ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
4
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え……」男は不意を突かれ、目をぱちくりさせた。そして言葉を探した。ネザークイーンは彼を慮るように微笑みを浮かべて言葉を待っている。男はやがて言った。「……お、俺……こんな冴えないナリでさ、なにもかも辛くて……でもエダマメは、素敵って言ってくれたんだよ。カッコいいって……」

2011-06-27 21:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そう……」「それなのにさ……お、俺はこんなになって、借金もして、エダマメに全部つぎ込んだよ?毎日、店の前で待ったりさ……なのにエダマメは急に冷たくなってさ、辛くて……俺……」「辛かったわね」ネザークイーンは頷いた。男の目から涙が溢れた。「そ、そうなんだよ……だか」「イヤーッ!」

2011-06-27 21:32:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」男のカタナが人質の首筋から逸れた瞬間をネザークイーンは逃さなかった。ヤリめいた蹴りが男の顔面を捉える!男は吹き飛び、背後の壁に叩きつけられる!「アイエエエエ!」人質となっていたSMマイコは悲鳴をあげて、ネザークイーンと入れ違いに、部屋の外へ飛び出す!

2011-06-27 21:38:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「手加減したわよ!」ネザークイーンはカタナを蹴飛ばし、床の手錠やムチ、デンデンダイコを足で払いながら、室内を突き進む。「アバッ……」男は床に尻餅を突き、鼻血を流してネザークイーンを見上げた。ネザークイーンはしゃがみ込み、男をまっすぐ見た。

2011-06-27 21:42:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ね。アータ、あの娘見てご覧なさい、ね」ネザークイーンは戸口を親指で指し示した。人質になっていたSMマイコが、後ろ手の拘束をチョンマゲ従業員に解いてもらっているところだ。さめざめと泣いている。「アータの気持ち、わかるわ。でも、あの娘、怖い思いしたわよね……」「アイエエ……」

2011-06-27 21:47:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アータの真剣さはアタシに伝わったわ。きっと皆もわかってくれる……でもね、あなたの愛が、愛する人を恐れさせたり、傷つけたりしたら、それはとっても哀しい事よね?」「……」「ミヤモト・マサシも言うじゃない、親しきなかにも……ええと、とにかくアレよ、ね?わかる?」「……ハイ……」

2011-06-27 21:56:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……よかったわ」ネザークイーンはフッと笑った。「人間、命があれば何度でもやり直せるのよ。ホントよ。アタシなんか、こんなだけど、実際こうして生きてるんだから。ね?だからアータも、自分の罪をしっかり償って、そして優しい男に……エダマメ=サンを怖がらせない男になれるわよ、ね?」

2011-06-27 22:23:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男は再び泣き出した。「ハイ……」「一緒に行きましょ、ね?」ネザークイーンは男の手を取り、チョンマゲ従業員に続いて個室を出た。「御用!御用!」というマッポの警告音が表の路地に近づいてくる。「じゃ、あとはよしなにお願いね」彼は従業員にウインクし、裏口から闇へ溶けるように去って行った。

2011-06-27 22:35:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な……ダメよサケなんて!子供でしょッ!」ザクロは店へ戻るなり言った。「ダメよ!」カウンター席の少女はザクロを振り返った。グラスを揺らして見せる。「生姜ソーダだから」「紛らわしいったら」ザクロは肩を竦めた。「だいたいアータ、ウシミツよ、寝なきゃ美容に悪いわよ。お店も閉めるし」

2011-06-27 23:26:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「目が冴えた……」少女はやや大きめの着流しを着ている。「絵馴染」の昔の従業員が残していった夜着だ。「それ飲んだら寝るのよ、早く飲んでグラスよこしなさい」洗い場に残したグラス類をザブザブとやりながら、ザクロは言った。「ねえ」今度は少女が声をかけた。「なァによ」ザクロは見ずに応えた。

2011-06-27 23:37:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「仕事……何の仕事?」「は?」「ザクロ=サン、いま何をしてきたの?」「何でもいいのよ」「ニンジャじゃない……?」グラスを拭くザクロの手が止まった。少女は繰り返した。「ザクロ=サン。ニンジャじゃない?」

2011-06-27 23:42:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャってアータ……」ザクロは笑い飛ばそうとしたが、少女は真顔だった。「……」ザクロの笑顔がゆっくりと凍りつく。そして、無言で凝視した。数日前、ザクロが半ば無理矢理に連れて来た、この宿無しの少女を。

2011-06-27 23:56:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

少女はどこか決然とした表情だった。何らかの確信を持って聞いているのだ。ナムサン。ザクロは肩をすくめた。「……ええ、その通りよ」ゆっくりと言った。少女の表情は変わらなかった。その瞳に桜色の光が浮かび上がり、また沈んだ。「私も」少女は言った。「私もそう」

2011-06-28 00:03:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より:「ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ」#1 終わり。#2へ続く

2011-06-28 00:04:58