オーバーロード・オーバーライト おまけ

過去改変やメタフィクションにも対応している仮面ライダーシリーズとかいう魔境 7:https://togetter.com/li/1554302
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2020-07-12 21:01:01
劉度 @arther456

【オーバーロード・オーバーライト おまけ】

2020-07-12 21:02:01
劉度 @arther456

岡山県の小さな町に、『イズムルド』という店がある。今の日本では珍しい、ロシア人夫婦が営むバーだ。夕方、店主であるくすんだ金髪の男は、夜の開店準備をしていた。店には今、店主一人だ。妻は2階で休憩している。夜からのバイトはまだ来ていない。1

2020-07-12 21:03:01
劉度 @arther456

カラン、とドアのベルが鳴った。「あら、いいお店ですわね」バイトが来たのかと思ったが、口振りからして客のようだ。「スミマセン、オープン、マダ……」店主の片言の日本語が途切れた。「お久しぶりですね」忘れることのない顔。「……そんな、バカな」思わず、ロシア語が漏れてしまった。2

2020-07-12 21:06:00
劉度 @arther456

そこにいたのは、青い髪の女性。幼さが微かに残る顔には、心を見透かすような謎めいた微笑みを浮かべ、髪よりも深い碧の瞳が彼を見つめている。服装は、濃い桃色のYシャツに、羽根の模様をあしらった薄いロングスカート。その下にもミニスカートを履き、二重の着こなしを見せていた。3

2020-07-12 21:09:01
劉度 @arther456

「……違う。お前がここにいるわけがない」彼の呟きを彼女は耳ざとく聞きつける。「まあ、酷い。せっかく遠い所から、貴方様にお会いするためにはるばるやってきましたのに」「嘘だ」「嘘ですか?私が?こうして、ここにいるのに?」悪戯っぽい笑みを浮かべ、彼女はゆっくりと彼に近付いていく。4

2020-07-12 21:12:01
劉度 @arther456

「私は本当ですよ?確かにあの時、あの場所にいましたし、貴方様との思い出にも嘘偽りはありません。貴方様を深く、深く愛していたことも真実ですし」微笑みが、酷薄に歪む。「貴方様に裏切られたことだって、無かったことにはなっていません」いつの間にか、彼女の手には拳銃が握られていた。5

2020-07-12 21:15:01
劉度 @arther456

「覚えていますか?もちろん、覚えていますよね。あの雨の日、貴方様が私に手を添えて」銃口が彼女の顎に添えられる。何が起こるか想起した彼は、止めようと手を伸ばす。「やめ――!」「こうして、引き金を引いたことを」彼の手が彼女の手に触れた瞬間、彼女の頭が弾け飛んだ。6

2020-07-12 21:18:01
劉度 @arther456

「――と、ツカミはこんな感じにしてみたけど、どう思う?」そこには、青い髪の少女が無傷で立っていた。飛び散った血飛沫も、溢れた脳漿も無かった。「なん……だ?」「ミステリアスな登場からの、ショッキングシーン。印象に残るには十分だと思ったけれども、どうかな?」7

2020-07-12 21:21:00
劉度 @arther456

「どうだと……いや、誰だお前は」気を取り直した彼は、目の前の相手を再確認する。青い髪に、青い瞳。色合いは同じだが、彼の記憶の中の彼女とは似ても似つかない。何故彼女だと思ったのか。困惑する彼に、少女は答える。「そうね……誰がいいと思う?」「何?」答えになっていない。8

2020-07-12 21:24:00
劉度 @arther456

「私はね、『奇跡的に一命を取り留めて、貴方様の元にたどり着いた私』がいいと思ったの。だけど『復讐心から蘇って、それでも貴方様を愛してしまう私』がいいって声もあってね。『娘愛しさに作ったクローンに本物の魂がとりついた』って設定もあったわ」少女の口からつらつらと言葉が流れ出す。9

2020-07-12 21:27:01
劉度 @arther456

「――そうか。奴の同類か」こうした手合いを、彼は知っていた。手元の皿を少女の顔に投げつける。同時に、カウンター裏の拳銃を取り出し、発砲。銃弾が少女の顔と頭を貫く。少女は声を上げることもできずに床に倒れた。赤黒い血が床に溢れる。10

