197099

そもガイドライン改定は前回(1996~97)のように日米安保共同宣言と連動する形で行われるべきものだ。九月の首相の訪米では新たな日米安保共同宣言が出るとされているのだから、ガイドライン改定もそろそろ必要である。戦略面でも対中重視なのだからそれに沿った内容のものがほしい。

2011-06-26 12:24:26
fj197099 @fj197099

最後に装備・技術協力について触れられている。「先進諸国が国際共同開発・生産を通じて,装備品の高性能化を実現しつつ,コストの高騰に対応している中,日本政府はそのような流れに対応するために現在行っている検討を促進する」とあるが、つまりは武器輸出三原則等緩和をしてくれという話である。

2011-06-26 12:26:23
fj197099 @fj197099

これも過去に触れてきたが、戦闘機等の高性能の装備品は今や国際共同開発が主流だ。日本は武器輸出三原則等に縛られて参加できず、それが防衛費のムダ使いにも繋がっている所がある。原則等を緩和し、共同開発に参加できる体制とすることは焦眉の急である。必要なのは政治の決断だけである。

2011-06-26 12:27:43