THUNDERBOLTED-off(IDOFF/ID:INVADED)
水曜日分(2/3)
小説版『龍の歯医者』準備中。
#idinvaded #イド #イドインヴェイデッド #VSvirus #第6話 #第7話 #ATX #月曜夜18時から #水曜朝10時から #金曜深夜26時から #IDOFF #スピンオフのようなもの #世界観の繋がり不明 #THUNDERBOLTEDoff #月曜は最初の三分の一 #非公式 2
2020-08-26 10:31:30最近僕と石はいささか気まずかった。 その日も僕は家に帰りたくなくて体育館のギャラリーのカーテンの影のところに座り込んで、ときおり大きな窓からチラリチラリとグラウンドの一番奥を覗いたが、やはり石はその百葉箱のそばの芝生の中にじっとしていて、僕のことを待っているのだった。
2020-08-26 10:31:54いつもだったらグラウンドの手前やなんだったら僕のすぐ足元に来て帰宅を促すのに、石の方も僕の方に近づいては来なかった。もう三日目だ。でもその夕方は自主練で残っていたシービーに見つかってしまった。
2020-08-26 10:32:11「うわっ!っちょ、お化けかと思ったやんか!」 と思い切り飛び跳ねてシービーが言った。 「え……そんなビックリするか……?」 「するわ!何してるんよそんなとこで」
2020-08-26 10:32:44「別に……宿題」 いや宿題なんてとっくに終わっているから勉強を先取りしてたんだけどシービーはそんなことには気づかなかった。 「家帰ってやんねや」 「そりゃそうなんやけど。……まあいいが、あっち行ってや」
2020-08-26 10:33:02「何やそれ。別にいいけど……」と言いながらシービーが、そのときうっかり石の方を見た僕の視線を追って窓の外を見る。「……あ。あれが噂のあんたの石か。初めて見たわ」 「ほうか……有名やで……」 「あはは。何言うてるんよ。何?あんた、石と何かあったんか?」
2020-08-26 10:33:20「何もないよ」 「百パーあったやろ」 「何もないって」 「あったやろ」 「あったかもしらんけどそんな話はせんよ」 「ふ。ほっか。まあいいわ。ほんな違う話しよさ」
2020-08-26 10:33:41「え?」 「私も何か面倒になってもうた」 「何が」 「や、まあ、運動とか?」 「休めば?」 「ほやな。ほんで、休もうと思って」 「ああほうか」
2020-08-26 10:34:09シービーはどこかに行って休むんじゃなくてその場に座りこむ。それから窓ガラスにドンと肩をもたれさせてふう、と息を吐く。Tシャツがぐしょぐしょで、ちょっと汗の匂いもする。西日の中で 「暑い」 と言う。
2020-08-26 10:34:41「どっか涼しいとこ行けば?」 「ふふ。どっか行けみたいに言わんといてや〜」 僕がどこか違うとこに移動すればいいのかなとも思うけど、石から逃げてる場所を変えるなんて馬鹿らしいとも思う。どうせ帰るんだから、もう帰ればいい。 でも嫌なのだ。
2020-08-26 10:35:02それでしばらく二人で黙ったままになる。走り込んでたシービーは肩で息をしていたけれど、目を瞑って整えている。まつ毛が長くておっぱいが大きいなと僕は思う。
2020-08-26 10:35:17そのときシービーがパッと目を開けて話し始めて僕はドキッとする。 「あんた、大変?」 「!?……うん?何が?」 「さあ。石のこととか?」 「別に。石のことは大変でないよ」 「ほんな何でこんなとこいるんよ」 「さあ」 「さあって」
2020-08-26 10:35:39「いや、でも石のことは大変でないよ」 「そうなん?……他の子の話聞く限りやと大変そうに聞こえるけど」 「別に?……あの石をずっしり毎日抱えたり背中に背負ったり頭に乗っけたりしながら生きてるとかやったら大変やろうけど、別にそういうことでないでな。問題は……俺やな、やっぱ」
2020-08-26 10:36:10「何が問題なん?」 「それはほら、プライベートなことやから」 「誰にも言わんで、私」 「そんなことは心配してないよ」 「あ、そう?」 「俺の話なんて他の子とせんやろ、そっちは」 「そんなことないけど、そう思う?」
2020-08-26 10:36:27「んー別にずっとそう思ってたわけでないけど、そうかなって」 「石の話は聞いてるで」 「ああ、それはそうやろうな」 「でも別に私、聞きたくて聞いてたんでないで」 「別にそれはどっちでもいいよ」
2020-08-26 10:36:45「や、……そういうのって、あんたの、それこそプライベートな話やし、それをちょっと、みんな面白おかしく話すやんか。陰口とかでないし、悪く言うんでないから止めるとかはせんけど、なんか、私そういうの聞いていいんかなって思ってた」
2020-08-26 10:37:13「やーまあ注意事項みたいなもんなんやろ。俺には石がついてるでな、て」 「そういう意味にしてもよ。あんたは嫌でないんか?」 「百パー事実やで大丈夫」 「そうう?」 「いやどんな話聞いてるか知らんけど」
2020-08-26 10:37:30「あの石に乗って空飛んでるって話も聞いてるで」 「え?あ、それは嘘」 「まあ私も信じてなかったけど」 「そんなんできてたら楽しかったやろうなあ」 「できんのか?」 「できんできん想像もできん」
2020-08-26 10:37:53「どういう意味?」 「え?や。……あれ、石やけど、足乗せるとかはできんやろうな」 「何で?」 「誰かを足蹴にするとかできんやろ」 「え?あ、そうなんや」 「できんやろー」
2020-08-26 10:38:29「や、そうでなくて、あの石って石ってより人なんや」 「あ。うん。ほやなあ」 「神様でないの?そう聞いたけど」 「うん。神様じゃないんじゃないかと思う」 「えーほんなら何?物の怪?」 「うわ。物の怪か〜。妖怪ってことね。お化けと同じやろか」 「どうでもいいけど」
2020-08-26 10:38:51「あはは。う〜〜ん。……違うかなあ。なんか、不思議な石としか言えんわ」 「ふうん。……でも、その石と付き合うのは大変でないんやね?問題はあんたやさけ」 「うん」 「ほやけどその話はしたくない?」 「うん」 「プライベートやでな。あ、そもそも違う話しよって言ったんやった」 「あ、ほや」
2020-08-26 10:39:05「ほしたらこのカーテン、こうしとこ」 と言ってシービーが立ち上がり、紐を引いて僕らが座ってる部分にカーテンを引く。 石が見えなくなる。 「なんかあんたチラチラあっち見てるで」
2020-08-26 10:39:21一瞬、石が何か行動を起こすかな、と思うけど、別に石がシービーに何かするような気がしないし、石も僕のことを常に監視してるわけじゃないんだろうから別に構わないだろう。 それより僕も、その目隠しでだいぶほっとしてしまった。
2020-08-26 10:41:14