2011年6月21日の日米「2+2」成果文書の総括について

2011年6月21日の日米「2+2」成果文書の総括を行う。結論を言えば今回の成果文書の内容は大変良いものであると考える。共通戦略目標では対中国の文脈がかなり重視されており、在日米軍再編では普天間基地の辺野古沿岸(V字案)への移設が日米両政府間で正式に決着した。日米の同盟協力は正しい方向に向かっている。今後、仏作って魂入れず、では困るのだが、少なくとも仏それ自体の造形はかなりいいものだ。
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fj197099 @fj197099

先の日米「2+2」文書について総括しておくべきだろう(http://t.co/ujUvr0G)。結論から言えばこの文書、いろいろ評価はあるようだが私としては大変内容的にも踏み込んだ良いものであるように思う。問題は仏作って魂入れずというが、その実践の方だ。少なくとも仏の造形はいい。

2011-06-26 10:59:51
fj197099 @fj197099

「2+2」の成果文書は①「より深化し、拡大する日米同盟に向けて:50年間のパートナーシップの基盤の上に」、②在日米軍の再編の進展、③東日本大震災への対応における協力、④在日米軍駐留経費負担、の四つからなっている。特に重要なのは①②で、①が共通戦略目標、②が普天間移設に触れている。

2011-06-26 11:01:34
fj197099 @fj197099

①から見ていく。共通戦略目標は今回の「2+2」で最も注目される所である。まず序文の三パラグラフ目がいきなり注目される。(日米の)閣僚は「ますます不確実になっている安全保守環境によってもたらされる課題」に注目するというのだが、その次に以下のような文章が書かれているのが注目点だ。

2011-06-26 11:04:06
fj197099 @fj197099

「これには、地域における軍事能力及び活動の拡大、北朝鮮の核・ミサイル計画及び挑発的行動、非伝統的な安全保障上の懸念の顕在化並びに宇宙,公海及びサイバー空間などに対するその他の変化する脅威が含まれる」。ここには一切「中国」という言葉はないが、事実上中国を「脅威」と明言したに等しい。

2011-06-26 11:05:10
fj197099 @fj197099

昨年の防衛大綱では中国の軍拡については「懸念事項」という言葉が使用されていた。今回、それは「脅威」に一歩レベルアップした。更に重要なのは宇宙、公海、サイバー空間などの所謂「グローバル・コモンズ(国際公共財)」への言及が盛り込まれたことだ。日米の戦略認識が刷り合わされている。

2011-06-26 11:07:12
fj197099 @fj197099

「グローバル・コモンズ」という言葉自体は文書内には見えないが「2+2」後の記者会見では閣僚は明示的にそう述べているので間違いない。ここは日本が米国の戦略認識を受け入れた形で、日米両政府の正式な文書として「グローバル・コモンズ」に対するアクセス確保の重要性が認識されたことは大きい。

2011-06-26 11:09:21
fj197099 @fj197099

序文でいきなり示されたように今回の共通戦略目標は中国の脅威に如何に対抗するかという意識が顕著である。しかも言及自体は中国を名指しせず婉曲に表現しており、中国に言質を採らせない形になっていることが特徴的だ。中国に触れていなくても対中国の文脈で考えるべき記述が多いことに注意すべきだ。

2011-06-26 11:11:02
fj197099 @fj197099

序文ではあと次の記述にも注目すべきだ。「日米の共有された価値、すなわち民主主義の理想、共通の利益並びに人権及び法の支配の尊重は、引き続き日米同盟の基礎である」。これは日米同盟が共通の価値の存在にも基づくことを示した文章で毎回言及されることだが重要な記述である。

2011-06-26 11:13:54
fj197099 @fj197099

また「米国政府は、核及び通常戦力の双方のあらゆる種類の米国の軍事力によることを含め、日本の防衛並びに地域の平和及び安全へのコミットメントを再確認した」という記述も重要。拡大抑止関連だが拡大抑止には「核及び通常戦力の双方」が含まれることに注目。「核の傘」だけではないとの意識である。

2011-06-26 11:15:07
fj197099 @fj197099

序文の次に共通戦略目標についての記述がある。ちなみに共通戦略目標には2005.2.19(http://t.co/5F49etX)と2007.5.1.(http://t.co/NXppzl1)の過去のものも存在するのでその対比も重要である。前者は18、後者は11を挙げていた。

2011-06-26 11:18:08
fj197099 @fj197099

今回の戦略目標には24が掲げられている。数が非常に増えたし過去の記述と比べると内容に踏み込んでいるところが多いのが注目される。注目される所と過去になかったものに限定して言及したいが、まず今回の戦略目標の二つ目に「日米両国に影響を与える多様な事態に対処する能力を向上させる」とある。

2011-06-26 11:20:03
fj197099 @fj197099

これは昨年の日本の防衛大綱で平時と有事の中間領域たる「グレーゾーン」に対応した「動的防衛力」構想が採用されたことを踏まえ、特にそれが多様な事態が同時発生する「複合事態」対処を重視していることを意識して記述されたものであると思う。ここでも日米の戦略認識の刷り合わせが見られる訳だ。