2020-07-12 21:30:01
劉度 @arther456

「それと、私は好きじゃないけど、『騙された怨みから悪霊になった私』っていうのもあるわね。他にも色々あるけど、どれがいい?」「ッ!?」彼は銃を撃っていなかった。カウンター裏に武器は持ち込んでいないし、食器は全て片付いていた。「ねえ、どれがいい?好きな終わりをあげるよ?」11

2020-07-12 21:33:02
劉度 @arther456

「何が狙いだ」「やっぱり聞くのね。狙いとかは無いんだけど……強いて言えば、貴方の波長に合わせやすくて、面白そうな設定だったから?」「俺はそんなに面白くない。帰れ。俺は今のままで十分だ」彼の言葉に少女は訝しげな視線を向けた。「前の彼女さんより、今の奥さんの方が好き?」12

2020-07-12 21:36:00
劉度 @arther456

彼は拳を握り締めた。「言葉に気をつけろ」「ねえ、ここにある現実と、過去の思い出、どっちの方が輝いて見える?」少女は彼の顔を覗き込んだ。「あの時彼女を殺さなければ、きっと幸せになれた。仲間を見殺しにしなくていいし、大勢の人を殺さなくて済んだ。そう思わない?」13

2020-07-12 21:39:00
劉度 @arther456

「仮定の話だ。今更考えても惨めになるだけだ」「なら、今から書き換えちゃえばいいんじゃない?できるよ、私なら。さっきみたいに」「……やめろ!」「嫌よ。だって私は、こっちの展開が好きだもの」少女が彼の額に手を伸ばす。彼は下がろうとするが、体が動かない。14

2020-07-12 21:42:01
劉度 @arther456

カラン、とドアのベルが鳴った。「ヲ疲れさまでーす」店に入ってきたのはバイトの少女だった。「ヲッ?」バイトは、すぐに青い髪の少女に気付いた。「ヲ客さん?」一方、青い髪の少女はバイトを見るなり顔をしかめた。「何、また深海棲艦?どうしてこっちにもいるのかしら……」15

2020-07-12 21:45:01
劉度 @arther456

少女がバイトに気を取られた一瞬、彼の体が自由になった。すぐさま、少女の手の届かない所まで下がる。「ヲグチ、逃げろっ!」「ヲッ?」首を傾げるバイトに、少女は歩み寄る。「深海棲艦が陸に居着かないで。設定通り、海に帰りなさい」少女はバイトの額に触れた。16

2020-07-12 21:48:01
劉度 @arther456

その時、不思議なことが起こった。17

2020-07-12 21:51:00
劉度 @arther456

Kamen Rider Black RX - Opening Full youtu.be/-qJt2fbG324 @YouTubeより

2020-07-12 21:52:00
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劉度 @arther456

バイトが4人に増えた。「はぁ!?」驚く少女を囲む4人のバイト。しかもバイトたちは色とりどりのバッタのお面を被っている。「な……何なの、貴方達は!?」「ヲレは太陽の子、ヲメンダイナーテツヲ!ア゛ールェ゛ッ!」黒いバイトが腕を振ってポーズを決めた。18

2020-07-12 21:53:00
劉度 @arther456

\ロケラン!/\シャーマン!/\カミ車!/\ロ・シ・カ!ロシカロ・シ・カ!/謎の合成音声の後、赤黒緑のバイトは虎の鉤爪を思わせる構えを見せる。「ヲレ、参上!」続いて赤いバイトが歌舞伎の見得のようなポーズを取った。「言っておくが、ヲレは最初からクライマックスだぜ!」19

2020-07-12 21:55:01
劉度 @arther456

《Dinner time!》《ヲメーンダイナー ジオー!》最後に、白と紫のバイトのお面に、『ダイナー』の文字が張り付いた。「祝え!」店の一角から不意に声が上がる。そこには青い髪の少女がもう一人いた。バイトに囲まれている少女と瓜二つ、違いは首に巻かれた黒いマフラー。20

2020-07-12 21:58:01
劉度 @arther456

「全ダイナーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者、その名もヲメンダイナージヲー!まさに生誕の瞬間である!」「貴方は何なのよ!?」悲鳴を上げる少女に、黒いマフラーの少女が一礼する。「黒ゴトです」「説明になってないわよ!?」21

2020-07-12 22:00:03