deadpop氏の『エスキモー語の「雪」』

箱［いぬ いぬ］🏳️‍⚧️（倉田タカシ） @deadpop

エスキモー語の「雪」を表わす単語の数は、通説ではおよそ500とされているが、一部の研究者は、これはまったくの過小評価であり、実際の数は5000から20000であると主張している。 #eskimosnow

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総数については意見の一致をみないが、日常的に用いられているのがそのうちのごくごく一部、せいぜいが30語程度でしかないことについては、研究者の間でおおむね合意が得られている。 #eskimosnow

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大多数を占めるそれ以外の単語群は、実際には、雪にまつわる各種の伝承のインデックスとして機能しており、それぞれの単語が特定の語りと一対一の対応で結び付いている。文字をもたないエスキモーは、氷で作られた家のなかで、焚き火をかこみ、代々それらを語り継いできた。 #eskimosnow

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それらは、人生訓であったり、猥雑なジョークであったり、これといった落ちも教訓もない小さな逸話であったりする。遠い未来の予言などもある。雪を媒介として、エスキモーはあらゆることを語る。 #eskimosnow

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落語と同じように話者によって豊かな語りのバリエーションがある一方で、驚くほどその内容にはぶれがない。 #eskimosnow

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個々のエスキモーが記憶している単語と語りのセットは、実際には、年長者でも全体のおよそ８割ほどだという。エスキモー語の「雪」は、書かれたことも印刷されたこともない、誰もその全貌を知ることのない巨大な書物の章題の集合であるとみることもできる。 #eskimosnow

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この膨大な伝承の集積を記録しようという試みは、いずれも奇妙な形で中断を余儀なくされている。そこには必ず雪の関わるアクシデントがあり、それによって命を落とした者はないが、みな決定的に意欲をくじかれ、研究を中断して祖国へ帰ってゆくという。 #eskimosnow

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確認したものはいないが、そういったアクシデントの度に、エスキモー語に雪をあらわす単語がひとつ増えるのだとも言われている。 #eskimosnow

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エスキモーの「雪」に惹かれる言語学者は、例外なく雪の降らない地方の出身者であることがわかっている。 #eskimosnow