- Yuusisaitou
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AKIRAほどの作品は多様な語られ方をして広範な批評が成されてきましたが、私が10年以上ぶりに何の先入観もなく見た純粋な印象としては、結局ここが一番大きかった。「鉄雄が見てて痛快」 金田と鉄雄の友情等も魅力ですが、やはり一番はここだと。
2020-06-20 02:10:28この「痛快さ」というのは「ダークナイト」のジョーカーとほとんど同質と感じる。 2010年公開のダークナイトも当時非常に感銘を受けたし、クリストファー・ノーラン作品からはいつも「ジャパニメーションイズム(なんだこの言葉)」を感じるのは私だけじゃないと思います。 pic.twitter.com/lVe6Oy34Cg
2020-06-20 02:10:29ダークナイトのジョーカーも「非道徳的なことしかやらないし、世の中のあらゆるしがらみをブッ壊そうとする。そこにある種の痛快さを感じる」キャラクターなんです。 ここが鉄雄を見ている時に感じるカタルシスと全く同じ。 pic.twitter.com/KclfAdyCPI
2020-06-20 02:10:29ダークナイトも「人によっては超絶大傑作だけど人によっては何が面白いのかわからない作品」として結構挙げられますね。 pic.twitter.com/MzxClSTcDY
2020-06-20 02:10:2904年公開の大友監督の「スチームボーイ」はまぁあんまり世間的な評判はよくないと思います(私は好きですが) 色々問題点のある作品ですが、あの作品は「力の暴走」といった要素的にはAKIRAと同じなのに、やはりそれをカタルシスとして感じさせる仕掛けがちゃんと機能してなかったのが悪かったと思います pic.twitter.com/ueP7uGF39q
2020-06-20 02:10:30AKIRAの力の暴走が、鉄雄を依り代として普遍的な若者のエネルギーの発露を体現していたのに対して、スチボでエネルギーを暴走させるのは主人公の父親の中年のオッサンなんですね。 そして主人公のレイは王道冒険活劇主人公のいい子ちゃんで、倫理的な面から父親を止めようとする。 pic.twitter.com/fX0fvF6Dhq
2020-06-20 02:10:30これでは鉄雄やジョーカーに見られたある種の「ロマン」は一切出ないですよね。スチームボーイは色々半端な作品だったとは思います。
2020-06-20 02:10:30さて、改めて見返して思ったのはやっぱり第一幕のバイクチェイスの場面が圧倒的に面白い。 「AKIRAは冒頭のバイクチェイスだけ見ればいい」的なことを言う方も少なくないですが、そう言いたくなるのがわかるくらいこの部分のワクワク感は突出している。というかこれ以降結構グダる映画でもある。
2020-06-20 02:54:40「既に行動中の主人公」や「複数の事態が進行中」というのは優れた導入部の鉄板なわけですが、AKIRAの第一幕はこの要件を完璧に満たしている。 東京大崩壊から時間が経過し、時間は2019年のネオ東京に移る。そこでは既に「クラウンと金田チームとの抗争」が勃発中。
2020-06-20 02:54:41「複数の事態が進行中」や「対立軸の多さ」もワクワクポイント。金田達がクラウンとしのぎを削ってる中、反政府分子がタカシを連れて逃げている。そしてそれを追っているアーミーの様子が挿入される。 冒頭だけで三勢力の動きが同時展開されている。大友さんはこの「多勢力の同時進行」がお好き。 pic.twitter.com/Rykb2niySt
2020-06-20 02:54:41原作漫画も途中からずっとコレだし、スチームボーイもこれ。ただ、これは途中からグダってくる欠点もあるけど… 「冒頭複数の勢力がしのぎを削って行動中」というのはラピュタの導入部も同じ。 pic.twitter.com/UrfgOAqKy4
2020-06-20 02:54:41クラウンとの抗争が終結しつつあるところで、タカシの超能力が発動し、物語は謎の超能力と「アキラ」の存在へと指向していく…この謎の牽引も見事ですね。 これもラピュタの抗争勢力図や飛行石の立ち位置と似たようなところがあります。
