タイラント・オブ・マッポーカリプス:前編 ＃8

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【この物語は】 凄い戦いが起こっている！　現世にジゴクを呼び込む邪悪なカラテ国家「ネザーキョウ」と、これに抗う北米暗黒メガコーポ連合「UCA」の戦いは激しさを増し、最終的に世界四都市に天下布武！狂熱の中心地はカナダのホンノウジ！そこで一騎打ちするのはニンジャスレイヤーと明智光秀！

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【この物語は】 もはや我々は固唾を呑んで神話的ニンジャ一騎打ちの行く末を見届けるしか無い……否！コトブキの元には情報屋タキを通した秘密作戦指令！そして西の空に謎の電子フラッグ！さらには明智光秀の息子、織田信長に瓜二つのジョウゴ親王は、今まさに彼の戦いを始めようとしていたのだ……！

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クセツというニンジャは、ネザーキョウのセンシ達の頂点に立つアケチ・シテンノの一人であって、その真の名を、ランマル・ニンジャといった。　1

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戦国時代において、ランマル・ニンジャ、すなわち森蘭丸は、戦国武将である織田信長に心酔した小姓であり、油断ならぬ斥候でもあった。驚くべきことに、その涼やかな美少年は実際、リアルニンジャとしての強大な力を秘めてもいたのである。　2

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織田信長が決戦兵器安土城を起動させた際、蘭丸は黒衣の美少年によって構成された部隊を率い、琵琶湖湖畔に生い茂る葦の狭間で待機していた。無敵の破壊巨人たる安土城とは別角度よりキョート城を攻め上げ、拠点を築き、撹乱分子として街に散って、征服を完遂する役目である。　3

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しかし、その命令は永遠にくだされなかった。主君織田信長は逆臣明智光秀と共に本能寺から消え去った。そして……人知れず、ネザーの地にて爆発四散を遂げたのだ。かねてより織田と深く契る関係にあった蘭丸は、現世にいながら本能的に主君の滅びを感じ取り、狂おしいほどのセプク衝動に襲われた。　4

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だが蘭丸は死を選ばなかった。彼は本能寺の焼け跡を慟哭と共に探し回り、ネザー痕跡の確信を深めた。彼は禁断のジツの数々の封印を解き、以て、ネザーの探索に赴いた。二度とは現世に戻れぬであろう旅へ。不倶戴天の裏切者、明智光秀をその手で殺すために。　5

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広大無辺なるネザーの地で、蘭丸は明智光秀の足跡を追った。オニやヘグイや磁気嵐に襲われ、何度と無く滅びと消失の危機に晒されながら、彼は生にしがみついた。過酷な環境下、カトン・ジツは禍々しきネザーカトンに染め上げられ、邪悪の大気に備えたボロボロの包帯も手放せぬものとなっていった。　6

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永遠の責め苦の如き旅の果て、ランマル・ニンジャはついに憎きタイクーンを発見する。四本腕の異形へ変わり果ててはいたものの、ニンジャアトモスフィアは誤魔化せぬ。明智光秀に相違無し。ついに復讐の時来たれり。蘭丸は一団の前に立ちはだかり、自らの正体を明かして一騎打ちを挑む筈であった。 7

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「父上！あれを！お気をつけなされませ！」何たる事か。よりにもよって、黒い溶岩石の斜面を駆け下るランマルをそのとき指差したのは、タイクーンの肩に抱かれし、幼きジョウゴ親王であったのだ。ランマルは駆け下りながらその尊顔を目の当たりにし、滑り果てながら跪き、そのままドゲザに至った。　8

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何故ならば、幼きジョウゴ親王の顔はまぎれもなく、織田信長の生き写し。即ちオダ・ニンジャの生まれ変わりとしか考えられぬ風貌であったのだ。伏せたランマルの両目には涙が溢れた。顔を上げるなり、彼が名乗った名は「クセツ」であった。タイクーンの家臣となるべく旅をしてきた。そう言った。　9

