「AKIRA」を10年ぶりに見て「どこが面白かったのか?」をシンプル考えてみた。

現在4Kリマスター版が公開中の「AKIRA」のレビューです。
178
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

現在一部の劇場で公開中の「AKIRA(4Kリマスター版)」を見てきました。 いやーやっぱり傑作ですね。今見ても本当に面白い。 作中の舞台の年がちょうど現在だったりオリンピック等の予言性等、最近何かと再注目されてる「AKIRA」を、改めてレビューしたいと思います。 pic.twitter.com/M7ffFUomiV

2020-06-20 01:48:38
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私のAKIRA遍歴をざっと説明しておくと、今から15年程前の中学生の時にレンタルで初観賞、人生を変えられるほど衝撃を受け、原作コミックは勿論大友先生の他作品も当時手に入れられるものは全て買った「大友信者」でした しかしその後あまりにも影響が強かったので一旦離れ、ここ10年は見返さなかった pic.twitter.com/7JK6yDpZ9e

2020-06-20 01:48:38
拡大
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

一時期は狂ったように見たけど、20代になるとなんとなく熱が冷め『なんであの時はあんなにハマったんだろう?』と疑問を抱く作品になっていた。 10年封印して劇場で初めて観た「AKIRA」で、私のなかでAKIRAがどういう位置づけなのか何となくわかった気がする。 pic.twitter.com/A1o0GUeY54

2020-06-20 01:48:39
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

その前にまず「4Kリマスター」として生まれ変わったAKIRAの印象を。 映像面の変化は正直あまり感じられなかった(視力のコンディションがあまり良くなかったのも大きい)けど、音響面がかなり変わった印象を受けた。モブの台詞までハッキリ聴こえる。当時の音声がここまでクリアに収録されてることに驚く

2020-06-20 01:48:39
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

有名な最初の「ドーン」の音からして「違う」 今まで見てた印象では『同じ音の繰り返し』という印象しかなかったのだけど、微妙に音階が違ったり力強さが違ったりということに初めて気づいた(家庭の音響の限界もあると思うけど) 私は今まで芸能山城組のサウンドにはあまり注意を払ってなかった

2020-06-20 01:48:40
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

勿論あれだけ独特な音楽なのでそのイメージは受容してるけど『なンか変わった音楽だナw』というくらいの軽いノリ。 今回のリマスター、劇場初観賞で「初めて芸能山城組に出会った」という感覚がした。劇場で再見するメリットはこれが大きい。AKIRAにおけるサウンド面の偉大さが初めてわかった気がする pic.twitter.com/eVbCXkalBa

2020-06-20 01:48:40
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ジョーカーが登場する場面で流れる「ダッダーヒーハー」なんかは以前のものとは全然印象が違った。その他も各音量調整がだいぶ変えられてる気がする。 中には効果音が大きすぎて以前聴こえた音声が聴こえない、という場面もあった。具体的には二点。 pic.twitter.com/WqMQO7Undi

2020-06-20 01:48:40
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

カオリがバイク・ラリアットを喰らって倒れる時の悲鳴と、終盤鉄雄の体内から金田がビームライフルを発射して脱出した時の鉄雄の「うわああァァァ」という叫び。この二つは全然聴こえなかった。 以前は意識しなかった音としては、環境音がよく聴こえるようになった点。 pic.twitter.com/Mi7dfNtrXn

2020-06-20 01:48:41
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「やまがたくゥ~ン♥」と女共が駆け寄ってくる屋外シーンで、「ゴーッ」という空間の広さを感じさせる空気の流れの音が非常に自然に聴こえたり。 鉄雄がSOLを破壊しにいく宇宙の場面も、今までは無音のイメージだったけど、少しずつ音階の変わる「ゴォォォォー…」という「無音の音」が流れていた pic.twitter.com/iMEYc1fcFO

2020-06-20 01:48:41
拡大
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

脱走した鉄雄がビル街で戦車を吹き飛ばすシーンの群衆シーン「こっちは魚だよォ?さァかァなァ!保障してくれンだろうなァ?!」と言うモブが居て、何屋なのか気になる魚のオブジェを付けたトラックが居ることも今回初めて気が付いた 音声と映像がクリアになったことでハッキリわかるようになっている pic.twitter.com/EyJ42Qyt94

2020-06-20 01:48:42
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

旧マスターでは全体的にモヤがかかったようないかにも「古い作品」の音だと感じていたけど、まるで昨日録ったかのように台詞やモブの音声が非常にクッキリ聴こえる。これが驚きだった。収録素材が良かったのか、そういう技術なのか、どっちだろう。

