稲川淳二の『つぶやき怪談』(2020.06.26)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その一泊する神社に、 ムジナが出るっていうんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

夜になるとムジナが出てきて、 イタズラされるというんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、その年に行くことになっている若い連中が、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「俺たちは、そんなムジナが出てきたら、 退治してやるわ！」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ってね、言ったそうですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時も、いつものように朝早く出て、 神社に着きました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

夜。 神社には、何人かの若者が寝てました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、風が吹いてきた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ああ、風が吹いてきたな） と思ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

まあ、昔の人が言うことですから、 例の･･･生暖かい風が･･･って、あの世界でしょうねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたらね、真っ暗な神社の入り口のところに、 なんかがいて、そっから声がするんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そいつがね、 「おぶってくれ、おぶってくれ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

若者のひとりが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ああ、この野郎だな。 こいつがイタズラするっていうムジナだな）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思ったけど、とぼけてた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おぶってくれ、おぶってくれ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と言いながら、 そいつが少しずつ、近づいてくる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そん時にね、若者がひとり立ち上がって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おおう、おぶってやってもいいぞ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、言ったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そいつはなおも、 「おぶってくれ、おぶってくれ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言ってるから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ほうれ、おぶされよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、若者がしゃがんだんですよ。