タイラント・オブ・マッポーカリプス:後編 #8
パルスはヘヴンリイの右拳をガードした。「グワーッ!」ヘヴンリイの左拳がパルスの顔面を砕いた。「イヤーッ!」「グワーッ!」ヘヴンリイの蹴りがパルスの脇腹に叩き込まれた。「イヤーッ!」ヘヴンリイが両手を組み、打ち下ろした。「グワーッ!」パルスは地面をバウンドし、黒砂を爆発させた。 24
2020-09-08 19:25:45ギシギシと音が鳴る。パルスの肉体をイサライトアーマーが圧縮し、損傷部位を仮想的ノーダメージ状態にしているのだ。三点着地で地面を滑りながら、パルスはプラズマ機雷をばら撒いた。KBAM!KBAM!KBAM!KBAM!「アバーッ!」ゲニンが巻き添えで死んだ!「イヤーッ!」ヘヴンリイが飛びかかる! 25
2020-09-08 19:29:28クロスガードするパルスに、ヤリめいたサイドキックが叩き込まれる!「グワーッ!」KRAAASH!吹き飛ばされ、城の塀にクレーターを生じるパルス!ヘヴンリイは……顔を上げて、天守閣方向を見る。ドオン……ドオン……。城の空で花火が鳴り、天守望楼から「第六天魔王明智常醐」のショドーが垂れた。 26
2020-09-08 19:34:13「イヤーッ!」KRAAASH!クワドリガはオルトロス級突撃車両の突進に突進で応じた。装甲板を断ち割り、腕を差し入れ、そして……ナムサン……!巨木を引き抜くかのように、高く持ち上げた!なんたるニンジャ膂力か!「イヤーッ!」ヌーティクスフレーム™️歩兵中隊に投げつけ、まとめて叩き潰す! 28
2020-09-08 19:38:50「惰弱!惰弱!惰弱の極み!」クワドリガが叫んだ。空はネザーの加護を失い、コクダカの力の消失を……彼のカラテならば何の不足もないものの……感じ、後方にてはオオカゲが不時着し、尋常ならぬインシデントの発生は間違いがない。しかし心乱すわけにはゆかなかった。敵の殺到を押し返すのだ! 29
2020-09-08 19:42:39「殿……!御覧めされい!」クワドリガはグラディウスを抜き、敵に躍りかかって、斬って、貫き、打ち砕いた。「オ……オ……」「オオオオーッ……!」ゲニントルーパーが彼の獅子奮迅のイクサに応え、陣形を組んで続く。そしてその後ろ……ナムサン……ヘグイやオニ達は01のノイズを散らし苦悶する。30
2020-09-08 19:45:42DOOOM……「アバーッ!」DOOOM……「アバーッ!?」彼の後ろで、精鋭のゲニンが一人、また一人と倒れてゆく。「ヌウーッ……!」クワドリガは瞬時に攻撃者の方向を見定める。丘に陣取るスナイパー部隊。これは実際、UCAの一角、ゼン・ミライ社の展開戦力であった。 31
2020-09-08 19:47:50DOOOOM……「アバーッ!」DOOOOM……「アバーッ!」何たる正確無比な射撃!「盾、構えィ!」クワドリガが吼えた。そしてカマキリめいたチェーンソー腕部アタッチメントを振り上げるオルトロス級にグラディウスを突き込んだ。KRAAAASH!「惰弱!我は止まらぬ!止まらぬぞ!」 32
2020-09-08 19:49:58DOOOOM!「アバーッ!」DOOOOM!「アバーッ!」盾が間に合わぬゲニンが一人、また一人と倒される。クワドリガは最前線で破壊を押し拡げ、殺し、壊し、殺し、壊した。徐々に敵が後退してゆく。そして……「イヤーッ!」回転跳躍しながら斬撃を放ったのはアケチ・シテンノ、インヴェインであった。 33
2020-09-08 19:52:45SLAAASH!丘が斜めに裂けた。インヴェインは流麗に着地し、クワドリガを一瞥した。「勝利は我らにあり」「フン……」クワドリガは唸った。「偉大なるタイクーンの為に!」「「「オオオオーッ!」」」ゲニン達が士気をさらに増した!UCA戦力が後退を開始する!クワドリガはグラディウスを振り上げる!34
2020-09-08 19:55:15「進め!」そう、叫ぼうとした。その瞬間……クワドリガは……泥めいて鈍化した時間感覚を訝しんだ。ソーマト・リコール現象。己のニンジャ第六感が引き起こしたニンジャアドレナリン過剰分泌、ニューロンの異常加速現象。彼が感じた危機は前方、UCA戦力のその先にあった。レールライン。 35
2020-09-08 19:58:00然り、ついにネザーキョウの軍はUCAを南に押し返し、ヨロシンカンセンのレールラインにまで戦線を後退せしめたのである。喜ぶべき事の筈だったが、彼のニンジャ第六感は「否」と言った。裏付けるように、レールラインを……長い長いヨロシンカンセンが走りきて……停止したのである。 36