2011-06-26 11:21:40
fj197099 @fj197099

四番目の「豪州及び韓国の双方のそれぞれとの間で、三か国間の安全保障及び防衛協力を強化する」という記述も注目される。以前記述があったのは豪のみ(2007)だが、今回は韓も追加された。昨年来の日米韓三カ国安保協力の機運の高まりを受けてのことである。いずれにせよ豪韓との連携は重要だ。

2011-06-26 11:23:18
fj197099 @fj197099

五番目の中国に関する記述が特に注目される。「地域の安定及び繁栄における中国の責任ある建設的な役割、グローバルな課題における中国の協力並びに中国による国際的な行動規範の遵守を促す。中国の軍事上の近代化及び活動に関する開放性及び透明性を高め、信頼醸成の措置を強化する。」

2011-06-26 11:24:12
fj197099 @fj197099

以前(2005)の中国についての記述は「中国が地域及び世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる」というものだった。今回は「中国による国際的な行動規範の遵守を促す」である。行動規範遵守がなされていないことを前提に一歩踏み込んだ記述である。

2011-06-26 11:26:27
fj197099 @fj197099

この背景にはもちろんのこと昨年来の中国の特に海洋秩序問題についての自己主張の高まりを挙げることが出来る。昨年の米国とその同盟国、及び中国は中国が公海上で示す国際法規に違反した行動を巡り度々先鋭に対立した。黄海、東シナ海、南シナ海然りである。この経緯が今回の記述に反映されている。

2011-06-26 11:28:42
fj197099 @fj197099

七番目のロシアについての記述では今回「北方領土問題の解決を通じた日露関係の完全な正常化を実現する」という記述が入った。ロシアはこれに反発しているが反発するということは痛い所を突かれた証拠だ。米国は領土問題には関与しないとしているが少なくとも北方領土「問題」の存在は認めたのだ。

2011-06-26 11:30:21
fj197099 @fj197099

八番目の「地域の安全保障環境を不安定にし得る軍事上の能力を追求・獲得しないよう促す」という記述も注目される。言及されないがこれは中国の「接近拒否・領域否定(A2/AD)」能力を想定したものであろう。弾道ミサイルや空母、衛星攻撃能力の獲得等を念頭においての指摘であると考えられる。

2011-06-26 11:31:53
fj197099 @fj197099

九番目のASEANとの安保協力強化も注目してよい。今回は過去に比べ南シナ海の問題で対中牽制のために東南アジア諸国と連携強化を図るという発想が強くなっているものと思われる。十番目のインドとのパートナーシップも注目点だ。日米印協力はインド洋の覇権を中国に握らせない上で重要である。

2011-06-26 11:33:31
fj197099 @fj197099

十一番目にARF、ADMM+、APEC及びEASなどの様々な開放的かつ多層的な地域のネットワーク及びルール作りの重視が挙げられているがこれも対中国の文脈で重要である。つまり中国有利な二国間の問題解決ではなく、これらを通じた多国間の解決を追求することで中国を牽制しようとするものだ。

2011-06-26 11:35:36
fj197099 @fj197099

十五番目に「海賊の防止及び根絶、自由で開放的な貿易及び商業の確保並びに関連する慣習国際法及び国際約束の促進を含む、航行の自由の原則を守ることにより海上交通の安全及び海洋における安全保障を維持する」としているが、これも海賊をダシに対中国の文脈で「航行の自由」について触れたものだ。

2011-06-26 11:37:02
fj197099 @fj197099

続く十六~十八は過去にない全く新しい記述である。十六番目はサイバー空間の保護並びにそれらへのアクセスに関する日米協力に触れている。所謂サイバー安保の問題だが、これも対中国の文脈で捉えることが出来る。中国からの攻撃はまずサイバー攻撃の形で始まると想定されるからである。

2011-06-26 11:38:44
fj197099 @fj197099

十七番目は「災害予防及び災害救援における国際的な協力を強化する」と述べている。十八番目は「民生用の原子力計画における最高水準の安全を促進し,原子力事故に対処するための能力を向上させる」である。これらは東日本大震災の際のトモダチ作戦を念頭に置いた記述で、急遽追加されたのであろう。

2011-06-26 11:40:24
fj197099 @fj197099

十九番目は「エネルギー及びレア・アースを含む死活的に重要な資源及び原料の供給の多様化についての対話を促進する」であって、これは昨年九月の尖閣沖漁船衝突時に中国が日本に対してレア・アースの禁輸措置を採ってきたことが意識されている。すなわちこれも対中国の記述であるということである。

2011-06-26 11:42:38
fj197099 @fj197099

二十番目以降は主にグローバル安保に係ることで、国連安保理改革(20)、中東及び北アフリカにおける民主的改革の支持(21)、イランの核開発問題における協力(22)、アフガニスタンにおける協力(23)、パキスタンに対する協力(24)等である。グローバルな協力への言及も為されている。

2011-06-26 11:45:03
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