2020-06-20 02:54:41「スチームボーイ」で、強大なパワーを秘めたアイテムを多勢力が奪い合うというラピュタ的構造にしたのもよくわかる類似がAKIRAで既に在る。 pic.twitter.com/VZuAjqcDq8
2020-06-20 02:54:42「重要アイテムの奪い合いの最中から始まる」というのは映画の導入部の鉄板。私の好きな「スカイフォール」なんかも、仲間が瀕死の状態に追いやられ、重要データーを敵に奪われた絶体絶命のピンチからのカーチェイスが第一幕です。 AKIRAの第一幕にはこれら共通のワクワク感がある。 pic.twitter.com/vtGOJNlyj7
2020-06-20 02:54:42しかし「スチームボーイ」は、スチームボールの発明事故から主人公の生活環境を描き、20分目でやっと「チェイス」が始まるんですよね…。 AKIRAの20分目というともう体育館で取り調べを受けてるところ、ラピュタでは親方達が喧嘩してるとこですね。20分というのは普通の映画なら第一幕が終わっている
2020-06-20 02:54:42AKIRAの感想では「よくわからない」というのは付き物だけど、じゃあ「よくわかる話」って何なのかと言ったら、恐らく「明確な行動動機」があるものとか、対立軸がハッキリした話だと思う。 ヒロインを救うためにテロリストをやっつけるとか。悪者を倒して治安をよくするとか。
2020-06-20 10:25:50AKIRAって、金田や鉄雄の行動の動機や指向性がよくわからないんですよね。 金田が鉄雄を追う理由(取り戻したい、止めたい、殺したい?)も流動的だし、それを成し遂げるために何か作戦を練るわけでもない。偶然ケイ達反政府分子と出会って協力したり等、行き当たりばったりな行動しかしてない。
2020-06-20 10:25:50ケイ達根津陣営の「なぜクーデターを起こして体制を崩壊させたいのか」ということも特に理由が明言されないのでこの辺りも分かりにくい。 鉄雄も鉄雄で、未知のエネルギーを手に入れたから金田を見返してやるとか、そういったわかりやすい動機がない。ただ漠然と「アキラってなんだ」と突き進む。
2020-06-20 10:25:51ただ、全ての陣営に共通してるのが「どうしようもなく抑えきれない衝動に従う」ということ。このやり場のないエネルギーの発露こそがこの作品のテーマなので、これを「感じる」ことが出来ないと何のこっちゃわからない映画、という感想になりがちなのだと思う。
2020-06-20 10:25:51結末も、ただエスカレートしていく力が頂点に達した結果、街が崩壊し復興するという、何かの目的が達成されたわけでも、因果が解消されたわけでもないですし。 理屈で考えようとすると何が何だかよくわからない話、となりがちですよね。
2020-06-20 10:25:51AKIRAといえば「さんをつけろよデコ助野郎ォ!」ですけど、あそこの盛り上がりは何度見てもシビれる。 改めて見るとあれは原作序盤の名シーン「山形ァ」の代替シーンなんですよね。 「さんをつけろよ」までのドラマの文脈は、山形が鉄雄に殺されたことを金田が知るシーンから始まっている。 pic.twitter.com/D1PYuJ8iLe
2020-06-23 03:38:45金田の行動の動機がよくわからないと書きましたけど、金田は「覚悟を決める」のがわりと遅いキャラでして。 普通、映画の主人公というのは三幕構成のうち第一幕のターニングポイント(開始2、30分頃)で「後戻りが出来なくなって」、映画のなかで一貫した行動目標を持つようになる。
2020-06-23 03:38:46例えば「ダイ・ハード」でいえば、『外部に助けてもらうのが無理なので自分でなんとかする』とか、「バックトゥザフューチャー」なら『帰れなくなったので両親をくっつける』とか。 開始2、30分辺りでその映画で主人公がやるべきことが大体固着されて変化しない。 pic.twitter.com/e5Uq9r1qud
2020-06-23 03:38:46ところが金田はああいう性格なんで途中まで結構ふざけた態度を取っていて、あくまで『鉄雄を取り戻す』ために行動してるんだけど、「山形の死」を聞いて、行動理由がハッキリする。「鉄雄を始末する」と。 金田が涙を見せるのはアニメ、原作共にかなりレア。 pic.twitter.com/8hXkPCzUjZ
2020-06-23 03:38:47