2020-06-20 01:48:42
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

あと、トンネル内で鉄雄が浴びた消火剤?が地面に落ちる時の「パタッパタッ」という独特な音も聴こえなかったな。 pic.twitter.com/lY6s21EHBs

2020-06-20 01:48:42
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここからは内容面の感想を。 やはりこの作品は今見ても凄い。ネオ東京の存在感、あらゆる描写の細かさ、登場人物達のエネルギー。 「AKIRAは10代(出来れば前半)のうちに見ておくべきだ」というのは私の持論なんだけども、今回見返してやはり強く思い返した。

2020-06-20 01:48:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この作品で痛快な部分は、人によって色々あると思うけど私にとってはやはり「鉄雄の破壊衝動」これに尽きる。 どう見ても非道徳的なことしかやってないのだけど、鉄雄がエネルギーを行使する場面の全てで鳥肌が立つんですよ。 pic.twitter.com/gzYkSnHbwP

2020-06-20 01:48:43
拡大
拡大
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

AKIRAに関しては超能力描写の革新性とかが主に語られがちですけど、語り尽くされたそれらは今回は無視して、ドラマ的なカタルシスがどこにあるのかということを論じたい。 鉄雄はアンチヒーローでもなく、明確な敵という感じでもない。 pic.twitter.com/zHMsfdqqTI

2020-06-20 01:48:43
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

全てにおいて上をいく親友の側で鬱憤を抱えた若者、自己表現の術を知らない鬱屈した少年。 私だけかもしれないが、中学や高校の頃、授業や義務的に受ける退屈な講習の時に『あァ~なんかの拍子にこの空間自体全部ブッ壊れねェかなァ』という妄想を抱くことが何度もあった。 pic.twitter.com/p0j6STzLQb

2020-06-20 01:48:44
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

誰しも子供の頃に『授業中にテロリストが襲ってきて自分だけ助かってどうにかする』というような妄想を抱くと思う(抱いたことがない人は幸せです) 若い頃、特に子供ではないが大人でもない程度に知恵がついてきた10代前半というのは、「世界」がわからない。 pic.twitter.com/7RTs3AyY3Z

2020-06-20 01:48:44
拡大
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

自意識が芽生え、他者(異性)の存在も気になってくる。どうやら世界の中心は自分じゃないと段々気づいてくる。世界には自分の知らないナニカがあり、そういう混沌とした諸々で世界は動いているらしい、若い時分にはそういう『言いようのない鬱憤』が、誰しもに渦巻いていると思います。

2020-06-20 01:48:45
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

で、この『言いようのない鬱屈感』や『ドロドロした世界』を、全部ブッ壊したり、時には全部捨てて逃げ出したいという願望も、誰しも一度は抱くものだと思う。 青春映画の傑作「スタンドバイミー」でもこうした願望が語られています。 pic.twitter.com/SN1riL5KTa

2020-06-20 01:48:45
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「AKIRA」が何を描いているのかというのは人によって諸説ありますが、私はこれだと思う。 「正体のわからないものへの畏怖と憧れ」

2020-06-20 01:48:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

AKIRAって、人によっては大傑作だけど「どこが面白いのかわからない」と言われる作品の代名詞でもあると思います。 恐らくAKIRAを「感じる」ことが出来ない人は、見た時期が悪いか、こうした鬱憤を抱いたことのない人達なのではないかと。

2020-06-20 01:48:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

AKIRAが描いている「エネルギー」は非常に観念的でよく「分からない」 人間が文明を築き上げる前の、原初の宇宙の話。人が街や物を作る「力」はどこから来るのか、アメーバのような存在にもそうした「力」があるのか。劇中でケイがそう自問します。 pic.twitter.com/h2DXL6AQH7

2020-06-20 01:48:46
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

自分が感知出来ない、あるいは関与出来ない事柄によって世界が成り立っている。これは「精神と知能が未発達な青年」が漠然と感じているフラストレーションと同じなわけです。 そして、そんな鬱屈した状態の中、あらゆる社会的手続きを省略して自分が「神」になり、全てを左右出来る。それが鉄雄の立場

2020-06-20 01:48:47
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

鉄雄のキャラクターが痛快なのは恐らくこの「正しく中二病」なところだと思います。 鉄雄自身も劇中で言う。「あいつらは誰でもよかったんだ。ブッ壊してくれる奴がいれば…」 鉄雄は全ての青少年が抱える鬱屈、やり場のない衝動の代弁者なのです。だからこそ魅力的だし、共感する。 pic.twitter.com/yqxYdbDR8p

2020-06-20 01:48:47
拡大
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

AKIRAが世界中で愛され未だに語り継がれているというのは紛れもない事実。であるなら、世界中の誰が見ても理解出来る普遍性がどこかにあるはずなんです。 私はこの鉄雄の破壊衝動こそが、その普遍的要素なんじゃないかと思っています。勿論映像や世界観のカッコよさとかもあるでしょうけど。

2020-06-20 01:48:47