THUNDERBOLTED-off(IDOFF/ID:INVADED)
悲鳴を上げるお父さんの横で僕は理解した。 お父さんが僕に言いつけた内容を理解して反撃したのだ。 よりもずっと高い知性がある。
2020-08-24 18:16:21家族にもそう宣言する。 「それでいいわ。それやったわ」 とお父さんが力なく言って僕はまた少し笑う。床の石も得意げな顔をしてるような気がする。
2020-08-24 18:16:54それから保育所に行くときに 「いってきます」 と声をかけておくと保育所の庭には来るけれど建物の中には入ってこなかったし、帰りに
2020-08-24 18:17:05「後でな」 みたいに言っておくと家にたどり着いたときに玄関の脇にちょんとあってなんだか機嫌がよさそうに見えるくらいで、凄く扱いやすくなった。
2020-08-24 18:17:26でも小学校に入って僕も成長して周囲でいろいろ起こるようになると問題も大きくなる。 まず僕をいじめようとした子を石が成敗するようになる。
2020-08-24 18:17:42と言ってもその子の自宅の屋根に乗っかるくらいなのだが、その風情が凄く怖いみたいだし、僕と石の話は知ってる人が多いのですぐに家族揃って謝りに来たりする。田舎だから信仰深いのか、神様的な話が重いのだ。
2020-08-24 18:17:59そういう話を聞いても面白がって僕をからかおうとする子は結構しつこくいて、屋根に乗ってた石はその子のランドセルから登場してびっくりさせたり寝てる枕と入れ替わったりして夜中に仰天させたりして、石の大活躍に僕も楽しいけど、やりすぎかなと思わないでもない。
2020-08-24 18:18:20そうなると公園や校庭で石を従えてるときの僕の言うことが一方的に通り始めたりするようになり、やがて僕と遊んでくれる子が減り始める。触らぬ神に祟りなし、って感じに僕自身がなってしまうのだ。
2020-08-24 18:18:48けどこれは誰も悪くないと思う。 自然だ。 とは言え僕は寂しいのでじゃあ学校の同じ学年の子は諦めてお兄ちゃんの友達に入れてもらおうとする。 お兄ちゃんも気を遣ってくれたのだけれど、石がやっぱりついてきて、皆が離れていく。
2020-08-24 18:19:53ちょっと離れた町の野球部に入れてもらったときには石のことを知らない人ばかりでしばらくは楽しくやってられるが、するとそこにはいじめっ子気質の子がやはりいて、僕はいじめられ、
2020-08-24 18:20:21石が屋根に行き、こちらがどれだけ説明してもその石の意味が理解できないからいじめが長引き、石の成敗もエスカレートして、結局石の話が広まってチームの皆が引いていく。
2020-08-24 18:20:39「まだ他にもチームあるけど」 とお父さんが言うけれど、やめておく。僕はいじめられやすいのかもしれないし、だとすると同じパターンが繰り返されるだけだろうし、想像するだに面倒だ。
2020-08-24 18:21:33で、同世代の子とスポーツができないなら運動はジョギングでも何でも個人ですることにして、家庭教師をつけてもらう。大人なら僕をいじめたりしないだろうということで。
2020-08-24 18:21:47お父さんの知り合いのつてで隣町の女子大生に車で通ってきてもらっていたのだが、その人が盗癖があったらしくて僕の文房具が減っていき、その人の車の屋根が凹み始める。シャーペンや絵具など、細かいものがなくなってることに僕がしばらく気づいていないため、
2020-08-24 18:22:49どうして石がそのお姉さんを攻撃しているのかさっぱりわからなかったしお母さんがそのお姉さんに石の話をして心当たりがないかと聞いてもらったが首を振るばかりなので時間がかかってしまった。
2020-08-24 18:23:03結局お姉さんが盗品をビニール袋に入れてうちに返してきて 「どうして何も言ってくれん石なんかに私を責めさせるんよ。私、人に怒られたかった。神様なんかに怒られたくなかった」 と泣かれて困ってしまった。
2020-08-24 18:23:18そして確かにショックかもしれないなと思った。神様というのは大きな人の集団に罰を与えたりはするかもしれなけど、誰か一人を叱りつけたりはしないものだろう。
2020-08-24 18:23:36いやそもそもばあちゃんが神様だと言い出しただけで、僕の感覚としては全くそんなふうに感じられないし、神様なんかじゃないと皆に分かってもらうほうがいいんじゃないかなと思って周りの人にはできるだけそう言うのだけれど、これもなかなか伝わらない。
2020-08-24 18:23:51一度お兄ちゃんが 「ほしたら、この石は神様でなくて、お化けやって説明したら?勝手に動く石なんて神様かお化けしか理由にならんやろ」 と言うが、しかしそれは僕が嫌なのだった。
2020-08-24 18:24:06神様で逃げてった人がお化けで戻ってくるはずもないだろうし、そもそもその石はもうずっと僕の友達や兄弟として付き合っていたのだ。その相手をお化けみたいだなどと言いたくなかった。
2020-08-24 18:24:26ならしょうがない。 僕と僕の石はそっと皆から緩やかな隔離をされた状態で暮らすしかなかった。学校に行けば話したり一緒に笑ったりする友達はいる。家族も仲良しだ。
2020-08-24 18:24:43でも僕のそばには石がいて、皆が石に気を遣っていた。 「でも石はあんたに気を遣ってくれんのやな」 と言ったのがシービーで、僕も彼女も14歳の夏だった。
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