リフィーディング症候群について

リフィーディング症候群についてまとめました。
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ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

refeeding syndromeをご存知でしょうか。 長期間の飢餓状態にある人が急に栄養をしっかりと摂取することが原因でしばしば起こる、非常に重篤な症状のことです。 低リン血症をきたし、発熱、痙攣、意識障害、心不全、呼吸不全などが起こります。

2020-08-09 22:57:54
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リフィーディング症候群で有名なのは豊臣秀吉による鳥取城に対する兵糧攻めのエピソードです。 戦が終わって、戦で飢餓状態になった侍が大慌てで食事をとった結果、大勢の方が謎の死を迎えたと言うエピソードが語り継がれています。

2020-08-09 23:08:11
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リフィーディング症候群は、飢餓状態への栄養投与を行うことでより生じる細胞内への水分移動や電解質移動に伴う症候群と定義されています。 この例では、秀吉から戦の後に振る舞われた粥を武士が急に食べ過ぎたことが原因で、リフィーディング症候群が起こったのではないかと言われています。

2020-08-09 23:16:44
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飢餓が続き低栄養状態が続くと、体外からの糖の供給が滞ります。そうなると、脂質やタンパク質の分解で生命維持に必要なエネルギーを補填するようになるためインスリン分泌は低下してしまいます。

2020-08-09 23:21:35
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

そこに、突然たくさんの糖が補給されると、解糖系(細胞の中でぶどう糖からエネルギーを作る経路)が活発に動きます。ATPの急激な合成などでリンの需要が急増し細胞内にリンが吸収され、その他の部位で欠乏してしまいます。

2020-08-09 23:28:30
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

リンは生体内でDNAやATPの材料となったりタンパク質の合成に必要とされます。また、細胞膜を作るためにも必要な元素です。もしリンが欠乏すると細胞分裂ができなくなります。また、赤血球も十分な強度を維持できずに、崩壊してしまいやすくなります。そうなると、身体中への酸素の運搬も滞ります。

2020-08-09 23:35:45
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

リンは筋肉の機能にも関わるため、不足すると心筋の機能不全を起こすこともあります。

2020-08-09 23:37:14
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また、突然糖の供給が開始されると言うことはインスリンの分泌も増大するということです。インスリンが細胞に作用すると、ブドウ糖とカリウムが一緒に細胞内に取り込まれますが、電解質不足の時にこれが起こると、血中のカリウム濃度が急激に低下します。

2020-08-09 23:40:39
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

インスリンの作用時やDNAの合成時、タンパク質合成時にMgが使われるため、栄養再開時には低Mg血症も併発してしまいます。

2020-08-09 23:50:17
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

述べてきたように飢餓状態に突然大量の栄養を投与すると低P血症、低K血症、低Mg血症、低血糖などがが引き起こされます。 そのため、リスクの高い方にはいきなり大量の栄養を投与することはしません。

2020-08-09 23:51:58
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

ここまでリフィーディング症候群の病態について述べてきましたが、残念ながら、リフィーディング症候群には明確な診断基準がありません。しかしながら、リスク判定に使用できるNICEのガイドラインがあるので、これをもとに栄養の補給計画を立てていくと良いでしょう。 BMJ. 2008 Jun 28;336(7659):1495

2020-08-09 23:55:08
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

リフィーディング症候群高リスク(NICEガイドライン) 以下の項目を1つ以上満たす ・低体重:BMI<16㎏/m2 ・体重減少:3-6か月以内に15%以上の体重減少 ・栄養摂取状況:10日間以上ほとんど栄養摂取なし ・電解質異常:栄養前のK,P,Mgが低値 (続く)

2020-08-09 23:56:25
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

リフィーディング症候群高リスク 以下の項目を2つ以上満たす ・低体重:BMI<18.5㎏/m2 ・体重-減少:3-6か月以内に10%以上の体重減少 ・栄養摂取状況:5日間以上ほとんど栄養摂取なし ・既往歴:過飲酒、コントロール不良糖尿病、化学療法、制酸剤、利尿薬、担癌患者、高齢者

2020-08-09 23:57:01
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

これらのリスク項目を満たす患者では栄養の増量を慎重に行った方が無難でしょう。

2020-08-10 00:02:50
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

NICEガイドラインによれば、ハイリスク患者は10kcal/kg/24hで栄養を開始して、モニタリングしつつ4-7日かけて通常の栄養量まで上げていきます。 また、非常に栄養状態が不良な患者(BMI<14あるいは2週間以上の飢餓状態)の場合5kcaL/kg/24hの栄養投与から始め、徐々に増量するよう推奨されています。

2020-08-10 00:07:26
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

電解質やミネラルの補充についてはまだ統一された見解はないようですが、集中治療期間は15~30mmol/3時間のリン酸を投与してとくに問題なかった、という研究結果があり、一般病棟では腎機能障害のない患者に1日50mmolのリン酸を投与してとくに問題がなかったという報告があるそうです。

2020-08-10 00:09:51
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

あとビタミンB1も欠乏しやすいため、微量元素と合わせて補充を行うべきでしょう。

2020-08-10 00:13:25
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

今日のまとめです。 ✅飢餓状態でいきなり普通の栄養をとるとリフィーディング症候群の危険がある。 ✅栄養は一般的に10kcaL/kg/dayから開始し、4-7日で普通の量にまで上げる。ハイリスクの場合は5kcaL/kg/dayから。 ✅バイタル及び各種電解質を確認しつつ、不足しているものの補充をする。

2020-08-10 00:16:08
ファーマ💊@薬学系Vtuber @vt_pharma

もし遭難してご飯がまともに食べられていなかったら、急に御馳走が目の前に現れても慌てて食べたりしない方が良さそうですね。1週間かけて普段の量まで戻しましょうね。そうでないと・・・最悪死んでしまうかもしれません!

2020-08-10 00:18:45