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タイクーンがクセツの正体に気づいたか、否か。定かではない。もとより明智光秀と蘭丸には殆ど面識もなかった。だが、タイクーンはクセツの臣従をその場で認め、ネザー征服の旅路の道連れとした。旅の中、クセツはジョウゴの出自を解き明かそうと試みるも、タイクーンは当然の事、黙して語らず。10

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厳島の戦いの時代からタイクーンの配下であった卑しきモータルの言葉によれば、ジョウゴはかつてタイクーンが滅ぼしたオダ・ニンジャの死骸の中から生まれ出たのだという。全てが繋がった。何たる不憫。無念。クセツの悲願はやがて、ジョウゴ自身にオダの仇を討たせる事に変わっていった。　11

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やがて。炎上するハリマ離宮。（バカな……バカな）（ア……アケチは、我が真実を……知りませぬ）クセツ、否、ランマルは咳き込んだ。そして手を伸ばし、親王に触れた。（貴方はネザーにおいて、オダの魂なき死骸から生み出された。ゆえに貴方は魂の欠落に苛まれておられた。お……おいたわしや）　12

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（バカな……！）（アケチの狙いは不明なれど……ランマルの願いはひとつです、殿。それは……貴方が日頃抱いておられたお気持ちと一緒）（クセツ……ランマル……！）（貴方は真の覇王也。貴方が、かつての我が主君オダであろうと、そうでなかろうと。敵は、ホンノウジにあり。アケチ、討つべし！）13

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ジョウゴは猫の額ほどの闇の中でザゼンを組み、忠臣クセツとの日々を反芻した。思えば、クセツがしばしば辛辣な態度をとったのは、タイクーンの目を欺くためだったのやもしれぬ。空虚と思われた己の胸に、いま確かな魂が宿っている。だが皮肉にも、それを与えてくれた忠臣はもうこの世にいないのだ。14

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下克上を果たすべき己の父、タイクーン。そして、己が運命の完遂の道具として召し上げるべきナラクの力を、不遜にも奪い去っていった、憎きニンジャスレイヤー。ホンノウジにて相争う仇敵二人。幸いなるかな。まさにこれはアブハチトラズ也。ジョウゴは呟く。「……敵は、ホンノウジにあり！」　15

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ジョウゴ親王の居場所から遥か離れた南方戦線！彼の意志に呼応し、巨大な青銅鳥影、コヒバリ達が痙攣しながら仰け反って、恐るべき咆哮を放った！「ケケエエエエエン……！」「ケケエエエエエエン……！」アカゾナエの戦士たちが脇に退くや、巨大なカゲムシャ達は凄まじい突進を開始した！　16

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それまでの粛々たる前進から一転、怒涛の進撃を開始したコヒバリは、UCAの文明兵器を、そしてネザー兵すら、区別なく叩き潰し、蹂躙し、切り込んでいった！「デアエー！」アカゾナエ達は勇ましく鬨の声をあげる！勢い余って味方すら手にかける鬼神の如き進軍。未だこの時は、そう解釈されていた。　17

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(((まずは良し！))) 間合いを取り直し、タイクーンと睨み合うニンジャスレイヤーのニューロンに、ナラク・ニンジャの声が響いた。常よりもずっと力強い。炎が今、ニンジャスレイヤーの肉体を絶えず循環している。右の眼球、右目付近の筋肉、骨から、悲鳴じみた軋みが伝わってくる。　19

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(((かつて多腕のニンジャはそれなりに数があった。これまでに殺してきた相手もひとつふたつに留まらぬ))) 砂嵐まじりの記憶断片が去来した。まださほど古くない記憶だ。複数のニンジャが合体した者。あるいは多腕のイアイド使い。(((実際手数の多さと膂力で押し切るもの也。ゆえに……)))「手数だ」20

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「「イヤーッ！」」ニンジャスレイヤーとタイクーンは同時に動いた！メキメキと音を立てて、ニンジャスレイヤーの身体が内側から引っ張られる。破裂しそうだ。だが彼は手綱を決して手放さなかった。黒炎を循環させ、ナラクの意識すらも内在化させようとした。ナラクは不服げに応じるのだった。　21