2020-09-08 19:59:48「オオオオーンン……」神秘的ですらある鳴き声が空に轟いた。そしてヨロシンカンセンが鎌首をもたげ、静止した。自然現象の早回しめいて、ヨロシンカンセンは金属光沢をもった奇怪な塊にモーフィングしてゆく。サナギである……! 37
2020-09-08 20:03:54「イヤーッ!」ヌーティクスフレーム™️歩兵中隊に斬撃を見舞い、グレネード爆発めいた威力にて四肢をバラバラに散乱せしめ、そしてクワドリガはインヴェインを見た。然り。インヴェインはイアイを構えた。「……」白刃が鞘を走る……そして彼のくるぶしにへばりついた黄色い肉片は、泣いていた。 38
2020-09-08 20:09:11「このような幕引きなど、ワシが望んだと思うか、ヒャッポ」口が、眼球が生じ、ヨダレと涙を流した。それは遠く離れた地点、瀕死状態のモモジ本体の表情と同期していたのであるが……「ワシの手で殺したかった。だが……貴様を生かすなど……ありえんではないか。オヨ……オヨ……!」 39
2020-09-08 20:11:29黄色い肉がくるぶしに巻き付き、「イヤーッ!」インヴェインのイアイを……サナギとなったヨロシンカンセンを狙った斬撃を、逸らせしめたのである。空を、距離を裂いた斬撃は、ヨロシンカンセンの中央部を……本来ならば……両断する筈だった。サナギの上部が刎ね飛ばされた。 40
2020-09-08 20:14:14「……!」斬撃を損ね、バランスを崩したインヴェインのもとへ、とてつもない飛行軌道で舞い来たのは……アルカナムのニンジャ、ライトニングであった。インヴェインは回避しようとしたが、モモジがそれを許さなかった。「サラバだ、ヒャッポ……!」「イヤーッ!」 41
2020-09-08 20:16:04「イヤーッ!」稲妻めいたジグザグ軌道で迫ったライトニングに、インヴェインは咄嗟の斬撃を見舞う。ライトニングの右腕、肩から先が吹き飛んだ。しかしライトニングは音速の壁を破り、インヴェインの首元を掴んでいた。「グワーッ!」インヴェインはカタナを捨てた。そしてワキザシを抜いた。 42
2020-09-08 20:22:07空中を運ばれながら、インヴェインはまず己の右足を切り離し、モモジを捨てた。それからワキザシを逆手に持ち替え、ライトニングの胴体を繰り返し突き刺した。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!」血めいた電解液が飛び散るが、ライトニングはインヴェインを離さぬ。43
2020-09-08 20:23:32「無駄だ。このまま殺らせてもらう」ライトニングは加速しながら言った。「お前は恐るべきニンジャだったよ。だからこそ、この幸運は逃さ……逃さ……んぞ」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」インヴェインは刺し続けた。ライトニングの身体が裂け、バチバチと放電した。 44
2020-09-08 20:25:54やがてワキザシはライトニングの心臓部に達した。ライトニングはインヴェインとともに宙にループを描き、そのままスラスター噴射で加速しながら、大地に衝突した。KA-BOOOOOM!ライトニングはバラバラに吹き飛んだ。「ア……アバッ……!」インヴェインは起き上がろうとした。 45
2020-09-08 20:29:25(惰弱!)記憶が溢れる。三日三晩に及んだヒャッポ・ニンジャとタイクーン自らのイクサは、最終的にタイクーンに軍配が上がった。ヒャッポにとってそれは信じがたい敗北だ。古代英雄として、ネザーキョウという胡乱な国をただ横切り、無礼をはたらいた者はテウチにする。その鼻っ柱を折られたのだ。46
2020-09-08 20:33:01そのときヒャッポは、タイクーンに、王の執念を、その執念の奥底に横たわる力の源……ネザーの炎を見た。地上に降臨して間もない彼の自我は希薄化し、その中で、仕えるべき者を知った。だが……(ここまでなのか)ヒャッポはライトニングの残骸を見る。黒いエメツ外殻で覆われた脳髄が転がっている。47
2020-09-08 20:38:33ワキザシを振り上げ、ライトニングの脳を破壊しようとする。「ゴボッ」吐血する。モモジ。惰弱な文明……。「……」握力が失われ、ワキザシを取り落とす。彷徨う彼の視線は、戦い続けるクワドリガを、そしてその向こう、陽炎に霞む巨大なサナギに向いた。サナギを破り、神々しきものが、這い出す。48
2020-09-08 20:41:31